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水質調査の考察例|pH・溶存酸素・COD・窒素・リン・誤差原因

水質調査は、河川、池、湖沼、水路などの水環境について、物理的・化学的・生物学的な指標を測定し、その状態を評価する調査です。水温、透明度、pH、電気伝導度、溶存酸素、化学的酸素要求量、窒素、リンなどを調べることで、水域の特徴や汚濁の程度を考察できます。

水質は、周辺の土地利用、降雨、流量、季節、気温、水生植物、底質、人間活動などの影響を受けます。そのため、1項目の数値だけで判断するのではなく、複数の項目を組み合わせて評価することが重要です。

例えば、溶存酸素が低く、CODや栄養塩濃度が高い場合、有機物の流入や富栄養化の影響が考えられます。一方、電気伝導度が高い場合は、溶存しているイオン量が多いことを示しますが、その原因は生活排水、農地、地質、海水の影響などさまざまです。

本記事では、学校や大学で行う河川・池・水路などの基礎的な水質調査を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。

注意:

この記事は、生物学・環境科学実験レポートを作成するための学習用参考資料です。掲載している水温、pH、溶存酸素、COD、窒素、リンなどの数値は説明用の参考例であり、特定の河川や池の実測値ではありません。

採水は、学校・施設・土地管理者の許可を得た安全な場所で行ってください。増水時、急流、深い水辺、立入禁止区域、滑りやすい護岸などへ近づかないでください。

採水時は単独行動を避け、必要に応じて救命胴衣、手袋、長靴などを使用してください。

採取した水を飲んだり、傷口や目に触れさせたりしないでください。調査後は手洗いを行ってください。

試薬を使用する測定では、使用説明書、安全データシート、担当教員の指示に従ってください。使用後の試薬や測定液を調査地点へ戻さないでください。

pH計、溶存酸素計、電気伝導度計などは、測定前に校正し、電極を試料間で十分に洗浄してください。

水質調査の基本

水温

水温は、水中生物の活動、溶存酸素量、化学反応速度などに影響します。一般に水温が高くなるほど、酸素は水に溶けにくくなります。

pH

pHは水の酸性・アルカリ性の程度を示します。水域の地質、光合成、呼吸、有機物分解、排水などの影響を受けます。

電気伝導度

電気伝導度は、水中に溶けているイオン量の目安です。値が高いほど、塩類や無機イオンが多い傾向があります。

溶存酸素

溶存酸素は、水中に溶けている酸素量です。水生生物の呼吸に必要であり、有機物分解が活発な場所では低下する場合があります。

COD

CODは、水中の酸化されやすい物質を化学的に酸化するために必要な酸素量の目安です。値が高いほど、有機物などの負荷が大きい可能性があります。

窒素とリン

硝酸態窒素、アンモニウム態窒素、リン酸態リンなどは、水生植物や藻類の栄養源となります。過剰になると、藻類の増殖や富栄養化を引き起こす可能性があります。

結果に記録する主な項目

  • 調査日
  • 調査時刻
  • 調査地点
  • 天候
  • 前日までの降雨
  • 気温
  • 水温
  • 水深
  • 流速
  • 川幅または水域の大きさ
  • 水の色
  • におい
  • 濁り
  • 透明度
  • pH
  • 電気伝導度
  • 溶存酸素濃度
  • 溶存酸素飽和度
  • COD
  • 硝酸態窒素
  • 亜硝酸態窒素
  • アンモニウム態窒素
  • リン酸態リン
  • 塩化物イオン
  • 硬度
  • 浮遊物
  • 底質の状態
  • 水生植物の有無
  • 藻類の有無
  • 水生生物の有無
  • 周辺の土地利用
  • 排水口の有無
  • 反復測定値
  • 平均値
  • 標準偏差

参考実験値

調査地点の概要

地点 環境 周辺状況
地点A 河川上流 樹林が多く、流れが速い
地点B 住宅地付近 護岸があり、流れは中程度
地点C 流れが少なく、水生植物が多い

現地観察の参考値

項目 地点A 地点B 地点C
天候 晴れ 晴れ 晴れ
気温 22.8℃ 24.1℃ 25.3℃
水温 17.6℃ 20.8℃ 23.9℃
水深 28 cm 42 cm 65 cm
流速 0.42 m/s 0.18 m/s 0.01 m/s未満
透明度 高い 中程度 低い
におい ほぼなし わずかに土臭 藻類臭
底質 石・砂 砂・泥

水質測定値

項目 地点A 地点B 地点C
pH 7.2 7.5 8.3
電気伝導度 78 µS/cm 215 µS/cm 328 µS/cm
溶存酸素 9.4 mg/L 7.1 mg/L 5.2 mg/L
溶存酸素飽和度 95% 78% 63%
COD 1.4 mg/L 3.8 mg/L 7.2 mg/L
硝酸態窒素 0.35 mg/L 1.20 mg/L 0.82 mg/L
アンモニウム態窒素 0.03 mg/L 0.18 mg/L 0.42 mg/L
リン酸態リン 0.015 mg/L 0.080 mg/L 0.160 mg/L
塩化物イオン 8 mg/L 24 mg/L 31 mg/L

反復測定の参考値

反復 地点BのpH 地点BのDO(mg/L) 地点BのCOD(mg/L)
1 7.4 7.0 3.7
2 7.5 7.2 3.9
3 7.6 7.1 3.8
平均 7.5 7.1 3.8

降雨前後の参考値

項目 降雨前 降雨後
濁度の相対値 1.0 3.6
電気伝導度 215 µS/cm 168 µS/cm
COD 3.8 mg/L 5.1 mg/L
硝酸態窒素 1.20 mg/L 1.65 mg/L

計算方法

平均値

地点Bの溶存酸素が7.0、7.2、7.1 mg/Lの場合は、次のようになります。

平均値 = (7.0 + 7.2 + 7.1) ÷ 3

= 7.1 mg/L

標準偏差

s = √{Σ(xi − x̄)2 ÷ (n − 1)}

≈ 0.10 mg/L

変動係数

変動係数(%) = 標準偏差 ÷ 平均値 × 100

= 0.10 ÷ 7.1 × 100

≈ 1.4%

地点間の差

地点Aと地点CのCOD差は、次のようになります。

COD差 = 7.2 − 1.4

= 5.8 mg/L

増加率

地点Aを基準とした地点CのCOD増加率は、次のようになります。

増加率(%) = (地点C − 地点A) ÷ 地点A × 100

= (7.2 − 1.4) ÷ 1.4 × 100

≈ 414%

溶存酸素飽和度

測定時の飽和溶存酸素量が9.1 mg/L、実測値が7.1 mg/Lの場合は、次のようになります。

DO飽和度(%) = 実測DO ÷ 飽和DO × 100

= 7.1 ÷ 9.1 × 100

≈ 78%

希釈試料の濃度

試料を5倍に希釈し、測定値が1.44 mg/Lだった場合は、次のようになります。

元試料濃度 = 測定値 × 希釈倍率

= 1.44 × 5

= 7.2 mg/L

流量の簡易推定

川幅2.0 m、平均水深0.30 m、平均流速0.42 m/sの場合は、次のようになります。

断面積 = 川幅 × 平均水深

= 2.0 × 0.30 = 0.60 m²

流量 = 断面積 × 平均流速

= 0.60 × 0.42

= 0.252 m³/s

物質負荷量の簡易計算

硝酸態窒素濃度0.35 mg/L、流量0.252 m³/sの場合は、次のようになります。

1 m³ = 1000 L

負荷量 = 濃度 × 流量

= 0.35 mg/L × 252 L/s

= 88.2 mg/s

栄養塩比

地点Cの硝酸態窒素0.82 mg/L、リン酸態リン0.160 mg/Lの場合、質量比は次のようになります。

N:P = 0.82 ÷ 0.160

≈ 5.1:1

この比は、測定した化学形態に基づく単純な質量比であり、生態系全体の栄養制限を直接決定するものではありません。

主な誤差原因

誤差原因 結果への影響 改善方法
採水地点のずれ 流れや水深の違いが結果へ影響する 位置を記録し、同じ場所で採水する
採水深度の違い 表層と底層で値が異なる 採水深度を統一する
採水時刻の違い 水温、pH、DOが日変化する 同じ時間帯で比較する
降雨の影響 濁り、流量、栄養塩が変化する 直前の降雨量を記録する
容器の汚染 イオンや栄養塩濃度が高く出る 清浄な容器を使用する
容器内の洗剤残留 CODやリン濃度へ影響する 十分に洗浄・すすぎを行う
採水時の底泥混入 濁り、COD、リンが高くなる 底をかき乱さずに採水する
試料保存時間が長い 生物活動で成分が変化する 速やかに測定する
保存温度が不適切 反応や微生物活動が進む 指定条件で冷暗所保存する
pH計の校正不足 系統的な測定誤差が生じる 標準液で校正する
電極の洗浄不足 前試料の影響が残る 試料ごとに純水で洗浄する
電極の応答待ち不足 値が安定する前に記録する 表示が安定してから読む
温度補正不足 pH、EC、DOに誤差が生じる 温度補正機能や補正式を確認する
DO測定時の気泡 値が高く出る場合がある 電極周辺の気泡を除く
DO測定時の攪拌不足 センサー表面の酸素が不足する 機器指定の流速を確保する
試薬量の誤差 CODや栄養塩濃度がずれる 適切なピペットを使用する
反応時間の違い 発色強度が変化する タイマーで統一する
発色温度の違い 吸光度や色調が変化する 指定温度で反応させる
比色の目視判定 個人差が生じる 同じ照明で複数人が確認する
濁りによる光散乱 比色値が高く見える 必要に応じてろ過やブランク補正を行う
測定範囲外 濃度を正確に求められない 適切に希釈して再測定する
希釈倍率の記録ミス 換算後濃度が誤る 希釈操作を記録する
ブランク補正不足 試薬や容器由来の値を含む 試薬ブランクを測定する
流速測定の距離不足 平均流速の誤差が大きくなる 十分な距離と反復を設ける
浮子の風の影響 表面流速を誤る 風の弱い条件で複数回測る
平均水深の推定不足 流量計算がずれる 複数点で水深を測る
反復数不足 偶然誤差を評価できない 同一試料を複数回測定する
地点ごとの条件差 単純比較が不適切になる 流量、日照、底質なども記録する
季節差の無視 一時的な値を一般化する 異なる季節に継続調査する
単一指標だけで評価 水質を誤って解釈する 複数項目を総合して考察する

結果文の例

河川上流の地点A、住宅地付近の地点B、流れの少ない池の地点Cについて、水温、pH、電気伝導度、溶存酸素、COD、窒素、リンを測定した。

水温は地点Aで17.6℃、地点Bで20.8℃、地点Cで23.9℃であり、流れの少ない地点Cで最も高かった。

pHは地点Aで7.2、地点Bで7.5、地点Cで8.3であった。

電気伝導度は地点Aで78 µS/cm、地点Bで215 µS/cm、地点Cで328 µS/cmであり、地点Cで最も高かった。

溶存酸素濃度は地点Aで9.4 mg/L、地点Bで7.1 mg/L、地点Cで5.2 mg/Lであり、地点Cで最も低かった。

CODは地点Aで1.4 mg/L、地点Bで3.8 mg/L、地点Cで7.2 mg/Lであった。

リン酸態リンは地点Aで0.015 mg/L、地点Bで0.080 mg/L、地点Cで0.160 mg/Lであり、地点Cほど高い値を示した。

以上より、地点Aは溶存酸素が高く、CODと栄養塩濃度が低かった。一方、地点Cは溶存酸素が低く、COD、電気伝導度、アンモニウム態窒素、リン酸態リンが高かった。

考察例

本調査では、環境条件の異なる3地点について、水温、pH、電気伝導度、溶存酸素、COD、窒素、リンなどを測定し、水質の違いを比較した。

地点Aは河川上流に位置し、水温17.6℃、溶存酸素9.4 mg/L、COD 1.4 mg/Lであった。

地点Aで溶存酸素が高かった理由として、水温が低いこと、流れが速く水面での曝気が起こりやすいこと、有機物負荷が比較的小さいことが考えられる。

一般に、水温が低いほど酸素は水に溶けやすい。また、瀬や落差のある流れでは、水と空気が接触するため酸素が供給されやすい。

地点AのCODは3地点中で最も低く、硝酸態窒素、アンモニウム態窒素、リン酸態リンも低かった。

このことから、地点Aは有機物や栄養塩の流入が比較的少なく、良好な水質を保っていたと考えられる。

地点Bは住宅地付近にあり、水温20.8℃、電気伝導度215 µS/cm、COD 3.8 mg/Lであった。

地点Aより電気伝導度が高かったことから、水中の溶存イオン量が増加していたと考えられる。

この原因としては、周辺地質の違いに加え、道路排水、生活域からの流入、肥料成分などが考えられる。ただし、電気伝導度だけではイオンの種類を特定できないため、塩化物イオンや窒素化合物などの測定結果と合わせて判断する必要がある。

地点Bの硝酸態窒素は1.20 mg/Lで、3地点中で最も高かった。

硝酸態窒素が高かった原因として、住宅地や農地からの流出、土壌中で生成した硝酸の流入などが考えられる。

一方、アンモニウム態窒素は地点Cより低かった。流れがあり、酸素が比較的多い地点Bでは、アンモニウムが硝化によって硝酸へ変化しやすかった可能性がある。

地点Cは流れの少ない池で、水温23.9℃、溶存酸素5.2 mg/L、COD 7.2 mg/Lであった。

地点Cの溶存酸素が低かった理由として、高水温、流れの少なさ、底泥や有機物の分解による酸素消費が考えられる。

地点Cでは藻類臭があり、透明度も低かった。また、pHは8.3と3地点中で最も高かった。

昼間に藻類や水生植物の光合成が活発になると、水中の二酸化炭素が消費され、pHが上昇することがある。

一方、夜間には光合成が停止し、生物の呼吸によって酸素が消費されるため、溶存酸素がさらに低下する可能性がある。

したがって、地点Cの水質を詳しく評価するには、昼間だけでなく早朝や夜間にも測定し、日変化を確認することが望ましい。

地点Cではアンモニウム態窒素0.42 mg/L、リン酸態リン0.160 mg/Lと高い値を示した。

流れの少ない水域では、落葉、藻類、水生生物の死骸などが底部に蓄積し、分解によって窒素やリンが水中へ放出される場合がある。

底層の酸素が不足すると、底泥からリンが溶出しやすくなることもある。その結果、藻類の増殖をさらに促進する可能性がある。

地点CのCODが地点Aの約5.1倍であったことから、酸化されやすい物質の量が多いと考えられた。

ただし、CODには有機物だけでなく、一部の無機還元性物質も影響するため、CODのみから有機汚濁の原因を断定することはできない。

水の濁りや色、底質、クロロフィル量、生物化学的酸素要求量なども合わせて調べると、より詳しい評価が可能になる。

降雨後には、地点Bの濁りとCOD、硝酸態窒素が上昇し、電気伝導度は低下した。

濁りやCODの上昇は、雨水によって土砂や有機物が流入したためと考えられる。

電気伝導度が低下した理由として、イオン濃度の低い雨水によって河川水が一時的に希釈された可能性がある。

一方、硝酸態窒素が上昇したことから、降雨によって周辺土壌や地表面から窒素成分が流出した可能性がある。

このように、降雨は希釈と物質流入の両方を引き起こすため、項目によって増減の方向が異なる。

反復測定では、地点Bの溶存酸素の平均値は7.1 mg/L、標準偏差は0.10 mg/L、変動係数は約1.4%であった。

反復間のばらつきが比較的小さかったことから、同一試料に対する測定の再現性はおおむね良好であったと考えられる。

ただし、水域そのものには空間的・時間的な不均一性がある。採水地点や深度が少し変わるだけでも値が異なる可能性があるため、機器測定の反復だけでなく、複数地点・複数時刻の試料を比較する必要がある。

本調査の結果から、地点Aは低水温、高溶存酸素、低COD、低栄養塩であり、3地点の中では比較的良好な水質であった。

地点Bは電気伝導度と硝酸態窒素が地点Aより高く、周辺の人間活動や土地利用の影響を受けている可能性が示された。

地点Cは高水温、低溶存酸素、高COD、高リン濃度を示し、有機物の蓄積や富栄養化の影響が強いと考えられた。

ただし、今回の調査は1日の限られた時間帯に行ったものであり、季節変化や日変化を十分に反映していない。

今後は、春夏秋冬の継続調査、降雨前後の比較、早朝と昼間の測定、生物相調査を組み合わせることで、水質変化の原因をより詳しく検討できると考えられる。

溶存酸素が低かった場合の考察例

溶存酸素が低かった原因として、水温の上昇、流れの停滞、有機物分解による酸素消費、水生生物の呼吸、底泥の還元状態などが考えられる。早朝と昼間の値を比較し、日変化を確認する必要がある。

pHが高かった場合の考察例

pHが高かった原因として、藻類や水生植物の光合成による二酸化炭素の消費が考えられる。日照の強い昼間はpHが上昇しやすいため、測定時刻、藻類量、溶存酸素と合わせて評価する必要がある。

CODが高かった場合の考察例

CODが高かった場合、水中に酸化されやすい有機物や還元性物質が多い可能性がある。生活排水、落葉、藻類、底泥の巻き上がりなどが原因として考えられる。濁り、におい、栄養塩、底質の状態も確認する必要がある。

電気伝導度が高かった場合の考察例

電気伝導度が高かったことは、水中の溶存イオン量が多いことを示す。原因として、生活排水、肥料、道路排水、地質、塩水の影響などが考えられるが、電気伝導度のみでは成分を特定できないため、個別イオンの分析が必要である。

地点差が小さかった場合の考察例

地点間の差が小さかった場合、各地点が同じ水系に属し、水の交換が速かった可能性がある。また、採水時刻や直前の降雨条件が共通していたことも影響すると考えられる。季節や流量の異なる条件で再調査する必要がある。

まとめ

水質調査では、水温、pH、電気伝導度、溶存酸素、COD、窒素、リンなどを組み合わせて水環境を評価します。

流れが速く水温の低い地点では、溶存酸素が高くなる傾向があります。

流れの少ない水域では、有機物や栄養塩が蓄積し、COD上昇や溶存酸素低下が起こる場合があります。

降雨、季節、時刻、周辺土地利用は測定値に大きく影響します。

単一項目だけで水質を断定せず、現地観察、複数の水質指標、反復測定、継続調査を総合して考察することが重要です。