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熱伝導率の考察例|フーリエの法則・温度勾配・熱損失・誤差原因

熱伝導率の測定は、物質の内部を熱がどの程度伝わりやすいかを調べる実験です。金属、ガラス、樹脂、断熱材などは、同じ温度差を与えても伝わる熱量が異なります。

熱伝導率が大きい物質ほど熱を速く伝え、熱伝導率が小さい物質ほど熱を通しにくくなります。例えば、銅やアルミニウムなどの金属は熱伝導率が大きく、発泡樹脂や空気を多く含む材料は熱伝導率が小さい傾向があります。

代表的な測定方法には、棒状試料の一端を加熱し、定常状態における温度分布と熱流量から求める定常法があります。理想的には、試料を通過する熱量が一定で、熱は試料の長さ方向だけに流れると仮定します。

この記事では、棒状試料または板状試料の両端に温度差をつけ、フーリエの法則から熱伝導率を求める実験を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。

注意:

この記事は、学校や大学などの物理実験で得られた結果を考察するための学習用参考資料です。掲載している条件と測定値は説明用の例であり、実際の測定結果ではありません。

ヒーター、加熱した試料、温水、蒸気などを扱う場合は、やけどに注意してください。通電中のヒーター端子や露出配線には触れず、配線変更前には必ず電源を切ります。試料が高温になっている可能性があるため、測定後も十分に冷却してから触れてください。実際の操作は所属学校の実験書、担当教員、TAの指示に従ってください。

熱伝導率とは

熱伝導率は、物質内部に温度差があるとき、その物質がどの程度熱を伝えやすいかを表す物性値です。一般に記号 k または λ で表します。

SI単位は次のとおりです。

W/(m·K)

熱伝導率が大きいほど、同じ断面積、長さ、温度差の条件で、より多くの熱が伝わります。

フーリエの法則

一次元の定常熱伝導では、単位時間あたりに伝わる熱量、すなわち熱流量 は、フーリエの法則によって次のように表されます。

Q̇ = −kA(dT/dx)

ここで、k は熱伝導率、A は熱が通過する断面積、dT/dx は温度勾配です。負号は、熱が高温側から低温側へ流れることを表します。

試料の長さ L の間で温度が高温側 Th から低温側 Tc まで直線的に変化すると仮定すると、熱流量の大きさは次のようになります。

Q̇ = kA(Th − Tc)/L

したがって、熱伝導率は次の式から求められます。

k = Q̇L/{A(Th − Tc)}

電気ヒーターを用いる場合

ヒーターへ加えた電力をすべて試料へ流れる熱流量とみなす場合、電力は電圧 V と電流 I から求められます。

P = VI

熱損失を無視すると、 = P と考えられるため、熱伝導率は次のようになります。

k = VIL/{A(Th − Tc)}

ただし、実際にはヒーターから空気、支持部、配線などへ熱が逃げるため、入力電力のすべてが試料を通過するとは限りません。

結果に記録する主な項目

  • 試料の材質
  • 試料の形状
  • 試料の長さ
  • 試料の直径または幅・厚さ
  • 熱流方向に垂直な断面積
  • ヒーター電圧
  • ヒーター電流
  • 入力電力
  • 高温側温度
  • 低温側温度
  • 各測定点の位置と温度
  • 定常状態へ達するまでの時間
  • 温度差
  • 温度勾配
  • 熱流量
  • 熱伝導率
  • 参考値または文献値
  • 相対誤差
  • 室温
  • 繰り返し測定の平均値とばらつき

参考実験条件

項目 参考条件
試料 アルミニウム棒
試料長さL 0.200 m
試料直径d 0.0200 m
断面積A 3.14 × 10−4 m2
ヒーター電圧V 12.0 V
ヒーター電流I 0.500 A
入力電力P 6.00 W
高温側温度Th 78.0 ℃
低温側温度Tc 61.0 ℃
室温 23.0 ℃
定常到達時間 約25分

参考実験値

アルミニウム棒の温度分布

高温端からの距離x(m) 温度T(℃)
0.000 78.0
0.040 74.6
0.080 71.2
0.120 67.8
0.160 64.4
0.200 61.0

入力電力を変えた場合

入力電力P(W) 高温側温度(℃) 低温側温度(℃) 温度差ΔT(K) 見かけの熱伝導率(W/(m·K))
3.00 52.1 43.5 8.6 222
4.00 61.0 49.6 11.4 223
5.00 69.6 55.4 14.2 224
6.00 78.0 61.0 17.0 225

材料別の参考熱伝導率

物質 参考熱伝導率(W/(m·K))
約400
アルミニウム 約230
約80
ステンレス鋼 約15
ガラス 約1
約0.6
木材 約0.1~0.2
空気 約0.026

定常状態へ達するまでの温度変化

加熱開始後の時間(min) 高温側温度(℃) 低温側温度(℃)
0 23.0 23.0
5 48.0 28.5
10 63.5 40.2
15 72.4 51.0
20 76.8 58.0
25 78.0 61.0
30 78.1 61.1

計算方法

円柱試料の断面積

直径0.0200 mの円柱試料では、半径は0.0100 mです。

A = πr2

= π × (0.0100)2

= 3.14 × 10−4 m2

ヒーターの入力電力

電圧12.0 V、電流0.500 Aの場合は、次のようになります。

P = VI

= 12.0 × 0.500

= 6.00 W

温度勾配

高温側78.0 ℃、低温側61.0 ℃、測定間隔0.200 mの場合は、温度勾配の大きさは次のようになります。

|dT/dx| ≈ (78.0 − 61.0)/0.200

= 85.0 K/m

熱伝導率

入力電力のすべてが試料を通過すると仮定した場合は、次のようになります。

k = PL/(AΔT)

= 6.00 × 0.200/{(3.14 × 10−4) × 17.0}

= 225 W/(m·K)

熱流束

単位面積あたりの熱流量を熱流束 q といいます。

q = Q̇/A

= 6.00/(3.14 × 10−4)

= 1.91 × 104 W/m2

相対誤差

実験値225 W/(m·K)、参考値230 W/(m·K)の場合は、次のようになります。

相対誤差(%) = |実験値 − 参考値|/参考値 × 100

= |225 − 230|/230 × 100

= 2.17%

熱抵抗

試料の熱の通しにくさは、熱抵抗 Rth で表すこともできます。

Rth = L/(kA)

今回の条件では、次のようになります。

Rth = 0.200/{225 × 3.14 × 10−4}

= 2.83 K/W

温度差は、熱流量と熱抵抗の積として表せます。

ΔT = Q̇Rth

主な誤差原因

誤差原因 測定への影響 結果に現れやすい傾向 改善方法
側面からの熱損失 入力熱の一部が空気へ逃げる 試料を通る熱流量を過大評価し、熱伝導率を大きく求めやすい 試料側面を断熱する
放射による熱損失 高温表面から周囲へ熱が放出される 高温条件ほど誤差が大きくなる 放射シールドを設ける
接触熱抵抗 ヒーター、試料、冷却部の接触面に温度差が生じる 試料内部の温度差を過大評価し、熱伝導率を小さく求めやすい 表面を平滑化し、熱伝導グリースを使う
温度センサの位置ずれ 想定した位置と異なる温度を測る 温度勾配がずれる センサ位置を正確に測定する
温度センサの接触不良 試料温度を正しく反映しない 測定値が不安定になる センサを密着させ固定する
定常状態に達していない 試料内部に熱が蓄積中である 時間によって熱伝導率が変化する 各点の温度が一定になるまで待つ
入力電力の変動 熱流量が一定にならない 温度差が揺れる 安定化電源を使用する
ヒーター効率を100%と仮定 試料へ入る熱量を過大評価する 熱伝導率を大きく求める 損失補正または比較測定を行う
試料断面積の測定誤差 熱流束の計算がずれる 断面積を小さく読むと熱伝導率を大きく求める 複数箇所で直径や厚さを測る
試料長さの測定誤差 温度勾配の計算がずれる 測定距離を大きく読むと熱伝導率が大きくなる 温度センサ間距離を直接測る
材料の不均一性 局所的に熱伝導率が異なる 温度分布が直線から外れる 均質な試料を使用する
温度依存性 熱伝導率が温度によって変化する 高温側と低温側で一定値にならない 平均温度に対応する参考値と比較する
自然対流 周囲の空気によって熱が運ばれる 装置姿勢や空気流で結果が変わる 風を避け、断熱カバーを使う
センサ配線からの熱伝導 配線を通じて熱が逃げる 局所温度が変化する 細い配線を使い、熱流方向を工夫する

温度分布が直線になる理由

一様な試料を用い、熱伝導率が一定で、側面からの熱損失がなく、定常状態に達している場合、試料内を流れる熱流量はどの位置でも同じです。

フーリエの法則より、熱流量が一定なら温度勾配も一定となるため、温度と位置の関係は直線になります。

入力電力を大きくすると温度差が大きくなる理由

試料の材質、長さ、断面積が一定なら、フーリエの法則より温度差は熱流量に比例します。そのため、ヒーター電力を増やすと高温側と低温側の温度差が大きくなります。

断面積が大きいほど熱を通しやすい理由

熱は試料の断面全体を通って伝わります。断面積が大きいほど熱の通り道が広くなるため、同じ温度差では熱流量が増加します。

試料が長いほど熱を通しにくい理由

試料が長いほど、同じ温度差に対する温度勾配が小さくなります。そのため、同じ材質と断面積では、試料が長いほど単位時間あたりに伝わる熱量は小さくなります。

結果の書き方の例

長さ0.200 m、直径0.0200 mのアルミニウム棒の一端を電気ヒーターで加熱し、定常状態における高温側温度と低温側温度を測定した。

ヒーター電圧は12.0 V、電流は0.500 Aであり、入力電力は6.00 Wであった。高温側温度は78.0 ℃、低温側温度は61.0 ℃であり、温度差は17.0 Kであった。

試料断面積を3.14 × 10−4 m2としてフーリエの法則を用いた結果、熱伝導率は225 W/(m·K)となった。アルミニウムの参考値230 W/(m·K)に対する相対誤差は2.17%であった。

考察につなげるポイント

  • 各測定点の温度は時間とともに一定になったか。
  • 温度と位置の関係は直線になったか。
  • 入力電力と温度差は比例したか。
  • 求めた熱伝導率は参考値に近かったか。
  • 側面からの熱損失は無視できたか。
  • ヒーターの入力電力をすべて熱流量とみなしてよいか。
  • 接触熱抵抗は結果へどのように影響したか。
  • 温度センサの位置と接触状態は適切だったか。
  • 試料の断面積とセンサ間距離を正確に測定できたか。
  • 熱伝導率の温度依存性は無視できたか。
  • 放射や自然対流による熱損失はなかったか。
  • 測定値の再現性は十分であったか。

考察例

本実験では、アルミニウム棒の一端を電気ヒーターで加熱し、定常状態における温度分布と入力電力から熱伝導率を求めた。

加熱開始直後は高温側と低温側の温度が時間とともに上昇したが、約25分後には各測定点の温度変化が小さくなった。この状態では、試料へ流入する熱量と試料から流出する熱量がほぼ等しくなり、定常状態に達したと考えられる。

高温端からの距離と温度の関係は、おおむね直線となった。一様な試料で熱伝導率が一定であり、熱が長さ方向だけに流れる場合、フーリエの法則から温度勾配は一定になるためである。

ヒーター電圧12.0 V、電流0.500 Aより入力電力は6.00 Wであった。高温側温度78.0 ℃、低温側温度61.0 ℃、試料長さ0.200 m、断面積3.14 × 10−4 m2を用いて計算した結果、熱伝導率は225 W/(m·K)となった。

この値はアルミニウムの参考値230 W/(m·K)に近く、相対誤差は2.17%であった。したがって、測定結果はアルミニウムが熱を伝えやすい材料であることを示している。

一方、本計算ではヒーターへ供給した電力がすべて試料を通過すると仮定した。しかし実際には、ヒーター表面、試料側面、支持部、配線などから周囲へ熱が逃げる。

入力電力の一部が試料を通らずに失われているにもかかわらず、全入力電力を熱流量として計算すると、試料を通過する熱量を過大評価するため、熱伝導率を実際より大きく求める方向へ影響する。

また、ヒーターと試料、試料と冷却部、温度センサと試料の接触面には接触熱抵抗が存在する。接触面に微小な隙間や空気層があると、そこで余分な温度差が生じる。

試料内部の温度差に接触部の温度差が含まれると、試料本体の温度勾配を過大評価し、熱伝導率を実際より小さく求める可能性がある。

側面からの熱損失と接触熱抵抗は、熱伝導率へ反対方向の誤差を与える場合があるため、実験値が参考値に近くても、それぞれの誤差が偶然打ち消し合っている可能性に注意する必要がある。

温度センサの位置誤差も重要である。温度勾配の計算では、温度差だけでなくセンサ間距離を用いるため、測定位置が数mmずれるだけでも、短い試料では無視できない誤差となる。

さらに、温度センサが試料へ十分に密着していない場合、センサは試料温度と周囲空気温度の中間的な値を示す可能性がある。熱伝導グリースや固定具を用いて、接触状態を一定にする必要がある。

入力電力を3.00~6.00 Wまで変えた場合、温度差は入力電力の増加に伴ってほぼ比例して増加した。試料の熱伝導率、長さ、断面積が一定なら、フーリエの法則から温度差は熱流量に比例するため、理論と一致する傾向である。

ただし、高温条件では自然対流や放射による熱損失が増加するため、入力電力が大きいほど理想的な比例関係から外れる可能性がある。

測定精度を高めるには、試料側面を断熱材で覆うこと、接触面を平滑にして熱伝導グリースを用いること、各温度が十分に安定してから測定すること、ヒーター損失を校正することが有効である。

以上より、アルミニウム棒の温度分布と熱流量から熱伝導率を求めることができた。結果は参考値に近かったが、側面からの熱損失、接触熱抵抗、温度センサの位置と接触状態、入力電力の見積もりなどが主な誤差原因として考えられる。

熱伝導率が参考値より大きかった場合の考察例

熱伝導率が参考値より大きくなった原因として、入力電力のすべてが試料を通過すると仮定したことが考えられる。実際には側面、ヒーター表面、支持部などから熱が逃げるため、試料を通る熱流量は入力電力より小さい。入力電力をそのまま用いると熱流量を過大評価し、熱伝導率を大きく求める。

熱伝導率が参考値より小さかった場合の考察例

熱伝導率が参考値より小さくなった原因として、ヒーターと試料、試料と冷却部、温度センサと試料の接触熱抵抗が考えられる。接触面で生じた余分な温度差を試料内部の温度差として扱うと、温度勾配を過大評価し、熱伝導率を小さく求める。

温度分布が直線にならなかった場合の考察例

温度分布が直線にならなかった原因として、定常状態に達していなかったこと、側面から位置によって異なる熱損失があったこと、試料が不均一であったこと、温度センサの接触状態が一定でなかったことなどが考えられる。

測定値のばらつきが大きかった場合の考察例

測定値のばらつきが大きかった原因として、入力電力の変動、温度センサの固定不足、室内の気流、定常状態の判定方法の違いなどが考えられる。各測定点の温度変化率が十分小さくなったことを確認し、同じ条件で複数回測定する必要がある。

まとめ

熱伝導率の測定では、試料を通る熱流量、試料の長さ、断面積、温度差から、フーリエの法則を用いて熱伝導率を求めます。

定常法では、各測定点の温度が時間的に一定になり、温度分布がほぼ直線となることを確認することが重要です。

考察では、側面からの熱損失、接触熱抵抗、温度センサの位置と接触状態、入力電力の見積もり、定常状態の判定などを、実験値が参考値より大きいか小さいかと関連づけて説明することが重要です。