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比熱測定の考察例|混合法・熱量保存・熱量計補正・誤差原因

比熱測定の実験は、物質へ熱を加えたときの温度変化を調べ、その物質がどれだけ熱を蓄えやすいかを示す比熱を求める実験です。

代表的な方法として、加熱した金属試料を既知量の水へ入れ、最終的な平衡温度を測定する混合法があります。高温の金属が失った熱量と、水および熱量計が受け取った熱量が等しいと仮定して比熱を計算します。

理想的には系の外部との熱の出入りはありません。しかし、実際には空気や容器への熱損失、試料表面に付着した水、温度計の応答遅れ、試料が水へ移るまでの冷却などが結果へ影響します。

この記事では、金属試料を沸騰水中で加熱し、熱量計内の水へ投入する実験を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。

注意:

この記事は、学校や大学などの物理実験で得られた結果を考察するための学習用参考資料です。掲載している実験条件と測定値は説明用の例であり、実際の測定結果ではありません。

熱湯、加熱した金属、ヒーター、バーナーなどを扱う場合は、やけどに注意してください。加熱した試料は素手で触れず、トングや耐熱手袋を使用します。ガラス器具の急冷や破損にも注意し、実際の操作は所属学校の実験書、担当教員、TAの指示に従ってください。

比熱とは

比熱とは、単位質量の物質の温度を1 K、または1 ℃上昇させるために必要な熱量です。

Q = mcΔT

ここで、Q は熱量、m は質量、c は比熱、ΔT は温度変化です。

比熱のSI単位は、J/(kg·K)です。実験ではJ/(g·K)やJ/(g·℃)を用いる場合もあります。

混合法の原理

高温の金属試料を低温の水へ入れると、金属から水へ熱が移動し、最終的に同じ温度へ近づきます。

外部との熱交換を無視すると、次の熱量保存が成立します。

金属が失った熱量 = 水が得た熱量 + 熱量計が得た熱量

金属の質量を ms、比熱を cs、初期温度を Ts、水の質量を mw、比熱を cw、初期温度を Tw、平衡温度を Tf、熱量計の熱容量を Ccal とすると、次の式になります。

mscs(Ts − Tf) = mwcw(Tf − Tw) + Ccal(Tf − Tw)

したがって、金属の比熱は次のように求められます。

cs = {(mwcw + Ccal)(Tf − Tw)}/{ms(Ts − Tf)}

結果に記録する主な項目

  • 試料の種類
  • 試料の質量
  • 試料の加熱温度
  • 水の質量
  • 水の初期温度
  • 熱量計の質量または熱容量
  • 混合後の最高温度または補正平衡温度
  • 試料の温度降下
  • 水の温度上昇
  • 金属が失った熱量
  • 水が得た熱量
  • 熱量計が得た熱量
  • 試料の比熱
  • 参考値または文献値
  • 相対誤差
  • 繰り返し測定の平均値
  • 温度の時間変化
  • 室温

参考実験条件

項目 参考条件
試料 アルミニウム
試料質量ms 50.0 g
試料初期温度Ts 98.0 ℃
水の質量mw 100.0 g
水の初期温度Tw 22.0 ℃
平衡温度Tf 29.8 ℃
水の比熱cw 4.18 J/(g·K)
熱量計の熱容量Ccal 20.0 J/K
室温 22.5 ℃

参考実験値

アルミニウム試料の測定例

測定回 試料質量(g) 試料初期温度(℃) 水質量(g) 水初期温度(℃) 平衡温度(℃) 比熱(J/(g·K))
1 50.0 98.0 100.0 22.0 29.8 0.90
2 50.0 97.5 100.2 22.1 29.7 0.89
3 50.1 98.2 99.8 21.9 29.9 0.91
平均 0.90

材料別の参考比熱

物質 参考比熱(J/(g·K))
アルミニウム 約0.90
約0.45
約0.39
真ちゅう 約0.38
約0.13
約4.18

温度の時間変化の参考例

混合後の時間(s) 温度(℃)
0 22.0
10 27.2
20 29.0
30 29.8
40 29.7
60 29.5
90 29.2
120 28.9

計算方法

水が得た熱量

水100.0 g、初期温度22.0 ℃、平衡温度29.8 ℃の場合は、次のようになります。

Qw = mwcw(Tf − Tw)

= 100.0 × 4.18 × (29.8 − 22.0)

= 3260 J

熱量計が得た熱量

熱量計の熱容量を20.0 J/Kとすると、次のようになります。

Qcal = Ccal(Tf − Tw)

= 20.0 × (29.8 − 22.0)

= 156 J

金属が失った熱量

外部への熱損失を無視すると、金属が失った熱量は水と熱量計が得た熱量の合計です。

Qs = Qw + Qcal

= 3260 + 156

= 3416 J

金属試料の比熱

試料質量50.0 g、試料初期温度98.0 ℃、平衡温度29.8 ℃の場合は、次のようになります。

cs = Qs/{ms(Ts − Tf)}

= 3416/{50.0 × (98.0 − 29.8)}

= 1.00 J/(g·K)

この例では、参考値0.90 J/(g·K)よりやや大きくなっています。これは説明用の測定値に熱損失や付着水などの影響を含めた例です。

熱量計を無視した場合

熱量計の熱容量を無視すると、次のようになります。

cs = mwcw(Tf − Tw)/{ms(Ts − Tf)}

= 3260/{50.0 × 68.2}

= 0.956 J/(g·K)

熱量計が受け取った熱を無視すると、金属が失った熱量を小さく見積もるため、比熱も小さく計算されます。

相対誤差

実験値1.00 J/(g·K)、参考値0.90 J/(g·K)の場合は、次のようになります。

相対誤差(%) = |実験値 − 参考値| / 参考値 × 100

= |1.00 − 0.90|/0.90 × 100

= 11.1%

熱量計の水当量

熱量計の熱容量を、水の質量に換算したものを水当量といいます。

W = Ccal/cw

= 20.0/4.18

= 4.78 g

水当量を用いると、熱量計を水4.78 gとして扱うことができます。

主な誤差原因

誤差原因 測定への影響 結果に現れやすい傾向 改善方法
外部への熱損失 水へ移る熱量が減少する 平衡温度が低くなり、比熱を小さく求めやすい 断熱性を高め、素早く測定する
試料移動中の冷却 実際の試料初期温度が低下する 試料温度を高く見積もると比熱を小さく求める 加熱槽から素早く移す
試料表面の付着水 高温の水が熱量計へ入る 平衡温度が高くなり、比熱を大きく求めやすい 表面の水滴を素早く拭き取る
熱量計の熱容量を無視 吸収熱量を過小評価する 比熱を小さく求める 熱容量または水当量を補正する
温度計の熱容量 温度計も熱を吸収する 平衡温度が低くなる 装置定数へ含める
温度計の応答遅れ 最高温度を読み逃す 平衡温度を低く読む 温度を連続記録し補外する
かくはん不足 水温が均一にならない 測定位置によって温度が異なる 一定の速さで十分にかくはんする
かくはんによる熱交換 ふたを開ける時間が長くなる 外部への熱損失が増える ふたを閉じた状態でかくはんする
水の質量測定誤差 水が得た熱量の計算がずれる 質量を大きく読むと比熱が大きくなる 容器差し引きで正確に量る
試料質量測定誤差 比熱計算へ反比例して影響する 質量を大きく読むと比熱が小さくなる 乾燥後に精密天秤で量る
沸騰水温度を100 ℃と仮定 気圧や高度による差を無視する 実際より高く見積もると比熱が小さくなる 加熱槽の温度を直接測る
蒸発 水質量と熱量が変化する 条件によって系統誤差になる ふたを使用し測定時間を短くする
試料内部の温度不均一 試料全体が加熱温度へ達していない 比熱を小さく求めやすい 十分な時間加熱する
容器壁への付着 試料が水へ完全に浸らない 熱交換が不十分になる 試料を水中へ完全に沈める

比熱が大きい物質ほど温度が変わりにくい理由

熱量の式 Q = mcΔT より、同じ質量の物質へ同じ熱量を与えた場合、温度変化は比熱に反比例します。したがって、比熱が大きい物質ほど温度変化が小さくなります。

水が熱量計に使われやすい理由

水は比熱が大きく、温度変化を比較的安定して測定できます。また、入手しやすく、質量や温度を測定しやすいことも理由です。

最高温度を使う理由

混合後は水と金属の間で熱交換が進みますが、同時に周囲への熱損失も始まります。測定温度が最大となる付近が、熱平衡温度に最も近い値と考えられます。

温度補外を行う理由

外部への熱損失がある場合、観測された最高温度は理想的な平衡温度より低くなります。混合後の冷却曲線を混合時刻まで外挿することで、熱損失がなかった場合の平衡温度を推定できます。

結果の書き方の例

質量50.0 gのアルミニウム試料を98.0 ℃まで加熱し、質量100.0 g、初期温度22.0 ℃の水へ投入した。混合後の最高温度は29.8 ℃であった。

水の比熱を4.18 J/(g·K)、熱量計の熱容量を20.0 J/Kとして熱量保存式を用いたところ、試料の比熱は1.00 J/(g·K)と求められた。

アルミニウムの参考値0.90 J/(g·K)に対する相対誤差は11.1%であった。

考察につなげるポイント

  • 金属が失った熱量と、水および熱量計が得た熱量は一致したか。
  • 求めた比熱は参考値に近かったか。
  • 熱量計の熱容量を考慮すると結果はどう変化したか。
  • 外部への熱損失は比熱をどちら向きにずらしたか。
  • 試料移動中の冷却は無視できたか。
  • 試料表面の付着水は結果へどう影響したか。
  • 最高温度を正しく読み取れたか。
  • 温度計の応答遅れはなかったか。
  • かくはんは十分であったか。
  • 試料は加熱槽の温度まで十分に加熱されたか。
  • 沸騰水温度を100 ℃とした仮定は妥当か。
  • 温度補外を行う必要があったか。

考察例

本実験では、加熱したアルミニウム試料を既知量の水へ投入し、熱量保存の関係からアルミニウムの比熱を求めた。

質量50.0 gの試料を98.0 ℃まで加熱し、質量100.0 g、初期温度22.0 ℃の水へ投入したところ、混合後の最高温度は29.8 ℃となった。

水の比熱を4.18 J/(g·K)、熱量計の熱容量を20.0 J/Kとして計算した結果、試料の比熱は1.00 J/(g·K)となった。アルミニウムの参考値0.90 J/(g·K)と比べると、実験値は約11%大きかった。

混合法では、高温の試料が失った熱量と、水および熱量計が得た熱量が等しいと仮定する。しかし、実際には周囲の空気、机、ふた、温度計などへも熱が移動するため、理想的な断熱系ではない。

外部への熱損失が大きい場合、測定される平衡温度は理想値より低くなる。平衡温度を低く読むと、水が得た熱量を小さく計算するため、一般には試料の比熱を小さく求める方向へ影響する。

一方、今回の実験値は参考値より大きかった。その原因として、加熱した試料の表面に付着した高温の水が熱量計内へ持ち込まれた可能性が考えられる。

付着水は試料とは別に熱を水へ与えるため、平衡温度を高くする。この熱まで金属試料が失った熱量として計算すると、試料の比熱を実際より大きく求めることになる。

また、熱量計の熱容量の見積もりが大きすぎた場合も、水と熱量計が得た熱量を過大評価するため、試料の比熱は大きく計算される。

温度測定では、混合後に温度が上昇して最高値へ達した後、周囲への熱損失によって低下した。温度計の応答が遅い場合には、実際の最高温度より低い値しか記録できない可能性がある。

この誤差を小さくするには、混合直後から温度を短い時間間隔で記録し、温度と時間のグラフを作成して、冷却曲線を混合時刻へ外挿する方法が有効である。

試料の初期温度についても、加熱槽から熱量計へ移す間に試料が冷却されるため、加熱槽の温度と完全には一致しない。実際の試料温度が98.0 ℃より低いのに98.0 ℃として計算すると、温度降下を大きく見積もり、比熱を小さく求める。

したがって、試料移動中の冷却と付着水は、比熱へ反対向きの影響を与える可能性がある。どちらが支配的であったかを、実験値が参考値より大きいか小さいかと関連づけて考える必要がある。

かくはんが不十分な場合、熱量計内に温度むらが生じ、温度計の位置によって測定値が変化する。十分にかくはんしながら、温度計が試料や容器壁へ直接触れないようにすることが重要である。

さらに、試料全体が加熱槽の温度まで達していなかった場合、試料の平均初期温度は設定値より低くなる。試料の中心部まで十分に加熱するため、加熱槽へ一定時間保持する必要がある。

測定精度を高めるには、断熱性の高い熱量計を使用すること、試料を素早く移すこと、表面の水滴を除くこと、混合直後から温度を連続測定すること、熱量計の熱容量を事前に校正することが有効である。

以上より、混合法によってアルミニウムの比熱を求めることができた。実験値と参考値との差には、外部への熱損失、付着水、試料移動中の冷却、熱量計の熱容量、温度測定の遅れなどが影響したと考えられる。

比熱が参考値より小さかった場合の考察例

比熱が参考値より小さくなった原因として、外部への熱損失、試料移動中の冷却、最高温度の読み逃し、熱量計や温度計が吸収した熱を無視したことなどが考えられる。これらはいずれも、水が受け取った熱量または実際の試料温度を過小評価する方向へ影響する。

比熱が参考値より大きかった場合の考察例

比熱が参考値より大きくなった原因として、試料表面の高温の付着水、熱量計の熱容量の過大評価、水の質量の過大測定、試料質量の過小測定などが考えられる。特に付着水が持ち込む熱を金属試料からの熱として計算すると、比熱を大きく求める。

測定値のばらつきが大きかった場合の考察例

測定値のばらつきが大きかった原因として、試料を移す時間、付着水の量、かくはん方法、最高温度を読む時刻が測定ごとに異なったことが考えられる。操作時間と測定手順を統一し、複数回測定して平均値を用いる必要がある。

温度がすぐに低下した場合の考察例

混合後の温度がすぐに低下した原因として、熱量計の断熱性が不十分であったこと、ふたが開いていたこと、室温との差が大きかったことなどが考えられる。観測された最高温度だけでなく、冷却曲線を用いて混合時刻の温度を補外すると精度を改善できる。

まとめ

比熱測定では、物質が失った熱量と、水および熱量計が得た熱量の関係から、試料の比熱を求めます。

混合法では、質量、初期温度、平衡温度、熱量計の熱容量を正確に測定することが重要です。

考察では、熱量保存、外部への熱損失、付着水、試料移動中の冷却、温度計の応答、かくはん、熱量計の熱容量などを、実験値が参考値より大きいか小さいかと関連づけて説明することが重要です。