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半導体特性の考察例|ダイオードのI-V特性・整流作用・温度変化・誤差原因

半導体特性の実験では、半導体素子へ加える電圧と流れる電流の関係を測定し、金属抵抗とは異なる非線形な電気特性を確認します。

代表的な実験では、シリコンダイオードやゲルマニウムダイオードの電流-電圧特性を測定します。ダイオードは、電流を一方向へ流しやすく、反対方向へは流しにくい性質をもつ半導体素子です。

順方向では、ある電圧付近から電流が急激に増加します。一方、逆方向では、ごく小さな漏れ電流しか流れません。この違いは、pn接合に形成される空乏層と内部電位によって説明できます。

この記事では、pn接合ダイオードの順方向・逆方向電流-電圧特性、温度変化、整流性を測定する実験を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。

注意:

この記事は、学校や大学などの物理実験で得られた結果を考察するための学習用参考資料です。掲載している実験条件と測定値は説明用の例であり、実際の測定結果ではありません。

ダイオードへ過大な順方向電流を流すと、発熱や破損の原因になります。必ず電流制限抵抗を接続し、素子の最大定格を超えないようにしてください。逆方向電圧についても、降伏電圧を超えない範囲で測定してください。配線変更は電源を切ってから行い、実際の操作は所属学校の実験書、担当教員、TAの指示に従ってください。

半導体とは

半導体は、導体と絶縁体の中間的な電気伝導性をもつ物質です。代表例として、シリコンやゲルマニウムがあります。

純粋な半導体へ少量の不純物を加えると、電子を主なキャリアとするn型半導体や、正孔を主なキャリアとするp型半導体をつくることができます。

p型半導体とn型半導体を接合するとpn接合が形成されます。接合付近では電子と正孔が再結合し、移動可能なキャリアが少ない空乏層が生じます。

ダイオードの順方向特性

p型側を電源の正極、n型側を負極へ接続する向きを順方向といいます。

順方向電圧を加えると空乏層が狭くなり、内部電位の障壁が低下します。その結果、電圧がある程度大きくなると、多数のキャリアが接合部を通過し、電流が急激に増加します。

ダイオード電流は、理想的には次の式で表されます。

I = IS{exp(qV/nkT) − 1}

ここで、ISは逆方向飽和電流、qは電気素量、Vはダイオード電圧、nは理想係数、kはボルツマン定数、Tは絶対温度です。

シリコンダイオードでは、一般に0.6~0.7 V付近から電流が急増します。この電圧は、しきい値電圧、立ち上がり電圧、順方向電圧などと呼ばれます。

ダイオードの逆方向特性

p型側を負極、n型側を正極へ接続する向きを逆方向といいます。

逆方向電圧を加えると空乏層が広がり、多数キャリアは接合部を通過しにくくなります。そのため、通常はごく小さな逆方向漏れ電流しか流れません。

逆方向電圧をさらに大きくすると、ある電圧で降伏が起こり、電流が急激に増加します。一般的な整流用ダイオードの基礎実験では、素子を保護するため、通常は降伏領域まで測定しません。

温度による変化

半導体の電気特性は温度の影響を受けます。

シリコンダイオードでは、同じ順方向電流を流すために必要な順方向電圧は、温度が上昇すると低下する傾向があります。一般的な目安として、順方向電圧の温度係数は約−2 mV/℃です。

一方、逆方向漏れ電流は温度上昇によって増加します。

結果に記録する主な項目

  • 使用した半導体素子の種類
  • ダイオードの型番
  • 順方向・逆方向の接続
  • 電源電圧
  • 直列抵抗
  • ダイオード両端電圧
  • 順方向電流
  • 逆方向電流
  • 電流-電圧特性グラフ
  • しきい値電圧
  • 指定電流における順方向電圧
  • 静抵抗
  • 動作抵抗
  • 整流比
  • 測定温度
  • 温度ごとの順方向電圧
  • 温度係数
  • 測定器の分解能
  • 測定中の素子温度変化

参考実験条件

項目 参考条件
使用素子 シリコンダイオード
直列抵抗 1.0 kΩ
直流電源 0~10 V
順方向最大電流 10 mA以下
逆方向最大電圧 5 V以下
電圧計分解能 0.001 V
電流計分解能 0.01 mA
測定温度 20、30、40、50 ℃
室温 23 ℃

参考実験値

シリコンダイオードの順方向特性

ダイオード電圧VF(V) 順方向電流IF(mA) 静抵抗V/I(Ω)
0.40 0.01 40000
0.45 0.04 11250
0.50 0.15 3333
0.55 0.48 1146
0.60 1.35 444
0.65 3.20 203
0.70 6.80 103
0.73 9.60 76

逆方向特性

逆方向電圧VR(V) 逆方向電流IR(μA)
0.5 0.02
1.0 0.03
2.0 0.04
3.0 0.05
4.0 0.06
5.0 0.07

温度と順方向電圧

順方向電流を5.0 mAに一定とした場合の参考値です。

温度(℃) 順方向電圧VF(V)
20 0.682
30 0.662
40 0.642
50 0.622

繰り返し測定の例

測定回 5.0 mA時の順方向電圧(V)
1 0.674
2 0.676
3 0.675
4 0.673
5 0.677

計算方法

直列抵抗から電流を求める

電源電圧が5.00 V、ダイオード電圧が0.70 V、直列抵抗が1.0 kΩの場合、回路電流は次のようになります。

I = (VS − VF)/R

= (5.00 − 0.70)/(1.0 × 103)

= 4.30 × 10−3 A

= 4.30 mA

静抵抗の計算

順方向電圧0.65 V、順方向電流3.20 mAの場合は、次のようになります。

Rstatic = V/I

= 0.65/(3.20 × 10−3)

= 203 Ω

動作抵抗の計算

順方向特性の2点、0.65 Vで3.20 mA、0.70 Vで6.80 mAを用いると、動作抵抗は次のようになります。

rd = ΔV/ΔI

= (0.70 − 0.65)/{(6.80 − 3.20) × 10−3}

= 13.9 Ω

静抵抗は原点から測定点までの比V/I、動作抵抗は測定点付近の傾きΔV/ΔIであり、両者は異なります。

整流比の計算

同じ大きさの電圧を順方向と逆方向へ加えたときの電流比を整流比とします。

順方向電流が3.20 mA、逆方向電流が0.05 μAの場合は、次のようになります。

整流比 = IF/IR

= (3.20 × 10−3)/(0.05 × 10−6)

= 6.4 × 104

温度係数の計算

20 ℃で0.682 V、50 ℃で0.622 Vの場合は、次のようになります。

温度係数 = ΔVF/ΔT

= (0.622 − 0.682)/(50 − 20)

= −0.00200 V/℃

= −2.00 mV/℃

順方向電圧の平均

Vavg = (0.674 + 0.676 + 0.675 + 0.673 + 0.677)/5

= 0.675 V

相対誤差の計算

測定した温度係数が−2.00 mV/℃、参考値が−2.10 mV/℃であった場合、絶対値を用いた相対誤差は次のようになります。

相対誤差(%) = |実験値 − 参考値|/|参考値| × 100

= |−2.00 − (−2.10)|/2.10 × 100

= 4.76%

主な誤差原因

誤差原因 測定への影響 結果に現れやすい傾向 改善方法
ダイオードの自己発熱 接合温度が上昇する 順方向電圧が時間とともに低下する 電流を小さくし、短時間で測定する
室温の変化 半導体特性が変化する I-V特性が測定中にずれる 温度を記録し、一定条件で測定する
接触抵抗 配線や端子で電圧降下が生じる ダイオード電圧を大きく見積もる 接点を固定し、ダイオード両端を直接測る
電流計の内部抵抗 回路条件が変化する 実際の電流が理想値からずれる 内部抵抗を考慮する
電圧計の入力抵抗 微小電流が電圧計側へ流れる 低電流領域で誤差が大きくなる 高入力抵抗の電圧計を使う
測定器の分解能 小さな電流や電圧を読めない 低電流・逆方向領域が粗くなる 適切な測定レンジを選ぶ
ゼロ点ずれ 全測定値へ一定の偏りが加わる I-V曲線が平行移動する 測定前にゼロ調整する
直列抵抗の誤差 計算電流がずれる 全電流値に系統誤差が生じる 抵抗値を実測する
電源電圧の変動 動作点が変化する 繰り返し測定値がばらつく 安定化電源を用いる
ダイオードの個体差 同型番でも特性が異なる 参考値としきい値電圧が異なる 複数個を測定して比較する
極性の接続ミス 順方向と逆方向が入れ替わる 電流がほとんど流れない アノードとカソードを確認する
測定点不足 立ち上がり領域を十分に表せない しきい値電圧や動作抵抗が不正確になる 電流急増領域を細かく測定する
電圧の上げ幅が大きい I-V曲線の変化を捉えにくい 立ち上がり位置が曖昧になる 0.01~0.05 V刻みで測る
逆方向電流の微小さ ノイズや漏れ電流の影響を受ける 測定値が不安定になる 微小電流計を使い、絶縁を良くする
温度が均一でない 測定した温度と接合温度が異なる 温度係数が参考値からずれる 十分に熱平衡へ達してから測定する

順方向で電流が急増する理由

順方向電圧を加えると、pn接合の空乏層が狭くなり、キャリアが越えるべき内部電位の障壁が低下します。

その結果、p型側の正孔とn型側の電子が接合部を通過しやすくなり、順方向電流が指数関数的に増加します。

逆方向で電流がほとんど流れない理由

逆方向電圧を加えると空乏層が広がり、多数キャリアは接合部から遠ざけられます。

そのため、多数キャリアによる電流はほとんど流れず、少数キャリアによる微小な漏れ電流だけが流れます。

ダイオードがオームの法則に従わない理由

金属抵抗では、温度が一定なら電圧と電流はおおむね比例します。

一方、ダイオードの電流は電圧に対して指数関数的に変化するため、抵抗値V/Iは一定になりません。そのため、ダイオードは非オーム性素子です。

温度上昇で順方向電圧が低下する理由

温度が上昇すると、半導体内で熱的に励起されるキャリアが増加し、接合部を越えやすくなります。

そのため、同じ順方向電流を流すために必要な電圧は低下します。

結果の書き方の例

シリコンダイオードについて、順方向および逆方向の電流-電圧特性を測定した。

順方向では、電圧が約0.55 V以下の範囲では電流は小さかったが、0.60 V付近から電流が急激に増加した。0.70 Vにおける順方向電流は6.80 mAであった。

逆方向では、5.0 Vまで電圧を増加させても電流は0.07 μA以下であり、順方向と比較して非常に小さかった。

順方向電流5.0 mAにおける順方向電圧は、20 ℃で0.682 V、50 ℃で0.622 Vであった。温度係数は−2.00 mV/℃と求められた。

考察につなげるポイント

  • 順方向電流は電圧に比例したか、急激に増加したか。
  • しきい値電圧はどの程度だったか。
  • 逆方向電流は順方向電流より十分小さかったか。
  • 整流比はどの程度だったか。
  • 静抵抗と動作抵抗は異なったか。
  • ダイオードが非オーム性素子であることを確認できたか。
  • 温度上昇により順方向電圧は低下したか。
  • 温度係数は参考値に近かったか。
  • 測定中の自己発熱はなかったか。
  • 電流急増領域の測定点は十分だったか。
  • ダイオード両端の電圧を直接測定したか。
  • 逆方向電流は測定器の検出限界より十分大きかったか。

考察例

本実験では、シリコンダイオードへ順方向および逆方向の電圧を加え、電流-電圧特性を測定した。

順方向では、電圧が低い範囲では電流はほとんど流れなかったが、約0.60 Vから電流が急激に増加した。0.65 Vでは3.20 mA、0.70 Vでは6.80 mAとなり、わずかな電圧増加によって電流が大きく変化した。

この結果は、ダイオード電流が電圧に比例するのではなく、理想的には指数関数的に増加することと対応している。

pn接合には、キャリアが少ない空乏層と内部電位が形成される。順方向電圧を加えると空乏層が狭くなり、内部電位の障壁が低下するため、電子と正孔が接合部を通過しやすくなる。

一方、逆方向では、5.0 Vを加えても電流は0.07 μA以下であった。逆方向電圧によって空乏層が広がり、多数キャリアの移動が妨げられたためである。

順方向電流と逆方向電流には数万倍以上の差があり、ダイオードが一方向へ電流を流しやすい整流作用をもつことを確認できた。

0.65 V、3.20 mAにおける静抵抗は203 Ωであった。一方、0.65~0.70 Vの範囲から求めた動作抵抗は13.9 Ωであり、静抵抗より小さかった。

これは、ダイオードのI-V特性が直線ではないためである。静抵抗は原点と測定点を結ぶ直線の傾きに対応し、動作抵抗は測定点付近の接線の傾きに対応する。

したがって、ダイオードを一定の抵抗値をもつ素子として扱うことはできず、動作点によって電気的な抵抗が変化する非オーム性素子であるといえる。

温度測定では、順方向電流を5.0 mAに固定したとき、順方向電圧は20 ℃で0.682 V、50 ℃で0.622 Vとなった。温度係数は−2.00 mV/℃であり、温度が上昇すると順方向電圧が低下する傾向を示した。

温度上昇によって半導体内のキャリア濃度が増加し、接合部を越えるキャリアが増えるため、同じ電流を流すのに必要な電圧が小さくなったと考えられる。

誤差原因として、ダイオードの自己発熱が挙げられる。順方向電流を流し続けると接合温度が上昇し、順方向電圧が低下する。そのため、電圧を高い方から低い方へ測定した場合と、低い方から高い方へ測定した場合で、異なるI-V特性が得られる可能性がある。

この影響を小さくするには、電流を必要以上に大きくしないこと、各測定を短時間で行うこと、測定点ごとに素子の温度が安定するのを待つことが有効である。

また、電圧計や電流計の内部抵抗、配線の接触抵抗、直列抵抗の公称値と実測値の差も誤差原因となる。

特に逆方向電流は非常に小さいため、測定器の分解能、絶縁抵抗、配線の漏れ電流、電気的ノイズの影響を受けやすい。逆方向特性を正確に測定するには、微小電流測定に適した装置を使用する必要がある。

しきい値電圧は、電流が突然0から有限値へ変化する厳密な境界ではない。ダイオード電流は連続的かつ指数関数的に増加するため、どの電流値を基準にするか、I-V曲線へ接線を引くかによって、しきい値電圧の値は変化する。

したがって、実験結果には、しきい値電圧の決定方法を明記する必要がある。

以上より、シリコンダイオードは順方向では一定電圧付近から電流が急増し、逆方向ではごく小さな電流しか流さないことを確認できた。また、順方向電圧は温度上昇によって低下し、半導体特性が温度に強く依存することが分かった。

しきい値電圧が参考値より高かった場合の考察例

しきい値電圧が参考値より高くなった原因として、配線や接点の電圧降下をダイオード電圧に含めたこと、素子温度が低かったこと、しきい値を比較的大きな電流値で定義したこと、ダイオードの個体差などが考えられる。

しきい値電圧が参考値より低かった場合の考察例

しきい値電圧が参考値より低くなった原因として、測定中の自己発熱によって接合温度が上昇したこと、電圧計のゼロ点ずれ、しきい値を小さな電流値で判定したことなどが考えられる。

逆方向電流が大きかった場合の考察例

逆方向電流が予想より大きかった原因として、素子温度の上昇、配線や基板表面の漏れ電流、測定器のゼロ点ずれ、ダイオードの劣化、逆方向電圧が高すぎたことなどが考えられる。

I-V特性のばらつきが大きかった場合の考察例

繰り返し測定でI-V特性のばらつきが大きかった原因として、測定中の自己発熱、電源電圧の変動、接触抵抗の変化、測定順序による素子温度の違い、電流急増領域における測定間隔の粗さなどが考えられる。

まとめ

半導体ダイオードは、順方向では一定電圧付近から電流が急激に増加し、逆方向ではごく小さな漏れ電流しか流さない性質をもちます。

電流と電圧は比例しないため、ダイオードは非オーム性素子です。静抵抗と動作抵抗は異なり、動作点によって電気特性が変化します。

また、半導体特性は温度に依存し、シリコンダイオードの順方向電圧は、温度上昇によって低下します。

考察では、pn接合と空乏層による整流作用、自己発熱、測定器の内部抵抗、接触抵抗、温度変化、しきい値電圧の定義などを、測定値の変化と関連づけて説明することが重要です。