共鳴実験は、振動する物体や振動系に周期的な外力を加え、外力の振動数と系の固有振動数が近づいたときに振幅が大きくなる現象を調べる物理実験です。
ばねにつないだ物体、振り子、音叉、気柱、電気回路などは、それぞれ固有の振動数をもっています。外部から加える振動の振動数が固有振動数に近づくと、外力から振動系へ効率よくエネルギーが伝わり、大きな振幅が生じます。
実験レポートでは、共鳴周波数を求めるだけでなく、振幅と振動数の関係、理論固有振動数との差、減衰による共鳴曲線の広がり、測定時間、振幅の読み取りなどを考察することが重要です。
この記事では、ばねにつないだ物体へ振動発生器から周期的な外力を加え、駆動振動数を変化させて共鳴曲線を測定する実験を想定し、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例をまとめます。
注意:
この記事は、大学などの物理実験で得られた結果を考察するための学習用参考資料です。掲載している実験値は説明用の例であり、実際の測定結果ではありません。
ばね、振動発生器、分銅、電源装置、センサーなどの使用方法と安全上の注意については、必ず所属大学の実験書、担当教員、TAの指示に従ってください。振幅を大きくしすぎて、ばねや物体が装置から外れないよう注意してください。
共鳴とは
振動系には、外力を加えなくてもその系自身が振動しやすい固有振動数があります。ばね定数を k、物体の質量を m とする理想的なばね振り子では、固有角振動数は次の式で表されます。
ω0 = √(k/m)
固有振動数は次のようになります。
f0 = 1/(2π) × √(k/m)
この振動系へ角振動数 ω の周期的な外力を加えると、定常状態の振幅は駆動振動数によって変化します。駆動振動数が固有振動数付近になると振幅が最大となり、この現象を共鳴といいます。
減衰を含む強制振動では、運動方程式は一般に次のように表されます。
m d2x/dt2 + c dx/dt + kx = F0 cos ωt
c は減衰の大きさ、F0 は外力の振幅です。減衰が小さいほど共鳴時の振幅は大きくなり、共鳴曲線は鋭くなります。
結果に記録する主な項目
- 振動系の種類
- 物体の質量
- ばね定数
- 理論固有振動数
- 駆動振動数
- 各振動数での定常振幅
- 振幅が最大となった共鳴周波数
- 位相差
- 振幅と振動数のグラフ
- 最大振幅
- 最大振幅の1/√2となる周波数
- 共鳴曲線の半値幅
- Q値
- 測定開始から定常状態までの時間
- 減衰条件
- 実験値と理論値の差
- 相対誤差
振動数を変えた直後は、過渡的な振動が残ります。振幅を読み取るときは、振動が一定となる定常状態まで待つ必要があります。
参考実験条件
| 項目 | 参考条件 |
|---|---|
| 振動系 | 鉛直ばね振り子 |
| 物体の質量 m | 0.200 kg |
| ばね定数 k | 20.0 N/m |
| 駆動方法 | 振動発生器による正弦波駆動 |
| 測定振動数 | 1.00~2.20 Hz |
| 振動数間隔 | 共鳴付近で0.05~0.10 Hz |
| 振幅測定 | 変位センサーまたは動画解析 |
| 外力振幅 | 測定中は一定 |
参考実験値
以下は、質量0.200 kg、ばね定数20.0 N/mの振動系で、駆動振動数を変化させた場合の学習用参考値です。
| 駆動振動数 f(Hz) | 定常振幅 A(mm) | 位相差の傾向 |
|---|---|---|
| 1.00 | 4.2 | 外力とほぼ同位相 |
| 1.20 | 5.8 | 小さい遅れ |
| 1.40 | 9.5 | 遅れが増加 |
| 1.50 | 14.8 | 約1/4周期遅れに近づく |
| 1.58 | 20.4 | 約1/4周期遅れ |
| 1.60 | 21.0 | 約1/4周期遅れ |
| 1.65 | 19.2 | 1/4周期より大きい遅れ |
| 1.75 | 13.9 | 遅れがさらに増加 |
| 1.90 | 8.1 | 逆位相に近づく |
| 2.20 | 4.6 | ほぼ逆位相 |
参考値では、駆動振動数1.60 Hz付近で振幅が最大となり、共鳴が確認されています。低い振動数では物体は外力とほぼ同位相で振動し、高い振動数では逆位相に近づきます。
半値幅を求める参考値
最大振幅が21.0 mmの場合、振幅が最大値の1/√2となる値は約14.8 mmです。
| 項目 | 参考値 |
|---|---|
| 最大振幅 Amax | 21.0 mm |
| Amax/√2 | 14.8 mm |
| 低周波側の半値周波数 f1 | 1.50 Hz |
| 高周波側の半値周波数 f2 | 1.75 Hz |
| 半値幅 Δf | 0.25 Hz |
計算方法
理論固有振動数
質量0.200 kg、ばね定数20.0 N/mの場合、理論固有振動数は次のように求めます。
f0 = 1/(2π) × √(k/m)
= 1/(2π) × √(20.0/0.200)
= 1/(2π) × √100
= 10/(2π)
= 1.59 Hz
共鳴周波数
参考実験値では、振幅が最大となった駆動振動数は1.60 Hzです。
実験共鳴周波数 fr = 1.60 Hz
理論値との相対誤差
相対誤差(%) = |実験値 − 理論値| / 理論値 × 100
= |1.60 − 1.59| / 1.59 × 100
= 約0.63%
半値幅
低周波側の半値周波数が1.50 Hz、高周波側が1.75 Hzの場合、半値幅は次のようになります。
Δf = f2 − f1
= 1.75 − 1.50
= 0.25 Hz
Q値
共鳴の鋭さを表すQ値は、共鳴周波数を半値幅で割って求めます。
Q = fr / Δf
= 1.60 / 0.25
= 6.4
Q値が大きいほど減衰が小さく、共鳴曲線は鋭くなります。Q値が小さい場合は、エネルギー損失が大きく、広い振動数範囲で緩やかな共鳴が現れます。
最大振幅の1/√2
Amax/√2 = 21.0/√2
= 14.8 mm
主な誤差原因
| 誤差原因 | 測定への影響 | 結果に現れやすい傾向 | 改善・確認方法 |
|---|---|---|---|
| 定常状態になる前に振幅を読んだ | 過渡振動が測定値へ混ざる | 振幅が不規則にばらつく | 振動数変更後に十分待ってから測定する |
| 振動数の設定間隔が粗い | 真の共鳴周波数付近を測定できない | 最大振幅が小さく、共鳴周波数がずれる | 共鳴付近では細かい間隔で測定する |
| 振幅の読み取り誤差 | 共鳴曲線と半値幅に影響する | Q値が大きくまたは小さくずれる | 変位センサーや動画解析を用いる |
| 外力振幅が一定でない | 振動数以外の要因で振幅が変化する | 共鳴曲線が左右非対称になる | 発振器の出力を一定に保つ |
| ばねの非線形性 | フックの法則から外れる | 共鳴周波数が振幅によって変化する | 小振幅で弾性限界内の測定を行う |
| 摩擦や空気抵抗 | 振動エネルギーが失われる | 最大振幅が小さく、共鳴曲線が広がる | 摩擦の小さい支持部を使用する |
| ばね自身の質量 | 有効質量が物体の質量より大きくなる | 実験共鳴周波数が単純理論より小さくなる | 必要に応じてばねの有効質量を補正する |
| 物体の横揺れや回転 | 上下運動以外へエネルギーが分配される | 振幅が不安定になる | 物体を中央に取り付け、運動方向を制限する |
| 支持台や装置全体の振動 | 測定対象以外の共振が混ざる | 複数のピークが現れる場合がある | 装置を安定した台へ固定する |
| 周波数表示の誤差 | 共鳴周波数そのものがずれる | 理論値との差が系統的に生じる | 周波数計やオシロスコープで確認する |
共鳴周波数が理論固有振動数と完全に一致しない理由
単純な理論式では、ばねに質量がなく、摩擦や空気抵抗も存在しないと仮定しています。しかし実際には、ばね自身にも質量があり、支持部の摩擦や空気抵抗による減衰があります。
減衰を含む振動系では、振幅が最大になる共鳴周波数は、減衰のない固有振動数よりわずかに低くなる場合があります。また、ばねの有効質量を無視すると、理論固有振動数を実際より高く見積もることがあります。
共鳴付近で振幅が大きくなる理由
外力の振動数が固有振動数に近いと、外力が物体の運動へエネルギーを与えるタイミングがそろいます。1周期ごとにエネルギーが効率よく加えられるため、振幅が次第に増加します。
ただし、実際の振動系では摩擦や空気抵抗によってエネルギーが失われます。定常状態では、外力から1周期に供給されるエネルギーと、減衰によって失われるエネルギーが等しくなり、振幅が一定になります。
減衰が大きいと共鳴曲線が広がる理由
減衰が小さい振動系では、固有振動数付近でのみ大きな振幅が生じるため、共鳴曲線は鋭くなります。一方、減衰が大きいと最大振幅は小さくなり、振幅の変化も緩やかになります。
そのため、半値幅は大きくなり、Q値は小さくなります。共鳴曲線の形から、振動系におけるエネルギー損失の大きさを評価できます。
共鳴前後で位相が変化する理由
駆動振動数が固有振動数より十分低い場合、物体の変位は外力とほぼ同位相です。共鳴付近では変位が外力より約4分の1周期遅れます。
駆動振動数が固有振動数より十分高くなると、物体は外力に追従しにくくなり、変位は外力とほぼ逆位相になります。この位相変化も共鳴現象の重要な特徴です。
結果の書き方の例
質量0.200 kg、ばね定数20.0 N/mのばね振り子に周期的な外力を加え、駆動振動数を1.00~2.20 Hzまで変化させて定常振幅を測定した。
振幅は駆動振動数の増加に伴って大きくなり、1.60 Hzで最大値21.0 mmを示した。その後、振動数をさらに増加させると振幅は減少した。
実験から求めた共鳴周波数は1.60 Hz、質量とばね定数から求めた理論固有振動数は1.59 Hzであり、相対誤差は約0.63%であった。また、半値幅は0.25 Hz、Q値は6.4となった。
考察につなげるポイント
- 振幅と駆動振動数の関係はどのようになったか。
- 振幅が最大となった共鳴周波数はいくらか。
- 実験共鳴周波数と理論固有振動数は一致したか。
- 共鳴曲線は左右対称に近かったか。
- 減衰によって最大振幅と半値幅はどう変化したか。
- Q値は振動系のどの性質を表しているか。
- 振動数変更後に定常状態まで待ったか。
- 外力振幅は測定中に一定であったか。
- ばね自身の質量を無視した影響はないか。
- 横揺れや回転が生じていなかったか。
- 共鳴前後で位相差はどのように変化したか。
考察例
本実験では、ばね振り子へ周期的な外力を加え、駆動振動数を変化させたときの定常振幅を測定した。
駆動振動数が1.00 Hzから増加するにつれて振幅は大きくなり、1.60 Hzで最大振幅21.0 mmを示した。さらに振動数を増加させると振幅は減少した。このことから、振動系には特定の振動数で振幅が大きくなる共鳴が存在することを確認できた。
質量0.200 kg、ばね定数20.0 N/mから求めた理論固有振動数は1.59 Hzであり、実験から求めた共鳴周波数1.60 Hzとよく一致した。相対誤差は約0.63%であったため、単純なばね振り子の理論によって共鳴周波数を概ね説明できた。
共鳴付近で振幅が大きくなったのは、外力が物体へエネルギーを与えるタイミングと物体の振動がそろい、周期ごとにエネルギーが効率よく蓄積されたためである。
振幅は無限には増加せず、一定値で安定した。これは、外力から供給されるエネルギーと、空気抵抗、ばね内部の損失、支持部の摩擦などによって失われるエネルギーが定常状態でつり合ったためと考えられる。
半値幅は0.25 Hz、Q値は6.4となった。Q値が有限であることから、振動系には無視できない減衰が存在したことが分かる。減衰がさらに小さければ、最大振幅は大きくなり、共鳴曲線はより鋭く、半値幅は小さくなると考えられる。
実験共鳴周波数と理論固有振動数の間にわずかな差が生じた原因として、ばね自身の質量、空気抵抗、支持部の摩擦、ばねの非線形性、周波数表示の誤差などが考えられる。
特に理論式では、振動する質量を物体の質量のみとしている。しかし実際には、ばねの一部も物体とともに運動するため、振動系の有効質量は0.200 kgより大きい。その結果、実際の固有振動数は単純理論より小さくなる可能性がある。
また、振動数を変更した直後には過渡振動が残るため、定常状態になる前に振幅を読み取ると測定値がばらつく。共鳴付近では振幅が安定するまでに時間がかかることがあるため、十分に待ってから測定する必要がある。
位相については、低い振動数では変位が外力とほぼ同位相であり、共鳴付近では約4分の1周期遅れ、高い振動数ではほぼ逆位相となった。この変化も強制振動の理論と一致する。
測定精度を高めるには、共鳴付近で振動数の刻みを細かくし、変位センサーを用いて定常振幅と位相差を測定することが有効である。また、外力の振幅を一定に保ち、物体の横揺れや装置全体の振動を抑える必要がある。
以上より、駆動振動数が振動系の固有振動数に近づくと振幅が大きくなる共鳴現象を確認でき、共鳴曲線の形とQ値から減衰の影響を評価できた。
共鳴周波数が理論値より低かった場合の考察例
共鳴周波数が理論値より低くなった原因として、ばね自身の質量を無視したことで実際の有効質量を小さく見積もった可能性が考えられる。また、減衰を含む振動系では、振幅が最大となる周波数が減衰のない固有振動数よりわずかに低くなることも影響したと考えられる。
共鳴曲線が左右非対称になった場合の考察例
共鳴曲線が左右非対称になった原因として、ばねが大きな振幅でフックの法則から外れ、ばね定数が変位によって変化した可能性が考えられる。また、振動数ごとに外力振幅が一定でなかった場合や、定常状態になる前に測定した場合にも曲線がゆがむ。
まとめ
共鳴実験では、振動系へ周期的な外力を加え、駆動振動数を変化させたときの定常振幅を測定します。
駆動振動数が固有振動数に近づくと振幅が最大となり、共鳴が生じます。ばね振り子の理論固有振動数は f0 = 1/(2π)√(k/m) で求められます。
考察では、共鳴周波数、共鳴曲線、減衰、半値幅、Q値、位相差、ばね自身の質量、定常状態までの時間などを関連づけて説明することが重要です。
