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光合成速度の考察例|オオカナダモ・酸素気泡数・光の強さ・誤差原因

光合成速度の実験では、植物が一定時間内に吸収した二酸化炭素量、放出した酸素量、または増加した有機物量などを測定し、光合成の進み方を比較します。

学校実験では、オオカナダモなどの水草を用い、光を当てたときに発生する酸素の気泡数や酸素量を測定する方法がよく用いられます。光源との距離、光の強さ、二酸化炭素濃度、温度などの条件を変えることで、光合成速度に影響する要因を調べることができます。

ただし、植物は光合成と同時に呼吸も行っています。実験で観察される酸素の正味の増加量は、光合成によって放出された酸素量から、呼吸によって消費された酸素量を差し引いた値です。そのため、測定される値は一般に「見かけの光合成速度」となります。

この記事では、オオカナダモを用いて酸素気泡数を測定する実験を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。

注意:

この記事は、学校や大学などの生物実験で得られた結果を考察するための学習用参考資料です。掲載している条件と測定値は説明用の例であり、実際の測定結果ではありません。

電球や照明器具を使用する場合は、発熱部に触れないよう注意してください。水槽や試験管の近くで電気器具を扱うため、感電や漏電にも十分注意します。

炭酸水素ナトリウム水溶液などを使用する場合は、濃度や使用方法を実験書で確認してください。実際の操作は担当教員の指示に従ってください。

光合成速度とは

光合成では、植物が光エネルギーを利用し、二酸化炭素と水から有機物をつくり、酸素を放出します。

二酸化炭素 + 水 → 有機物 + 酸素

光合成速度は、単位時間あたりに吸収された二酸化炭素量、放出された酸素量、または生成された有機物量などで表されます。

見かけの光合成速度

明条件では、植物は光合成と呼吸を同時に行っています。実際に測定される酸素の増加量や二酸化炭素の減少量は、光合成と呼吸の差です。

見かけの光合成速度 = 真の光合成速度 − 呼吸速度

真の光合成速度

暗条件で測定した呼吸速度を、明条件で測定した見かけの光合成速度へ加えることで、真の光合成速度を推定できます。

真の光合成速度 = 見かけの光合成速度 + 呼吸速度

結果に記録する主な項目

  • 使用した植物名
  • 植物体の長さまたは質量
  • 切断面の向き
  • 使用した溶液
  • 炭酸水素ナトリウム濃度
  • 溶液量
  • 光源の種類
  • 光源から試料までの距離
  • 照度または光量
  • 実験温度
  • 光照射前の順化時間
  • 測定時間
  • 発生した気泡数
  • 単位時間あたりの気泡数
  • 発生した酸素体積
  • 単位質量または単位長さあたりの速度
  • 暗条件での呼吸速度
  • 見かけの光合成速度
  • 真の光合成速度
  • 光補償点
  • 各条件の平均値と標準偏差

参考実験条件

項目 参考条件
観察材料 オオカナダモ
試料長 先端から約8 cm
溶液 0.5%炭酸水素ナトリウム水溶液
溶液量 200 mL
光源 白色LEDライト
光源との距離 10、20、30、40、50 cm
温度 25 ℃
順化時間 各条件で5分
測定時間 3分間
反復数 各条件3回

参考実験値

光源との距離と気泡数

距離(cm) 1回目(個/3分) 2回目(個/3分) 3回目(個/3分) 平均(個/3分)
10 93 96 90 93.0
20 72 75 69 72.0
30 49 52 50 50.3
40 28 31 29 29.3
50 14 16 15 15.0
暗条件 0 0 0 0

1分あたりの平均気泡数

距離(cm) 平均気泡数(個/分)
10 31.0
20 24.0
30 16.8
40 9.8
50 5.0
暗条件 0

炭酸水素ナトリウム濃度と気泡数

炭酸水素ナトリウム濃度(%) 平均気泡数(個/分) 観察結果
0.0 3.2 気泡発生は少なかった
0.1 9.4 濃度上昇に伴い増加した
0.3 18.7 比較的多く発生した
0.5 24.1 高い速度を示した
1.0 25.0 増加は小さくなった

温度と気泡数

温度(℃) 平均気泡数(個/分)
10 6.8
20 17.2
25 24.0
30 27.5
40 12.6
50 1.3

酸素体積を測定した場合の参考値

照度(lx) 明条件での酸素変化量(mL/10分) 見かけの光合成速度(mL/min)
500 −0.10 −0.010
1000 0.00 0.000
2000 0.22 0.022
4000 0.48 0.048
8000 0.63 0.063
12000 0.66 0.066

計算方法

1分あたりの気泡数

3分間に93個の気泡が発生した場合は、次のようになります。

光合成速度 = 気泡数 ÷ 測定時間

= 93個 ÷ 3分

= 31.0個/分

平均気泡数

3回の測定値が93個、96個、90個であった場合は、次のようになります。

平均気泡数 = (93 + 96 + 90) ÷ 3

= 93.0個/3分

単位長さあたりの光合成速度

長さ8 cmのオオカナダモが1分間に31個の気泡を発生した場合は、次のようになります。

単位長さあたりの速度 = 31個/分 ÷ 8 cm

≈ 3.88個/(cm・分)

単位質量あたりの光合成速度

試料質量が0.80 g、酸素発生速度が0.048 mL/minであった場合は、次のようになります。

単位質量あたりの速度 = 0.048 mL/min ÷ 0.80 g

= 0.060 mL/(g・min)

見かけの光合成速度

10分間で酸素量が0.48 mL増加した場合は、次のようになります。

見かけの光合成速度 = 酸素増加量 ÷ 測定時間

= 0.48 mL ÷ 10分

= 0.048 mL/min

真の光合成速度

暗条件で酸素が0.12 mL/10分減少した場合、呼吸速度は0.012 mL/minです。明条件での見かけの光合成速度が0.048 mL/minであれば、次のようになります。

真の光合成速度 = 見かけの光合成速度 + 呼吸速度

= 0.048 + 0.012

= 0.060 mL/min

光補償点

見かけの光合成速度が0となる光の強さを光補償点といいます。参考値では、500 lxで−0.010 mL/min、1000 lxで0.000 mL/minであるため、光補償点は約1000 lxと判断できます。

相対的な光の強さ

点光源に近い条件では、光の強さは距離の2乗に反比例すると近似できます。

相対光強度 ∝ 1 ÷ 距離2

10 cmでの光強度を1とすると、20 cmでは次のようになります。

(10 ÷ 20)2 = 0.25

ただし、実際の照明は完全な点光源ではなく、周囲からの反射光もあるため、この関係は近似です。

増加率

炭酸水素ナトリウム濃度を0.1%から0.5%へ上げたとき、気泡数が9.4個/分から24.1個/分へ増加した場合は、次のようになります。

増加率(%) = (24.1 − 9.4) ÷ 9.4 × 100

≈ 156%

標準偏差

s = √{Σ(xi − x̄)2/(n − 1)}

10 cmでの測定値93、96、90個/3分から求めた標準偏差は3.0個/3分です。

主な誤差原因

誤差原因 測定への影響 結果に現れやすい傾向 改善方法
気泡の大きさが一定でない 同じ個数でも酸素量が異なる 気泡数と実際の酸素量が一致しない 可能なら気体体積を測定する
複数の気泡が合体する 気泡数が少なく数えられる 速度を過小評価する 切断面と観察位置を調整する
小さな気泡を見落とす 発生数を正確に数えられない 速度を過小評価する 背景を暗くし観察しやすくする
溶存酸素として残る 発生した酸素が気泡にならない 実際より低い速度となる 気泡法の限界として記載する
切断面の状態が異なる 気泡の出方が変わる 試料間でばらつく 同じ方法で新しく切断する
植物体の大きさが異なる 葉面積や細胞数が異なる 大きい試料ほど気泡数が多くなる 長さ・質量・葉面積をそろえる
植物体の状態が異なる 活性や葉緑体量が異なる 測定値がばらつく 同じ個体の近い部位を用いる
順化時間不足 条件変更直後の過渡状態を測る 値が不安定になる 測定前に一定時間待つ
光源の発熱 距離と同時に温度も変化する 光強度だけの影響を比較できない LEDや水槽で温度を一定にする
温度の変動 酵素反応速度が変化する 条件間の差が大きくなる 恒温水槽を使用する
光源との距離測定誤差 実際の光強度がずれる 距離との関係が不規則になる 同じ基準点から測る
周囲の光 設定外の光が加わる 遠距離条件でも速度が高くなる 遮光箱内で測定する
光源の照射角度 受ける光量が変わる 同距離でも値が異なる 角度を一定にする
炭酸水素ナトリウム濃度の誤差 二酸化炭素供給量が変わる 光強度以外の影響が入る 正確に調製する
二酸化炭素不足 光を強くしても速度が上がらない 早い段階で飽和する 適切な炭酸水素ナトリウム濃度を用いる
測定時間が短い 偶然のばらつきが大きい 再現性が低くなる 測定時間と反復数を増やす
気泡数の計数ミス 数え落としや重複が起こる 値がばらつく 動画撮影して再確認する
呼吸を考慮していない 真の光合成速度と混同する 光合成速度を過小評価する 暗条件で呼吸速度を測る

光を強くすると光合成速度が上がる理由

弱い光の範囲では、光エネルギーの供給量が光合成速度を制限しています。光を強くすると光反応が進みやすくなり、酸素発生量や二酸化炭素吸収量が増加します。

強い光で速度が頭打ちになる理由

光が十分に強くなると、二酸化炭素濃度、温度、酵素反応、葉緑体の処理能力など、光以外の要因が制限要因になります。そのため、光をさらに強くしても光合成速度は大きく増加しなくなります。この状態を光飽和といいます。

暗条件で気泡が出ない理由

暗条件では光反応が進まず、光合成による酸素発生が停止します。一方で呼吸は続くため、酸素の正味の増加は見られません。

光補償点とは

光合成による酸素放出量と呼吸による酸素消費量が等しくなり、見かけのガス交換量が0となる光の強さを光補償点といいます。

炭酸水素ナトリウムを加える理由

水中では二酸化炭素が不足しやすいため、炭酸水素ナトリウムを加えて無機炭素を供給します。一定範囲では濃度を高くすると光合成速度が増加しますが、十分な濃度に達すると別の要因が制限となり、増加は小さくなります。

結果の書き方の例

オオカナダモを0.5%炭酸水素ナトリウム水溶液へ入れ、白色LEDライトとの距離を10~50 cmに変化させて、3分間に発生した酸素気泡数を測定した。

1分あたりの平均気泡数は、距離10 cmで31.0個、20 cmで24.0個、30 cmで16.8個、40 cmで9.8個、50 cmで5.0個であった。

光源からの距離が長くなるほど気泡数は減少し、暗条件では気泡の発生は確認されなかった。

また、炭酸水素ナトリウム濃度を0.0%から0.5%へ上げると気泡数は増加したが、0.5%から1.0%では増加量が小さかった。

考察につなげるポイント

  • 光源との距離と気泡数にはどのような関係があったか。
  • 距離が長くなると光合成速度が低下した理由は何か。
  • 近距離条件で速度が比例的に増加しなかったのはなぜか。
  • 炭酸水素ナトリウム濃度と光合成速度はどう関係したか。
  • 高濃度側で増加が小さくなった理由は何か。
  • 温度によって速度が変化した理由は何か。
  • 高温で速度が低下した理由は何か。
  • 気泡数は酸素量を正確に表しているか。
  • 見かけの光合成速度と真の光合成速度の違いは何か。
  • 光補償点はどのように求めたか。
  • 植物体の大きさや切断面は結果へどう影響したか。
  • 光と温度の影響を分離できていたか。

考察例

本実験では、オオカナダモへ照射する光の強さを光源との距離によって変化させ、酸素気泡数を指標として光合成速度を比較した。

光源との距離が10 cmのとき、1分あたりの平均気泡数は31.0個であったが、50 cmでは5.0個まで減少した。したがって、光源から離れるほど見かけの光合成速度は低下したと考えられる。

弱い光の条件では、光合成に利用できる光エネルギーが少ないため、光反応の進行が制限される。光源へ近づけると光エネルギーの供給量が増え、酸素発生速度が増加したと考えられる。

ただし、光源との距離を半分にしても気泡数は単純に4倍にはならなかった。点光源では光の強さが距離の2乗に反比例すると近似されるが、実際のLEDライトは広がりを持つ光源であり、周囲からの反射光も存在するためである。

また、光が強くなると、二酸化炭素濃度、温度、光合成酵素の反応速度など、光以外の要因が制限要因となる。そのため、光の強さと光合成速度は全範囲で比例せず、強光側では増加が小さくなると考えられる。

炭酸水素ナトリウム濃度を高くすると、0.0%から0.5%までは気泡数が増加した。これは、水中で利用できる無機炭素が増え、二酸化炭素不足が緩和されたためと考えられる。

一方、0.5%から1.0%では気泡数の増加が小さかった。この条件では二酸化炭素が十分に供給され、光の強さや酵素反応など別の要因が光合成速度を制限した可能性がある。

温度を10 ℃から30 ℃へ上げると気泡数は増加した。光合成には多数の酵素反応が関与しており、適度な温度上昇によって酵素反応速度が高まったためと考えられる。

しかし、40 ℃以上では光合成速度が低下した。高温によって酵素の立体構造や細胞膜の状態が変化し、光合成に関与する反応が正常に進みにくくなった可能性がある。

暗条件では気泡が確認されなかった。光がないため光反応による酸素発生が停止し、呼吸による酸素消費のみが続いたためである。

今回測定した気泡数は、真の光合成速度そのものではなく、光合成による酸素発生と呼吸による酸素消費との差を反映した見かけの光合成速度である。

暗条件で呼吸速度を測定し、その値を見かけの光合成速度へ加えることで、真の光合成速度を推定できる。

見かけの酸素変化量が0となる約1000 lxでは、光合成による酸素放出量と呼吸による酸素消費量が等しいと考えられる。したがって、この照度が実験条件下における光補償点の目安となる。

誤差原因として、気泡の大きさが一定でないことが挙げられる。小さい気泡と大きい気泡を同じ1個として数えるため、気泡数は実際の酸素体積と完全には比例しない。

また、発生した酸素の一部は水中に溶けたままとなり、気泡として観察されない。そのため、気泡数による方法では実際の酸素発生量を過小評価する可能性がある。

光源を近づけると、光の強さだけでなく水温も上昇する可能性がある。温度を一定にしなかった場合、観察された速度変化には光強度と温度の両方が影響している。

植物体の長さ、葉の枚数、切断面の状態、個体の健康状態も気泡数へ影響する。条件間で比較するには、同じ植物体を用いるか、長さや質量をそろえ、単位長さまたは単位質量あたりの速度に換算する必要がある。

測定精度を高めるには、恒温水槽を用いて温度を一定にすること、照度計で実際の光の強さを測定すること、十分な順化時間を設けること、動画を撮影して気泡数を確認することが有効である。

さらに、気泡数ではなく、ガスシリンジ、酸素センサー、溶存酸素計などを用いて酸素量を測定すると、気泡の大きさによる誤差を小さくできる。

以上より、オオカナダモの光合成速度は、光の強さ、二酸化炭素濃度、温度の影響を受けることが確認された。また、光が十分に強い条件では、光以外の要因が制限要因となり、光合成速度の増加が小さくなることが示された。

光を強くしても速度が上がらなかった場合の考察例

光を強くしても光合成速度が上がらなかった原因として、二酸化炭素不足、温度条件の不適切さ、光飽和への到達、植物体の損傷、順化時間不足などが考えられる。

暗条件でも気泡が見られた場合の考察例

暗条件でも気泡が見られた原因として、植物体や容器に付着していた空気が放出されたこと、周囲の光が入ったこと、遮光直後に残っていた酸素が排出されたことなどが考えられる。

測定値のばらつきが大きかった場合の考察例

測定値のばらつきが大きかった原因として、気泡の合体、計数ミス、切断面の変化、光源との距離や角度のずれ、水温変化、植物体の状態の変化などが考えられる。

高濃度の炭酸水素ナトリウムで速度が低下した場合の考察例

高濃度の炭酸水素ナトリウム溶液で光合成速度が低下した場合、浸透圧やpHの変化によって細胞へ負担がかかった可能性がある。また、濃度調製や温度条件に誤差がなかったか確認する必要がある。

まとめ

光合成速度は、単位時間あたりの酸素発生量、二酸化炭素吸収量、有機物生成量などによって表されます。

オオカナダモを用いる実験では、発生した酸素気泡数を簡便な指標として利用できますが、気泡の大きさや溶存酸素の影響を受けるため、正確な酸素量とは一致しません。

弱光条件では、光を強くすると光合成速度が増加します。一方、強光条件では二酸化炭素、温度、酵素反応などが制限要因となり、速度は飽和します。

見かけの光合成速度は、真の光合成速度から呼吸速度を差し引いた値です。暗条件で呼吸速度を測定することで、真の光合成速度や光補償点を推定できます。

考察では、光強度、二酸化炭素濃度、温度、気泡の大きさ、植物体の状態、順化時間、呼吸の影響などを、測定値の変化やばらつきと関連づけて説明することが重要です。