公園では、カラス、ハト、カモ、ムクドリ、タヌキ、ハクビシン、イノシシ、シカなど、さまざまな野生動物が確認されます。利用者に危険や生活環境上の被害が生じている場合でも、公園管理者が自由に捕獲、移動、殺傷できるわけではありません。
野生の鳥類や哺乳類の捕獲などは、原則として鳥獣保護管理法によって規制されています。公園管理では、利用者の安全確保と野生動物の保護・管理を両立させながら、追払い、餌の除去、立入規制、許可捕獲などを適切に使い分ける必要があります。
鳥獣保護管理法とは
鳥獣保護管理法の正式名称は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」です。
この法律は、鳥獣の保護と管理、狩猟の適正化、猟具による危険防止などを通じて、生物多様性の確保、生活環境の保全、農林水産業の健全な発展を図ることを目的としています。
法律の対象となる「鳥獣」
鳥獣保護管理法における「鳥獣」とは、鳥類または哺乳類に属する野生動物をいいます。
公園で見られる代表例は次のとおりです。
- カラス、ハト、スズメ、ムクドリ、カモなどの野鳥
- タヌキ、キツネ、ハクビシン、アライグマ
- イノシシ、シカ、サル
- コウモリ
- 野生化した一部の哺乳類
昆虫、爬虫類、両生類、魚類は、鳥獣保護管理法上の「鳥獣」には含まれません。ただし、外来生物法、種の保存法、自治体条例など、別の法令が関係することがあります。
野生鳥獣の捕獲は原則禁止
野生鳥獣や鳥類の卵は、狩猟による場合などを除き、原則として捕獲、殺傷、採取が禁止されています。
公園内で被害があるからといって、管理者や受託者が独断で箱わなを設置したり、鳥を捕まえたり、卵を取り除いたりしてはいけません。
捕獲が認められる主な場合
生活環境、生態系、農林水産業などへの被害が生じている場合や、学術研究などの必要性がある場合には、環境大臣、都道府県知事、または権限移譲を受けた市町村長の許可により捕獲などが認められることがあります。
許可申請では、一般に次の事項を整理します。
- 捕獲の目的
- 対象となる鳥獣の種類と数量
- 捕獲区域
- 捕獲期間
- 使用する方法や猟具
- 実施者と資格
- 捕獲後の処置
- 安全管理の方法
公園で捕獲許可が検討される例
- カラスが繁殖期に利用者を繰り返し威嚇・攻撃する
- ハトのふんにより施設の衛生状態が著しく悪化している
- イノシシが園内へ頻繁に出没し、人身事故のおそれがある
- シカによる植栽や樹木への被害が拡大している
- ハクビシンなどが建物へ侵入し、衛生被害が生じている
- 生態系保全のため、特定の鳥獣を計画的に管理する必要がある
ただし、被害があることだけで直ちに捕獲が許可されるとは限りません。餌の除去、侵入防止、追払いなど、捕獲以外の方法を先に検討することが求められる場合があります。
巣や卵は勝手に撤去できるのか
鳥の巣そのものが常に捕獲規制の対象になるわけではありませんが、巣の中に卵やひながいる場合、その撤去は卵の採取や鳥の捕獲・殺傷に当たる可能性があります。
営巣中の巣を撤去する必要がある場合は、事前に鳥獣担当部署へ相談し、許可の要否を確認します。
空の巣なら撤去できるのか
卵やひながいない空の巣については、一般に鳥獣保護管理法上の捕獲等には当たらない場合があります。ただし、実際に使用中でないことを慎重に確認する必要があります。
また、ツバメなどの巣は利用者や地域住民に親しまれていることもあるため、法令上撤去できる場合でも、繁殖時期、衛生状態、施設利用、安全性を踏まえて対応します。
傷病鳥獣を見つけた場合
負傷した鳥や野生動物を見つけても、すぐに素手で捕まえたり、自宅へ持ち帰ったりしないようにします。
基本的な対応は次のとおりです。
- 利用者を近づけない
- 動物の種類、場所、状態を確認する
- 写真を撮り、接触せずに記録する
- 自治体の鳥獣担当部署や傷病鳥獣窓口へ連絡する
- 担当部署の指示に従う
野生動物は、外見上弱っていても、人をかむ、引っかく、飛びかかることがあります。また、感染症や寄生虫を保有している可能性もあります。
死亡した野生動物を見つけた場合
園内で鳥獣の死体を発見した場合は、素手で触らず、利用者が近づかないようにします。
同じ場所で多数の野鳥が死亡している場合や、感染症が疑われる場合には、通常の清掃ごみとして処理せず、自治体の環境・衛生・鳥獣担当部署へ連絡します。
回収する場合は、手袋、袋、器具などを使用し、作業後に手洗いと器具の消毒を行います。具体的な処理方法は自治体の指示に従います。
カラスへの対応
カラスは、繁殖期に巣やひなを守るため、人の頭上を飛ぶ、鳴きながら接近する、後方から接触するといった行動を取ることがあります。
まず行う対策は次のとおりです。
- 巣の位置と威嚇範囲を確認する
- 利用者へ迂回を案内する
- 注意看板を設置する
- 必要に応じて園路や施設の一部を一時閉鎖する
- ごみ、食べ残し、餌付けなどの誘引物を減らす
- 帽子や傘の利用など、利用者へ対処法を案内する
巣の撤去や親鳥の捕獲が必要な場合は、卵やひなの有無を確認し、許可手続を行います。
ハトへの対応
公園でハトが増える主な原因の一つは、利用者による継続的な餌やりです。餌が豊富になると個体数が増え、ふん害、悪臭、施設汚損、衛生上の問題が起こりやすくなります。
対策では、捕獲より先に次の方法を検討します。
- 餌やりを控えるよう周知する
- 放置された餌やごみを速やかに除去する
- ごみ箱の構造や設置場所を見直す
- 休憩施設への侵入を防ぐ
- 定期的にふんを清掃する
- 特定の場所へ集まる原因を調査する
自治体によっては、条例で公園内の餌やりや迷惑行為を規制している場合があります。
イノシシ・シカへの対応
イノシシやシカが園内へ出没した場合は、利用者を近づけず、動物の逃げ道をふさがないことが重要です。
初動対応の例は次のとおりです。
- 出没場所と移動方向を確認する
- 園路や区域への立入りを規制する
- 警察、自治体鳥獣担当部署、公園管理者へ連絡する
- 利用者へ近づかないよう案内する
- 大声、投石、追跡など刺激する行為を避ける
- 出没時刻、個体数、行動を記録する
捕獲には専門知識、許可、安全管理が必要です。公園職員が追い詰めたり、即席のわなを設置したりしてはいけません。
サルへの対応
サルを見つけた場合は、目を合わせ続ける、近づく、食べ物を見せる、写真撮影のために追いかけるといった行為を避けます。
利用者へは、食べ物を隠す、静かに距離を取る、餌を与えない、子どもだけで近づかないよう案内します。頻繁に出没する場合は、周辺自治体や鳥獣担当部署と情報を共有します。
タヌキ・ハクビシン・アライグマへの対応
タヌキなどが園内を通過しているだけであれば、直ちに捕獲が必要とは限りません。まず、生ごみ、落果、餌付け、建物への侵入口など、誘引原因を確認します。
アライグマは特定外来生物でもあるため、鳥獣保護管理法に加えて外来生物法も関係します。捕獲や運搬を行う場合は、両方の制度を確認する必要があります。
コウモリへの対応
コウモリが管理棟、トイレ、休憩施設などへ入り込む場合でも、捕獲や殺傷は原則として自由に行えません。
個体が外出している時間帯に侵入口をふさぐなど、捕獲せずに侵入を防ぐ方法を検討します。ただし、繁殖期に幼獣が残っている可能性があるため、時期と生息状況を確認して施工します。
餌付けが問題になる理由
野生動物への餌付けは、個体数の増加、人への警戒心の低下、ふん害、騒音、感染症、交通事故、植栽被害などにつながります。
公園管理者は、単に「餌やり禁止」と掲示するだけでなく、餌付けによって起こる問題を説明すると理解を得やすくなります。
- 動物が人へ近づき、攻撃する可能性が高まる
- 自然の餌を探す行動が変わる
- 特定の場所へ過密に集まる
- 病気が広がりやすくなる
- 周辺住宅や道路へ被害が拡大する
追払いはどこまで可能か
音、視覚刺激、人の接近などによって鳥獣をその場から遠ざける追払いは、捕獲とは異なります。ただし、鳥獣を傷つける方法、巣や卵を破壊する方法、危険な器具を用いる方法は避けなければなりません。
花火、エアガン、強力なレーザーなどは、利用者への危険、騒音、他法令への抵触のおそれがあります。使用する場合は、関係法令、メーカーの用途、周辺環境を確認します。
わなの設置で注意すること
箱わなやくくりわななどの設置は、捕獲許可、狩猟免許、安全管理、標識などが関係します。
公園は一般利用者やペットが立ち入る場所であり、誤捕獲や接触事故のおそれがあります。設置場所、立入規制、見回り、緊急連絡、捕獲後の対応を含め、専門部署や許可を受けた事業者によって実施します。
鳥獣保護区内の公園
公園の区域が国指定または都道府県指定の鳥獣保護区に含まれている場合、捕獲や開発行為に追加の制限が関係することがあります。
特別保護地区では、工作物の設置、木竹の伐採、水面の埋立てなどに許可が必要となる場合もあります。整備工事や大規模剪定の前に区域指定を確認します。
希少鳥獣や希少種を見つけた場合
希少鳥獣や国内希少野生動植物種に該当する場合は、鳥獣保護管理法だけでなく、種の保存法などの規制が関係することがあります。
珍しい鳥や巣を見つけた場合は、場所を広く公表せず、写真と位置を記録して、環境担当部署や専門機関へ相談します。観察者が集中すると、繁殖を妨げることがあります。
指定管理者・受託者の役割
指定管理者や清掃・剪定受託者が野生鳥獣を発見した場合、独断で捕獲、巣の撤去、卵の採取を行わず、自治体へ報告します。
仕様書や協定書には、次の事項を定めておくと実務が明確になります。
- 野生動物発見時の連絡先
- 利用者の安全確保と立入規制の権限
- 巣や卵を見つけた場合の作業停止基準
- 傷病鳥獣・死体の取扱い
- 捕獲許可申請を行う主体
- 専門業者を手配する手順
- 出没記録の保存方法
- 感染症対策と保護具
出没記録を残す
野生動物への対応では、単発の目撃情報だけでなく、継続的な記録が対策の判断材料になります。
記録項目の例は次のとおりです。
- 目撃日時
- 場所
- 種類と個体数
- 成獣・幼獣の別
- 行動や移動方向
- 被害内容
- 餌やごみなどの誘引物
- 実施した安全措置
- 関係機関への連絡内容
- 写真や動画
公園管理担当者向けチェックリスト
- 対象が鳥類または哺乳類の野生動物か確認したか
- 捕獲、殺傷、卵の採取が原則禁止であることを理解しているか
- 巣に卵やひながいないか確認したか
- 捕獲許可の窓口を確認したか
- 利用者の立入規制や迂回措置を行ったか
- 餌、ごみ、落果などの誘引物を確認したか
- 傷病鳥獣を素手で扱っていないか
- 死体が多数ある場合の連絡基準があるか
- 外来生物法や種の保存法との重複を確認したか
- わなの誤捕獲・利用者事故対策があるか
- 指定管理者・受託者の報告手順が明確か
- 出没・被害・対応記録を保存しているか
まとめ
鳥獣保護管理法では、野生の鳥類や哺乳類、鳥類の卵について、狩猟による場合などを除き、捕獲、殺傷、採取を原則として禁止しています。
公園で野生動物による被害が起きた場合は、まず利用者の安全を確保し、餌やごみの除去、侵入防止、追払い、立入規制などを検討します。捕獲、巣の撤去、卵の採取が必要な場合は、許可の要否を確認し、専門部署や許可を受けた事業者と連携して実施します。
野生動物対応では、保護か駆除かという二者択一ではなく、動物の種類、被害、安全性、繁殖状況、関係法令を踏まえて段階的に判断することが重要です。指定管理者や受託者を含めた連絡体制と記録方法を、平常時から整備しておく必要があります。
参考資料・公的情報
- e-Gov法令検索「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」
- 環境省「鳥獣保護管理法の概要」
- 環境省「捕獲許可制度の概要」
- 環境省「自治体担当者のためのカラス対策マニュアル」
- 環境省「野生鳥獣に係るパンフレット」
内容確認日:2026年7月19日
