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農薬取締法と公園での薬剤散布

公園では、樹木の害虫防除、芝生や植栽地の病害対策、雑草防除などのために、殺虫剤、殺菌剤、除草剤などを使用することがあります。

しかし、公園は子ども、高齢者、ペット連れの利用者など、不特定多数の人が利用する場所です。住宅、学校、保育施設、病院、商店などに近接する場合も多く、農地での使用以上に、飛散防止、事前周知、立入管理、使用記録などへ慎重な対応が求められます。

公園で薬剤を使用する際は、農薬取締法に基づいて登録された農薬を、容器や包装のラベルに記載された使用方法に従って使用することが基本です。さらに、農林水産省・環境省の「住宅地等における農薬使用について」などを踏まえ、農薬以外の方法を優先し、やむを得ず散布する場合には利用者や周辺住民への被害防止策を講じます。

この記事の対象:自治体の公園担当者、指定管理者、公園管理事務所、造園会社、植栽管理・害虫防除受託者などを対象にしています。
注意:使用できる農薬、適用対象、希釈倍数、使用量、使用時期、使用回数などは製品ごとに異なります。実際の使用時には、最新の農薬登録情報と製品ラベルを必ず確認してください。

農薬取締法とは

農薬取締法は、農薬の登録制度を設け、販売や使用を規制することにより、農薬の品質と安全かつ適正な使用を確保するための法律です。

農薬には、一般に次のようなものが含まれます。

  • 害虫を防除する殺虫剤
  • 病気を防除する殺菌剤
  • 雑草を防除する除草剤
  • ネズミなどを防除する殺そ剤
  • 植物の成長を調整する薬剤
  • 誘引剤、忌避剤、展着剤など
  • 防除に用いる天敵生物

製品名に「園芸用」「家庭用」と書かれていても、公園で自由な方法により使えるとは限りません。農薬登録の有無とラベルの内容を確認する必要があります。

公園でも農薬取締法が適用される

農薬取締法は、農地だけを対象にした法律ではありません。樹木、芝、花壇などの植物を病害虫や雑草から守る目的で農薬を使用する場合、公園や緑地でも適正使用が求められます。

街路樹、公園樹木、庭園、学校、住宅地などでの農薬使用は、人が日常的に生活・利用する場所に近いため、飛散による健康被害や生活環境への影響を防ぐことが特に重要です。

登録農薬を使用する

農薬は、原則として農林水産大臣の登録を受けた製品を使用します。登録農薬には登録番号が表示され、使用できる対象、病害虫・雑草、希釈倍数、使用量、使用時期、使用回数、使用方法などが定められています。

公園管理者は、購入時だけでなく使用直前にも、農林水産省の農薬登録情報提供システムなどで登録状況を確認すると安全です。以前使用していた製品でも、登録内容が変更されたり、登録が失効したりすることがあります。

基本原則:「よく効く薬剤」ではなく、「対象となる植物・病害虫・雑草に登録があり、ラベルどおりに使用できる薬剤」を選びます。

ラベルに従って使用する

農薬使用者は、製品ラベルに記載された事項を確認し、定められた使用方法を守る必要があります。

確認項目 内容
適用対象 対象となる樹木、花、芝などに使用できるか
適用病害虫・雑草 防除したい害虫、病気、雑草が登録対象か
希釈倍数・使用量 濃すぎる薬液や過剰散布になっていないか
使用方法 散布、塗布、注入、株元処理など指定された方法か
使用時期 植物の生育段階や季節などの条件を満たすか
使用回数 同一成分を含む農薬の総使用回数を超えないか
注意事項 人畜、水産動植物、周辺作物、ミツバチなどへの注意

効果を高めようとして濃度を上げる、登録のない植物へ流用する、定められた回数を超えて散布するといった使用は避けなければなりません。

公園では農薬を使わない方法を先に検討する

公園や学校などの住宅地等に近接する場所では、病害虫や雑草の発生状況を確認し、農薬を定期的に一律散布するのではなく、まず農薬以外の方法を検討します。

  • 害虫や病気に強い樹種・品種を選ぶ
  • 枯枝、被害枝、病葉を除去する
  • 害虫の卵塊や巣を物理的に除去する
  • 捕殺、ブラシ除去、粘着資材などを利用する
  • 雑草を刈取り、抜取り、被覆によって抑える
  • 通風や日照を改善する
  • 過剰な施肥や水やりを見直す
  • 発生初期に限定的な処置を行う

薬剤散布が必要な場合でも、公園全体へ一斉散布するのではなく、被害のある樹木や範囲へ限定する方法を検討します。

病害虫の発生を確認してから散布する

「毎年この時期に散布している」という理由だけで、害虫の発生状況を確認せずに定期散布することは避けます。

散布前には、次の事項を確認します。

  • 害虫・病気・雑草の種類
  • 発生場所と範囲
  • 被害の程度
  • 人体へ危害を及ぼす害虫か
  • 放置した場合の樹木や施設への影響
  • 物理的防除で対応できるか
  • 天敵や周辺生態系への影響

チャドクガなど、人の皮膚被害につながる害虫では、立入規制や被害枝の除去を先行し、必要性を判断したうえで薬剤を使用します。

住宅地等における農薬使用の考え方

農林水産省と環境省は、学校、公園、街路樹、住宅地に近接する土地などで農薬を使用する際、飛散による住民や利用者の健康被害を防ぐための通知を示しています。

公園管理で特に重要な考え方は次のとおりです。

  • 農薬以外の防除方法を優先する
  • 病害虫の発生状況を確認する
  • むやみな定期散布を行わない
  • 散布範囲を必要最小限にする
  • 飛散しにくい剤型や方法を検討する
  • 散布日時や使用農薬を事前に周知する
  • 散布中・散布後の利用者の立入りを管理する
  • 風向きや風速などの気象条件を確認する

利用者・周辺住民への事前周知

農薬を散布する場合は、散布場所の利用者、近隣住民、学校、保育施設、病院、店舗などへ、必要に応じて事前に情報を伝えます。

周知内容の例は次のとおりです。

  • 散布の目的
  • 散布場所
  • 散布予定日と時間帯
  • 予備日
  • 使用する農薬の名称
  • 対象となる病害虫・雑草
  • 散布方法
  • 立入制限の範囲と時間
  • 管理者・作業者の連絡先

公園入口、対象区域、自治体ホームページ、掲示板など、利用者が確認しやすい方法で周知します。近隣施設へ直接連絡した方がよい場合もあります。

開園時間中の散布は避ける:可能な限り利用者の少ない時間帯や休園日に実施し、散布区域へ人が入らないよう管理します。

飛散を防ぐための対策

農薬の飛散は、利用者、周辺住宅、洗濯物、車両、隣接する農地、水面などへ影響する可能性があります。

散布時には次の対策を検討します。

  • 強風時や風向きが不適切な場合は延期する
  • 散布対象へノズルを近づける
  • 必要以上に高い圧力で散布しない
  • 飛散しにくいノズルや剤型を使用する
  • 樹冠上部から周囲へ吹き流さない
  • 飛散防止シートや遮へい板を使用する
  • 散布区域を必要最小限に限定する
  • 水路、池、飲料設備、遊具を養生する
  • 周辺の人、車両、ペットを退避させる

高木へ動力噴霧機で散布する場合は、飛散範囲が広くなりやすいため、樹幹注入、塗布、被害枝の除去など、別の方法も比較します。

雨天・強風時の散布

雨が降ると薬剤が流出しやすくなり、期待した効果が得られないだけでなく、池や水路へ流れ込むおそれがあります。

強風時は周辺への飛散リスクが高まります。散布当日だけでなく、散布後の降雨予報や風向きも確認し、条件が悪い場合は延期します。

散布区域の立入管理

散布中は、作業区域へ利用者が入らないよう、カラーコーン、バー、柵、案内員などを配置します。

散布後の立入制限については、農薬ラベル、製品の安全データ、自治体基準、散布場所の利用状況などを踏まえて決めます。

単に散布作業が終わった時点で規制を解除するのではなく、葉や地面の薬液が乾燥したか、遊具やベンチへ付着していないか、掲示が必要かを確認します。

子どもが利用する区域への配慮

遊具広場、芝生広場、砂場、保育施設に近い区域などでは、子どもが植物や地面へ触れ、その手を口へ運ぶ可能性があります。

薬剤を使用する前に、対象区域の閉鎖、散布時刻、薬剤の選択、飛散防止、散布後の点検を特に慎重に検討します。

遊具、ベンチ、水飲み場、手すりなどへ薬液が付着した場合は、製品情報や担当部署の指示に従い、必要な洗浄や使用停止措置を行います。

池・水路・水生生物への配慮

公園内に池、水路、ビオトープなどがある場合、薬剤が直接または雨水によって流入しないよう注意します。

農薬ラベルには、水産動植物への影響や、水系への流出防止に関する注意事項が記載されていることがあります。

  • 水際付近では散布を避ける
  • 排水口や側溝を養生する
  • 雨の直前に散布しない
  • 薬液や洗浄水を水路へ流さない
  • 魚類、甲殻類、水生昆虫などへの影響を確認する

ミツバチや他の生物への配慮

開花中の植物へ殺虫剤を使用すると、ミツバチなどの訪花昆虫へ影響する可能性があります。

対象製品の注意事項を確認し、開花期の使用を避ける、訪花時間帯を避ける、散布範囲を限定するといった対策を検討します。

公園では、害虫だけでなく、天敵昆虫、野鳥、水生生物なども生息しています。防除効果だけでなく、公園の生態系全体への影響を考慮します。

除草剤を使用する場合

除草剤は、園路、広場周辺、フェンス沿い、植栽地などで使用されることがありますが、対象外の植物への飛散や、利用者・ペットとの接触に注意が必要です。

  • 対象雑草に登録がある製品を選ぶ
  • 樹木の根元や芝へ影響しないか確認する
  • 散布範囲を明確にする
  • 風の弱い日に低い位置から散布する
  • 薬液が乾くまで必要な立入管理を行う
  • 散布後の枯草処理を計画する

除草剤の代わりに、刈取り、抜取り、防草シート、マルチングなどを採用できる区域もあります。

薬剤の調製

薬液は、製品ラベルに従って必要量だけ調製します。目分量ではなく、計量器具を使用して希釈します。

調製場所では次の点に注意します。

  • 一般利用者が立ち入らない場所で行う
  • 井戸、池、水路、排水口の近くを避ける
  • こぼれた場合に回収できるよう養生する
  • 専用の計量器具を使用する
  • 飲食用容器へ移し替えない
  • 必要量を計算し、余分な薬液を作らない

作業員の安全対策

作業員は、製品ラベルや安全データシートなどを確認し、必要な保護具を着用します。

  • 保護手袋
  • 長袖・長ズボンの作業着
  • 保護眼鏡
  • マスクや呼吸用保護具
  • 長靴または薬液が浸透しにくい履物
  • 帽子・防護帽

散布中の飲食や喫煙は避け、作業後は手、顔、露出部を洗います。体調不良者や薬剤に過敏な作業員には散布作業を担当させないなどの配慮も必要です。

農薬の保管

農薬は、利用者や子どもが触れない施錠可能な場所へ保管します。

  • 食品、飲料、飼料と分ける
  • 直射日光や高温を避ける
  • 容器を移し替えない
  • ラベルを読める状態に保つ
  • 在庫数量と使用期限を管理する
  • 液漏れや容器破損を定期確認する
  • 鍵の管理者を明確にする
絶対に避けること:ペットボトル、飲料容器、無表示の容器へ農薬や希釈液を移し替えてはいけません。誤飲事故の大きな原因になります。

残った薬液と洗浄水の処理

薬液は使い切れる量だけ調製することが原則です。残液や散布機の洗浄水を、公園の側溝、池、水路、下水道、地面へ安易に流してはいけません。

製品ラベル、自治体の廃棄物担当部署、製造販売業者などへ確認し、適切に処理します。

洗浄する場合は、周辺へ飛散・流出しない場所を選び、洗浄水の扱いを事前に決めておきます。

空容器・期限切れ農薬の処理

使用済み容器や期限切れ農薬は、家庭ごみとして一律に処分できるとは限りません。

容器の材質、内容物の残留、排出事業者、自治体のルールに従い、販売店、製造販売業者、廃棄物処理業者などへ相談します。

空容器を他の用途へ再利用することは避けます。

散布記録を残す

農薬を使用した場合は、使用状況を記録します。記録は、使用回数の確認、利用者からの問い合わせ、事故調査、翌年度の防除計画に役立ちます。

記録項目の例は次のとおりです。

  • 使用年月日・時間帯
  • 公園名・散布場所
  • 対象植物
  • 対象病害虫・雑草
  • 農薬名・登録番号
  • 有効成分
  • 希釈倍数・使用量
  • 散布方法
  • 天候・風向き・風の強さ
  • 作業者
  • 事前周知と立入規制の内容
  • 残液・空容器の処理方法
  • 事故、苦情、異常の有無

委託業者へ散布を任せる場合

公園管理者が造園会社や防除業者へ散布を委託しても、発注者として安全管理や実施内容を確認する必要があります。

仕様書には次の事項を定めます。

  • 病害虫の発生確認を行うこと
  • 農薬以外の方法を先に検討すること
  • 登録農薬をラベルどおり使用すること
  • 農薬名と散布計画を事前提出すること
  • 周知、立入規制、飛散防止を行うこと
  • 天候不良時は延期すること
  • 使用記録と写真を提出すること
  • 残液・容器を適正に処理すること
  • 事故や苦情を直ちに報告すること

「害虫駆除一式」とだけ発注すると、薬剤や散布方法を発注者が把握できないまま作業が行われるおそれがあります。

事故・体調不良・苦情が発生した場合

散布中または散布後に、利用者や作業員が気分不良、目や皮膚の痛み、呼吸器症状などを訴えた場合は、作業を中止し、安全な場所へ移動させます。

  1. 散布を直ちに停止する
  2. 被害者を薬剤から遠ざける
  3. 必要に応じて救急要請する
  4. 製品ラベルに記載された応急処置を確認する
  5. 使用した農薬名、成分、量を医療機関へ伝える
  6. 公園管理者、自治体担当部署へ報告する
  7. 散布区域を閉鎖する
  8. 気象条件、作業状況、周知状況を記録する

使用した製品の容器、ラベル、安全データシートなどをすぐ確認できるようにしておきます。

公園管理担当者向けチェックリスト

  • 病害虫や雑草の種類と発生範囲を確認したか
  • 農薬以外の方法を検討したか
  • 農薬登録が現在も有効か確認したか
  • 対象植物・病害虫に適用があるか
  • 希釈倍数、使用量、使用回数を確認したか
  • 利用者・周辺住民へ事前周知したか
  • 学校、保育施設、病院などへ必要な連絡をしたか
  • 風向き、風速、降雨予報を確認したか
  • 立入規制と飛散防止措置を準備したか
  • 池、水路、遊具、水飲み場を保護したか
  • 作業員が適切な保護具を着用しているか
  • 残液、洗浄水、空容器の処理方法を決めたか
  • 散布記録を保存したか
  • 事故時の連絡体制を確認したか

まとめ

公園で農薬を使用する場合は、農薬取締法に基づいて登録された製品を、ラベルに記載された適用対象、希釈倍数、使用量、使用方法、使用回数などに従って使用する必要があります。

公園は不特定多数の人が利用し、住宅や学校などにも近いため、まず剪定、捕殺、刈取りなどの農薬を使わない方法を検討します。やむを得ず農薬を散布する場合は、病害虫の発生を確認し、対象範囲を限定したうえで、事前周知、立入規制、飛散防止を徹底します。

薬剤の選定や散布だけでなく、保管、調製、作業員の保護、残液・洗浄水・空容器の処理、散布記録、事故対応までを一連の管理として整備することが重要です。

参考資料・公的情報

内容確認日:2026年7月19日