公園管理では、騒音、樹木、落葉、遊具、犬のふん、照明、不法駐車、利用者のマナーなど、さまざまな苦情や要望が寄せられます。
苦情対応では、相手の話を聞いて回答するだけでなく、受付内容、事実確認、対応経過、回答内容、完了確認までを記録することが重要です。
記録が不十分だと、担当者が変わった際に経緯が分からなくなったり、同じ苦情へ異なる回答をしたり、対応漏れが発生したりします。苦情対応記録は、問題解決だけでなく、再発防止や公園管理の改善にも利用できる資料です。
- 苦情対応記録を残す目的
- 記録すべき基本項目
- 受付番号を付ける
- 受付方法と日時を記録する
- 申出人情報は必要最小限にする
- 申出内容は相手の言葉と事実を分けて記録する
- 苦情内容を具体的に記録する
- 感情的・評価的な表現を避ける
- 申出人の希望を確認する
- 緊急性を判断する
- 受付時に約束しすぎない
- 事実確認の記録
- 写真の残し方
- 対応方針と判断理由を記録する
- 対応経過を時系列で残す
- 申出人への回答内容を記録する
- 回答期限を管理する
- 対応完了の基準を決める
- 対応できない苦情の記録
- 暴言・威圧・長時間対応の記録
- 個人情報の管理
- 保存期間の考え方
- 苦情の分類方法
- 苦情記録を管理改善へ活用する
- 苦情対応記録の記入例
- 簡易対応履歴の記入例
- 電話受付時のチェックリスト
- 苦情対応記録の最終チェックリスト
- まとめ
- 参考資料・公的情報
苦情対応記録を残す目的
- 申出内容を正確に共有する
- 対応漏れや回答の不一致を防ぐ
- 事実確認と判断の根拠を残す
- 担当者間の引継ぎを容易にする
- 同じ場所で繰り返される問題を把握する
- 事故や紛争へ発展した場合の確認資料とする
- 施設改善や管理計画へ反映する
- 指定管理者や受託者の対応状況を確認する
記録すべき基本項目
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 受付番号 | 案件を特定する管理番号 |
| 受付日時 | 年月日、時刻 |
| 受付方法 | 電話、窓口、メール、手紙、現地申出など |
| 受付者 | 氏名、所属 |
| 申出人情報 | 氏名、連絡先、住所など必要最小限 |
| 対象公園 | 公園名、場所、施設番号 |
| 申出内容 | 何について、いつ、どこで、どのような問題があったか |
| 希望内容 | 申出人が求めている対応 |
| 緊急性 | 事故、危険、衛生、防犯上の緊急性 |
| 事実確認 | 現地確認、関係者確認、写真、過去記録 |
| 判断 | 対応方針とその理由 |
| 対応内容 | 清掃、修繕、剪定、掲示、注意喚起など |
| 回答内容 | 申出人へ伝えた内容 |
| 担当者・期限 | 対応部署、担当者、完了予定日 |
| 完了確認 | 実施日、確認結果、再連絡の有無 |
受付番号を付ける
苦情や要望には、案件ごとに受付番号を付けます。受付番号があると、電話記録、現地写真、修繕依頼、回答メールなどを同じ案件として関連付けられます。
例:
2026-CHUO-0042
- 受付年
- 公園名や地区の略称
- 連番
同じ申出人から複数回連絡があった場合も、同じ案件であれば受付番号を共通にし、対応履歴を時系列で追加します。
受付方法と日時を記録する
- 電話
- 窓口
- メール
- 問い合わせフォーム
- 手紙
- 現地での申出
- 自治体の別部署からの転送
- 警察や消防など関係機関からの連絡
「午前中」「先週」などの曖昧な記録ではなく、可能な限り正確な日時を残します。
申出人情報は必要最小限にする
氏名、電話番号、メールアドレス、住所などは、回答や事実確認に必要な範囲で取得します。
- 回答が不要な場合は、連絡先を無理に求めない
- 匿名の申出も内容を確認して記録する
- 必要以上に家族構成や勤務先を聞かない
- 個人情報を担当外の職員へ広く共有しない
- 紙やデータを誰でも閲覧できる場所へ置かない
申出内容は相手の言葉と事実を分けて記録する
申出人が話した内容と、管理者が確認した事実は分けて記録します。
申出人の主張
- 夜間に若者が騒いで眠れない
- 公園の木から大量の落葉が敷地へ入る
- 遊具がぐらついて危険に見える
管理者が確認した事実
- 午後10時15分に現地確認し、広場で6人が会話していた
- 公園境界付近の樹木から隣接敷地へ枝が張り出している
- 遊具の手すりを触診し、接合部に約1cmのがたつきを確認した
苦情内容を具体的に記録する
次の項目を意識すると、内容を整理しやすくなります。
- いつ発生したか
- どこで発生したか
- 何が問題なのか
- どの程度の頻度か
- 誰にどのような影響があるか
- 現在も続いているか
- 危険や被害が発生しているか
- 申出人は何を希望しているか
感情的・評価的な表現を避ける
避けたい表現
- 神経質な人
- 話が長い
- 常連クレーマー
- 意味不明な苦情
- どうでもよい内容
- 怒鳴っていて面倒
客観的な記録例
- 同じ内容について過去3か月に4回の申出がある
- 約20分間、同一内容の説明が続いた
- 大きな声で「すぐに対応しろ」と繰り返した
- 具体的な発生場所と日時は確認できなかった
- 回答期限を本日中とするよう求められた
担当者の感想ではなく、発言、行動、回数、時間など確認できる事実を記録します。
申出人の希望を確認する
苦情の内容と、申出人が求めている対応が一致しているとは限りません。
- 施設を修理してほしい
- 樹木を剪定してほしい
- 注意看板を設置してほしい
- 利用者へ注意してほしい
- 今後の対応方針を説明してほしい
- 回答は不要だが情報として伝えたい
希望を記録しても、必ずそのとおり対応できるとは限りません。現地状況、法令、予算、公平性などを確認して判断します。
緊急性を判断する
| 区分 | 例 | 初動 |
|---|---|---|
| 緊急 | 遊具破損、倒木、感電、火災、不審物、人身事故 | 利用停止、立入禁止、警察・消防・専門業者へ連絡 |
| 早急 | 漏水、照明不点灯、犬のふん大量放置、騒音の継続 | 当日または早期に現地確認 |
| 通常 | 落葉、雑草、軽微な設備要望、看板要望 | 計画的に確認・対応 |
| 情報提供 | 将来の改善要望、利用方法への意見 | 記録して管理計画の参考とする |
受付時に約束しすぎない
受付担当者が現地確認前に「すぐ撤去します」「必ず剪定します」などと断定すると、後で対応できない場合に新たな苦情となります。
回答例
- 現地を確認したうえで、対応方法を検討します
- 担当部署へ共有し、確認結果をご連絡します
- 安全性を確認し、必要な措置を行います
- 対応の可否と時期は、現地確認後にお伝えします
事実確認の記録
- 現地確認日時
- 確認者
- 天候や利用状況
- 確認した場所
- 確認結果
- 写真や動画
- 施設台帳・点検記録
- 関係者への聞き取り
- 過去の苦情履歴
- 防犯カメラ映像を確認した場合の目的と範囲
現地確認で申出内容を再現できなかった場合も、「異常なし」だけでなく、確認した日時、時間帯、範囲、方法を記録します。
写真の残し方
- 場所が分かる全景
- 対象施設全体
- 問題箇所の接写
- 境界や周辺住宅との位置関係
- 作業・修繕前後
- 注意看板や立入規制の設置状況
申出人や公園利用者の顔、車両番号、住宅内部など、対応に不要な個人情報を撮影しないようにします。
対応方針と判断理由を記録する
対応する場合だけでなく、対応しない場合も理由を残します。
対応する例
- 遊具の固定部に緩みが確認されたため、使用中止と修繕を行う
- 園路へ枝が張り出しているため、安全確保を目的に剪定する
- 照明不点灯により夜間の見通しが悪いため、電球・機器を交換する
直ちに対応しない例
- 樹木の健全性と公園機能に問題がなく、全面伐採は行わない
- 通常の公園利用による音であり、現時点では利用禁止としない
- 要望された場所は公園管理区域外のため、所管部署へ案内する
「できないため」「問題ないため」だけではなく、安全性、管理基準、公平性、所管範囲などの判断根拠を記録します。
対応経過を時系列で残す
| 日時 | 対応経過の例 |
|---|---|
| 7月19日 9時10分 | 電話で苦情を受付 |
| 7月19日 10時30分 | 担当者2名で現地確認、写真撮影 |
| 7月19日 11時20分 | 管理責任者へ報告し、応急措置を決定 |
| 7月19日 13時00分 | カラーコーンと注意表示を設置 |
| 7月19日 15時30分 | 申出人へ確認結果と今後の予定を電話回答 |
| 7月22日 | 専門業者が修繕 |
| 7月23日 | 管理者が完了確認し、案件を終了 |
申出人への回答内容を記録する
- 回答日時
- 回答方法
- 回答者
- 伝えた内容
- 対応予定
- 対応できない事項と理由
- 申出人の反応
- 追加質問や再連絡の希望
電話回答の場合も、要点を記録します。重要案件では、電話後に文書やメールで回答内容を確認できる形にします。
回答期限を管理する
調査や関係部署との調整に時間がかかる場合は、最終回答まで放置せず、中間連絡を行います。
- 受付時に回答予定日を伝える
- 期限までに回答できない場合は途中経過を連絡する
- 担当者不在でも案件を引き継げるようにする
- 期限超過案件を一覧で確認する
対応完了の基準を決める
作業を実施しただけで案件を終了せず、次の事項を確認します。
- 予定した対応が完了したか
- 危険や不具合が解消したか
- 応急措置を撤去できるか
- 申出人への回答が完了したか
- 追加対応が必要でないか
- 再発防止策を実施したか
- 責任者が終了を確認したか
対応できない苦情の記録
申出人の希望に応じられない場合も、受付内容、確認結果、判断理由、説明内容を残します。
- 公園管理者の所管外である
- 法令や管理基準に反する
- 特定の利用者だけを優遇する内容である
- 安全性や公共性を損なう
- 事実を確認できず、具体的な対応ができない
対応できないことと、相手の申出を記録しないことは別です。今後同じ問題が繰り返された場合に備えて記録します。
暴言・威圧・長時間対応の記録
暴言、威圧、脅迫的発言、長時間の拘束などがあった場合は、感想ではなく具体的な事実を記録します。
- 発言内容
- 発言回数
- 対応時間
- 同席者
- 録音の有無と根拠
- 退去要請や警察相談の有無
- 職員の安全確保措置
職員個人だけで抱え込まず、管理責任者や組織として対応します。
個人情報の管理
- 苦情対応に必要な情報だけを取得する
- 閲覧できる職員を限定する
- メールを無関係な職員へ転送しない
- 紙の記録を机上へ放置しない
- 私物端末へ保存しない
- 申出人情報を相手方利用者へ伝えない
- 保存期間終了後は規程に従って廃棄する
近隣住民からの苦情を対象となった公園利用者へ伝える場合も、申出人の氏名や住所を安易に明かさないようにします。
保存期間の考え方
苦情対応記録の保存期間は、自治体の文書管理規程、指定管理業務仕様書、契約、個人情報管理規程などに基づいて定めます。
事故、損害賠償、継続的な近隣問題などへ発展する可能性がある案件は、通常案件と異なる保存区分が必要になる場合があります。
苦情の分類方法
- 遊具・施設破損
- 樹木・落葉・越境枝
- 草刈り・植栽管理
- 清掃・ごみ・不法投棄
- トイレ・衛生
- 騒音・花火・迷惑行為
- 犬・野生動物
- 照明・防犯
- 駐車・自転車
- 職員・受託者の対応
- イベント・占用利用
- その他の要望
分類を統一すると、件数や傾向を集計しやすくなります。
苦情記録を管理改善へ活用する
- 同じ公園で繰り返される苦情
- 同じ施設に関する苦情
- 季節ごとに増える問題
- 対応に時間がかかっている案件
- 複数部署へ重複して届く苦情
- 案内表示の不足による問い合わせ
- 管理仕様や巡回頻度の見直しが必要な問題
件数だけでなく、内容、場所、発生時間、対応日数、再発状況を分析します。
苦情対応記録の記入例
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 受付番号 | 2026-CHUO-0042 |
| 受付日時 | 2026年7月19日 9時10分 |
| 受付方法 | 電話 |
| 対象 | 中央公園 北側園路 樹木T-18 |
| 申出内容 | 申出人宅の敷地へ枝が張り出し、落葉が雨どいへ入るとの申出 |
| 希望内容 | 越境している枝の剪定 |
| 現地確認 | 同日10時30分、担当者2名で確認。枝が境界を越えて約1.2m張り出していることを確認 |
| 判断 | 通行・樹木の安全性を損なわない範囲で剪定可能 |
| 対応 | 植栽管理業者へ剪定を依頼。7月25日実施予定 |
| 回答 | 7月19日15時30分、現地確認結果と剪定予定を電話で説明 |
| 完了 | 7月25日剪定、7月26日管理者が完了確認。申出人へ電話連絡 |
簡易対応履歴の記入例
| 日時 | 担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 7月19日 9時10分 | 受付担当 | 電話受付。北側園路の越境枝について剪定要望 |
| 7月19日 10時30分 | 施設担当 | 現地確認、写真撮影、境界越境を確認 |
| 7月19日 13時00分 | 施設担当 | 植栽業者へ作業可否と日程を照会 |
| 7月19日 15時30分 | 受付担当 | 申出人へ7月25日剪定予定と回答 |
| 7月25日 | 植栽業者 | 越境部分を剪定 |
| 7月26日 | 施設担当 | 完了確認、申出人へ連絡、案件終了 |
電話受付時のチェックリスト
- 受付日時を記録したか
- 公園名と具体的な場所を確認したか
- 発生日時と頻度を確認したか
- 危険や被害の有無を確認したか
- 申出人が求める対応を確認したか
- 回答の要否を確認したか
- 連絡先を必要な範囲で確認したか
- 回答予定や今後の流れを説明したか
- 約束できない対応を断定していないか
- 受付内容を復唱したか
苦情対応記録の最終チェックリスト
- 受付番号を付けたか
- 受付日時・方法・受付者を記録したか
- 申出人情報を必要最小限にしたか
- 対象公園・施設・場所を特定したか
- 申出内容を具体的に記録したか
- 申出人の主張と確認事実を分けたか
- 感情的・評価的な表現を避けたか
- 緊急性を判断したか
- 現地確認の日時と結果を記録したか
- 対応方針と判断理由を記録したか
- 担当者と期限を決めたか
- 申出人への回答内容を記録したか
- 対応経過を時系列で残したか
- 完了確認を行ったか
- 再発防止や管理改善へ反映したか
- 個人情報を適切に管理したか
まとめ
苦情対応記録では、申出内容だけでなく、受付日時、対象場所、緊急性、事実確認、判断理由、対応経過、回答、完了確認までを一つの案件として残します。
記録は、担当者の感想や申出人への評価ではなく、確認できる発言、行動、日時、回数、現地状況を客観的に記載します。
また、申出人の主張と管理者が確認した事実を分け、対応する場合も対応しない場合も、その判断理由を残すことが重要です。
苦情を個別対応だけで終わらせず、発生場所、内容、時期、対応日数、再発状況を集計することで、公園管理の改善や巡回・修繕計画の見直しに活用できます。
参考資料・公的情報
内容確認日:2026年7月19日
