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維持管理業務の積算の考え方

維持管理業務の積算とは、施設、道路、公園、建築物、設備、樹木などを安全かつ適切な状態に保つために必要な作業量と費用を算定し、予定価格や予算、見積金額の基礎を作ることです。

維持管理業務には、草刈り、除草、剪定、清掃、警備、設備運転、保守点検、修繕、巡回、緊急対応などが含まれます。同じ面積や施設数であっても、現場条件、作業頻度、利用状況、安全対策、廃棄物処理の有無によって必要費用は大きく変わります。

重要:積算額を単純に「面積×単価」だけで決めると、準備・移動・安全対策・交通誘導・廃棄物処理・報告書作成などの費用が抜けやすくなります。業務を実施するために必要な作業と経費を、仕様書と現場条件から一つずつ整理します。
  1. 維持管理業務の積算の目的
  2. 積算の基本構造
  3. 積算を始める前に整理する事項
  4. 仕様書と積算の関係
  5. 積算の基本手順
  6. 現地調査で確認するポイント
  7. 数量の拾い出し
  8. 数量算定で注意すること
  9. 歩掛とは
  10. 歩掛を補正する主な条件
  11. 労務費の考え方
  12. 最低賃金と積算
  13. 直接人件費に含める作業
  14. 材料費
  15. 機械経費
  16. 車両費・移動費
  17. 安全対策費
  18. 交通誘導員の積算
  19. 廃棄物処理費
  20. 共通仮設費・業務管理費
  21. 一般管理費等
  22. 一式計上の考え方
    1. 一式計上が適する例
    2. 数量化した方がよい例
  23. 市場単価・見積りによる積算
  24. 過去実績を使う場合
  25. 年間維持管理業務の積算
  26. 草刈り業務の積算例
    1. 数量
    2. 費用
  27. 樹木管理業務の積算例
  28. 清掃業務の積算例
  29. 設備保守点検業務の積算例
  30. 巡回・点検業務の積算例
  31. 緊急対応の積算
  32. 物価・労務単価の変動
  33. 予定価格と最低制限価格
  34. 数量精算と総価契約
  35. 積算条件書に記載する内容
  36. 積算内訳書の例
  37. 積算の妥当性を確認する方法
  38. 積算で起こりやすい失敗
  39. 契約変更が必要となる例
  40. 関連する主な法令
    1. 地方自治法
    2. 地方自治法施行令
    3. 会計法
    4. 予算決算及び会計令
    5. 公共工事の品質確保の促進に関する法律
    6. 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律
    7. 建設業法
    8. 労働基準法
    9. 最低賃金法
    10. 労働安全衛生法
    11. 労働者災害補償保険法・健康保険法・厚生年金保険法等
    12. 廃棄物の処理及び清掃に関する法律
    13. 警備業法
    14. 消費税法
  41. 法令・公的資料の確認先
  42. 発注者向けチェックリスト
  43. 受注者向けチェックリスト
  44. まとめ

維持管理業務の積算の目的

  • 適正な予算額を把握する
  • 予定価格や設計金額の根拠を作る
  • 必要な作業内容と数量を明確にする
  • 過度な低価格発注を防ぐ
  • 安全・品質の確保に必要な費用を見込む
  • 入札価格や見積書を適切に比較する
  • 契約変更・数量精算の根拠を作る
  • 翌年度以降の維持管理計画に活用する

積算の基本構造

業務価格の基本イメージ

直接業務費 + 共通仮設費・業務管理費等 + 一般管理費等 = 業務価格

業務価格 + 消費税等相当額 = 設計金額・予定価格の基礎

実際の費目区分や名称は、国、地方公共団体、業務種類、採用する積算基準によって異なります。建築保全業務、土木維持工事、清掃・警備等の役務では、それぞれ適用する基準を確認します。

積算を始める前に整理する事項

  • 業務の目的
  • 対象施設・区域
  • 作業内容
  • 数量・規模
  • 作業頻度・回数
  • 履行期間
  • 作業可能時間
  • 利用者・交通への影響
  • 必要資格・配置人員
  • 安全対策
  • 材料・機械・車両
  • 廃棄物処理
  • 成果品・報告書
  • 緊急対応の有無

仕様書と積算の関係

仕様書に書かれていない作業は、受注者が価格へ反映しにくく、契約後のトラブルになりやすくなります。積算と仕様書は同時に作成し、内容を一致させます。

仕様書で定める事項 積算へ反映する内容
作業対象 面積、延長、箇所数、台数、本数
作業頻度 年間回数、月回数、日数
品質基準 必要人員、機械、作業時間
安全対策 誘導員、保安設備、養生費
廃棄物処理 積込、運搬、処分費
報告書 写真整理、データ入力、書類作成時間
緊急対応 待機費、出動費、夜間・休日割増

積算の基本手順

  1. 現場条件を調査する
  2. 業務内容を作業単位へ分解する
  3. 数量を拾い出す
  4. 施工・作業条件を設定する
  5. 歩掛または作業時間を設定する
  6. 労務単価を設定する
  7. 材料費・機械経費・車両費を算定する
  8. 安全費・交通誘導費・処分費等を加える
  9. 共通費・一般管理費等を算定する
  10. 消費税等を加える
  11. 仕様書、数量表、積算書の整合を確認する

現地調査で確認するポイント

  • 実際の面積・延長・箇所数
  • 地形、勾配、段差
  • 樹木・構造物・障害物の密度
  • 車両・機械の進入可否
  • 資材置場・駐車場所
  • 作業時間の制限
  • 利用者・通行人の多さ
  • 騒音・粉じん・飛散対策
  • 搬出経路・処分場までの距離
  • 電源・水道の使用可否
  • 既存施設の劣化状況
  • 過去の事故・苦情・緊急対応
注意:図面上の面積だけでは、斜面、狭小部、植栽帯、階段、遊具周辺などの作業効率低下を把握できません。必要に応じて現地写真、区域図、管理台帳を作成します。

数量の拾い出し

数量は、仕様書、図面、台帳、現地測量、過去実績などを用いて算定します。

業務 主な数量単位
草刈り・除草 平方メートル、ヘクタール、回
剪定 本、樹高区分、幹周区分、回
清掃 平方メートル、箇所、便器数、日、回
設備点検 台、系統、棟、回
巡回 施設数、巡回距離、日、回
道路・側溝清掃 メートル、平方メートル、立方メートル
廃棄物処理 キログラム、トン、立方メートル、台
緊急対応 回、時間、班、日

数量算定で注意すること

  • 区域の重複・漏れを防ぐ
  • 作業対象外区域を明示する
  • 年間回数を掛け忘れない
  • 対象数と予備数を区別する
  • 施工条件別に数量を分ける
  • 斜面・狭小部・機械施工不可部を分ける
  • 搬出量と現場発生量を混同しない
  • 一式計上の内容を明確にする

歩掛とは

歩掛とは、ある作業を一定量実施するために必要な人員、時間、材料、機械などの標準的な作業量を示すものです。

例:作業員2人が1日で1,000平方メートルの草刈りを行う条件であれば、作業量、作業員数、機械台数、作業時間を組み合わせて必要人工を算定します。

公的な積算基準に該当する歩掛がある場合はそれを参考にします。基準がない業務や特殊条件では、見積り、過去実績、試験施工、作業時間調査などによって独自歩掛を設定します。

歩掛を補正する主な条件

  • 急傾斜地
  • 狭小部
  • 障害物が多い場所
  • 人力施工が必要な場所
  • 交通量・利用者が多い場所
  • 夜間・早朝作業
  • 機械搬入が困難な場所
  • 高所・水上・閉所作業
  • 騒音・振動制限がある場所
  • 厳しい仕上がり基準
  • 作業場所が分散している場合

労務費の考え方

労務費は、作業に必要な職種別の人員数または作業時間に、適切な労務単価を掛けて算定します。

  • 作業員
  • 造園工
  • 運転手
  • 設備技術員
  • 清掃員
  • 警備員
  • 交通誘導警備員
  • 現場責任者
  • 有資格者

労務単価は、国や自治体の公表単価、建築保全業務労務単価、公共工事設計労務単価、地域の市場価格、複数者の見積りなどから、業務に適したものを採用します。

注意:公表されている労務単価は、労働者本人へ支払う賃金だけを意味するとは限りません。法定福利費、事業主負担、現場管理費等の計上区分を基準ごとに確認し、二重計上や計上漏れを防ぎます。

最低賃金と積算

予定価格を低く設定しすぎると、最低賃金、社会保険、安全衛生、必要人員の確保が困難になります。

  • 地域別最低賃金を下回らないか
  • 深夜・休日・時間外割増を見込んでいるか
  • 社会保険料の事業主負担を考慮したか
  • 有給休暇、教育、健康診断等の必要経費を考慮したか
  • 責任者・資格者の配置費用を見込んだか

直接人件費に含める作業

  • 現場作業
  • 作業前準備
  • 朝礼・危険予知活動
  • 機械・工具の点検
  • 作業場所間の移動
  • 資材積込・荷下ろし
  • 清掃・片付け
  • 写真撮影
  • 測定・記録
  • 報告書作成

材料費

  • 交換部品
  • 肥料・薬剤
  • 洗剤・消毒剤
  • 塗料・補修材
  • 燃料・油脂
  • ごみ袋・養生材
  • 表示板・安全資材
  • 消耗工具

材料単価は、刊行物、メーカー価格、取引実績、見積書、市場価格などを用います。運搬費、荷造費、送料、保管費が別途必要か確認します。

機械経費

草刈機、チェーンソー、高所作業車、清掃機械、点検機器などを使用する場合、購入価格だけでなく、使用に伴う経費を積算します。

  • 機械損料・賃料
  • 燃料費
  • 油脂費
  • 消耗刃・消耗部品
  • 修理・整備費
  • 運搬費
  • オペレーター費
  • 保険・検査費

車両費・移動費

  • 作業車・巡回車
  • ダンプトラック
  • 高所作業車
  • ごみ収集車
  • 燃料費
  • 有料道路・駐車料金
  • 車両損料・リース料
  • 拠点から現場までの移動
  • 複数施設間の移動

施設が広域に分散している業務では、現場作業時間より移動時間の割合が大きくなることがあります。

安全対策費

  • 交通誘導警備員
  • 監視員・見張員
  • カラーコーン・バー
  • 立入禁止柵
  • 案内標識
  • 飛散防止ネット
  • 防護具
  • 墜落制止用器具
  • 安全教育
  • 救急用品
重要:公園や道路など第三者が利用する場所では、安全対策を受注者の努力だけに任せず、仕様書に必要人数や設備を示し、積算へ反映します。

交通誘導員の積算

道路沿い、駐車場、出入口、歩行者動線付近で作業する場合は、交通誘導員の必要性を検討します。

  • 配置人数
  • 配置時間
  • 資格者の必要性
  • 昼間・夜間区分
  • 交代要員
  • 休憩時間
  • 工事車両の出入り
  • 歩行者誘導

廃棄物処理費

刈草、剪定枝、落ち葉、汚泥、廃部品、廃油、一般廃棄物、産業廃棄物などの処理費を見込みます。

作業 主な費用
集積 人件費、袋・容器
積込 人件費、機械費
運搬 車両費、燃料費、移動時間
処分 処分場受入単価
記録 伝票、マニフェスト等の整理

「処分費込み」とする場合でも、想定量、運搬距離、処分方法を明確にしなければ、応札者間で価格条件がそろいません。

共通仮設費・業務管理費

個別作業へ直接割り当てにくいものの、業務全体の実施に必要な費用です。名称や算定方法は適用基準によって異なります。

  • 現場事務・連絡調整
  • 施工計画・作業計画
  • 工程管理
  • 安全管理
  • 品質管理
  • 写真管理
  • 報告書作成
  • 現場責任者の管理業務
  • 通信費
  • 小器材・共通消耗品

一般管理費等

企業が継続して事業を行うために必要な本社経費、営業経費、利益などを反映する費目です。

  • 本社事務費
  • 役員・事務職員人件費
  • 事務所費
  • 保険・租税公課
  • 契約・入札事務
  • 教育・採用費
  • 利益

直接費だけで予定価格を作ると、事業者が継続的に履行するための経費を確保できません。

一式計上の考え方

一式計上は簡便ですが、内容が不明確になりやすいため注意が必要です。

一式計上が適する例

  • 少額で数量化が難しい付随作業
  • 業務全体に共通する軽微な費用
  • 内容が明確で価格影響が小さいもの

数量化した方がよい例

  • 人員数が安全性に影響する作業
  • 処分量で費用が大きく変わる作業
  • 実績数量による精算を行う作業
  • 追加・変更が想定される作業
  • 応札者間で条件差が生じやすい作業

市場単価・見積りによる積算

公的歩掛や刊行単価がない場合は、複数事業者から見積りを徴取し、内容を比較します。

  • 同じ仕様・数量で依頼する
  • 見積条件を明示する
  • 人件費、材料費、経費の内訳を求める
  • 異常に高い・低い見積りの理由を確認する
  • 単純平均ではなく内容の妥当性を判断する
  • 見積時点と履行時期の価格差を考慮する
注意:最低見積額をそのまま予定価格にすると、見積条件の読み違い、作業漏れ、採算無視の価格を採用するおそれがあります。

過去実績を使う場合

  • 過去の数量と現在数量を比較する
  • 作業頻度の変更を反映する
  • 最低賃金・労務単価の上昇を反映する
  • 燃料・材料・処分費の変動を反映する
  • 施設の老朽化を反映する
  • 苦情・事故対応の増加を反映する
  • 前回契約の赤字・不履行原因を確認する

前年額へ一定率を掛けるだけでは、業務実態の変化を反映できません。

年間維持管理業務の積算

年間契約では、季節変動と作業回数を考慮します。

  • 繁忙期・閑散期
  • 草木の生育時期
  • 落葉期
  • 台風・降雪時期
  • 施設のイベント日程
  • 休館日・閉園日
  • 法定点検時期
  • 年度末の報告書作成

草刈り業務の積算例

数量

  • 平地草刈り面積
  • 斜面草刈り面積
  • 人力作業区域
  • 年間回数
  • 刈草搬出量

費用

  • 草刈作業員
  • 集草・積込作業員
  • 刈払機・乗用草刈機
  • 燃料・刃
  • 飛散防止・誘導員
  • 運搬車両
  • 刈草処分費
  • 写真・報告書

樹木管理業務の積算例

  • 樹種・本数
  • 樹高・幹周
  • 剪定方法
  • 高所作業車の使用
  • 交通規制・誘導員
  • 枝葉の発生量
  • 積込・運搬・処分
  • 病害虫対策
  • 樹木医等の専門技術者

清掃業務の積算例

  • 床面積・材質
  • 清掃頻度
  • 日常清掃・定期清掃の区分
  • 便器・洗面台・窓の数量
  • 利用者数
  • 作業可能時間
  • 洗剤・消耗品
  • 清掃機械
  • ごみ搬出・処理
  • 責任者・品質確認

設備保守点検業務の積算例

  • 設備台数・系統数
  • 点検区分・法定点検頻度
  • 必要資格
  • 点検時間
  • 測定機器
  • 消耗部品
  • 緊急出動
  • 24時間監視・待機
  • 報告書・台帳更新

巡回・点検業務の積算例

  • 施設数
  • 巡回距離
  • 1施設当たり確認時間
  • 移動時間
  • 車両費
  • 写真撮影
  • 異常報告
  • 応急措置
  • 台帳入力

緊急対応の積算

倒木、漏水、停電、設備故障、事故、災害などの緊急対応を契約へ含める場合は、通常業務と分けて考えます。

  • 待機費
  • 基本出動費
  • 作業時間単価
  • 夜間・休日割増
  • 車両・機械費
  • 材料費
  • 処分費
  • 実績精算方法

物価・労務単価の変動

複数年度契約や長期契約では、人件費、燃料費、電気料金、材料費、処分費が大きく変動する可能性があります。

  • 年度ごとの単価見直し
  • 最低賃金改定への対応
  • 著しい物価変動時の協議
  • スライド条項の設定
  • 燃料費等の実績精算
  • 契約変更の基準

国土交通省は建築保全業務労務単価を毎年度作成しており、2026年度単価についても最新調査に基づく改定が公表されています。実際の積算では、履行年度に適用する最新版を確認します。

予定価格と最低制限価格

地方公共団体では、契約規則等に基づいて予定価格を設定します。業務の種類によっては、最低制限価格制度や低入札価格調査制度を設ける場合があります。

  • 予定価格は適正な積算に基づき設定する
  • 非公表・事後公表等の扱いは自治体規則による
  • 最低制限価格の対象業務を確認する
  • 低価格でも履行可能性を審査する
  • 人件費・安全費の削減による品質低下を防ぐ

数量精算と総価契約

方式 特徴
総価契約 契約範囲全体を総額で契約する
単価契約 単価を契約し、実績数量で支払額を算定する
概算数量・実績精算 予定数量で契約し、完了時に実績数量で精算する
複合方式 定常業務は総価、緊急対応等は単価精算とする

発注時に数量が確定しにくい業務は、無理に一式契約とせず、単価契約や実績精算を検討します。

積算条件書に記載する内容

  • 適用積算基準
  • 適用年月
  • 労務単価の出典
  • 材料単価の出典
  • 見積採用方法
  • 作業時間帯
  • 施工条件
  • 処分先・運搬距離
  • 交通誘導員の配置
  • 支給品・貸与品
  • 数量精算の有無
  • 消費税の取扱い

積算内訳書の例

費目 数量 単位 単価 金額
平地草刈り ○○ ○○円 ○○円
斜面草刈り ○○ ○○円 ○○円
集草・積込 ○○ ○○円 ○○円
運搬 ○○ ○○円 ○○円
処分 ○○ t ○○円 ○○円
交通誘導員 ○○ 人日 ○○円 ○○円
直接業務費計 ○○円
共通費等 ○○円
業務価格 ○○円
消費税等 ○○円

積算の妥当性を確認する方法

  • 予定人工と実作業日数を比較する
  • 1日当たり作業量が現実的か確認する
  • 必要な資格者・責任者を配置できるか確認する
  • 移動・準備・片付け時間を確認する
  • 安全対策費が不足していないか確認する
  • 材料・処分単価を市場価格と比較する
  • 過去の落札額・履行実績と比較する
  • 複数見積りと比較する
  • 予定価格で健全な履行が可能か確認する

積算で起こりやすい失敗

  • 前年額をそのまま使用する
  • 図面面積と実作業面積が一致しない
  • 年間回数を誤る
  • 移動時間を計上しない
  • 交通誘導員を計上しない
  • 処分費だけ計上し運搬費を忘れる
  • 写真・報告書作成費を計上しない
  • 現場責任者を作業員と兼務できる前提にする
  • 最低見積額だけを採用する
  • 物価上昇・最低賃金改定を反映しない
  • 一般管理費・利益を認めない
  • 仕様書と積算条件が一致しない

契約変更が必要となる例

  • 対象面積・数量が大きく増減した
  • 仕様書にない作業が必要になった
  • 現場条件が想定と著しく異なった
  • 災害・事故で追加対応が発生した
  • 処分方法・処分先が変更された
  • 法令改正で必要作業が増えた
  • 発注者の指示で作業時間・方法が変わった

契約変更が必要な場合は、受注者へ口頭で追加作業を命じるだけでなく、数量、単価、工期、責任分担を協議し、書面で処理します。

関連する主な法令

地方自治法

地方公共団体の契約に関する基本的な法律です。一般競争入札、指名競争入札、随意契約等の契約方式、監督・検査、支出等に関係します。積算は適正な予定価格と契約履行を支える基礎資料となります。

地方自治法施行令

地方公共団体の入札、落札者決定、随意契約、最低制限価格等について具体的な規定を置いています。実際の取扱いは自治体の契約規則・財務規則も確認します。

会計法

国の契約・会計に関する基本的な法律です。国が発注する維持管理業務では、予定価格、入札、契約、監督、検査等に関係します。

予算決算及び会計令

国の契約手続きや予定価格の作成、競争入札、随意契約等について具体的に定めています。

公共工事の品質確保の促進に関する法律

公共工事等の品質確保、担い手の中長期的な育成・確保、適正な予定価格、適切な工期・履行期間の設定などに関係します。維持管理を工事として発注する場合や、関連する調査・設計等の業務で重要です。

公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律

公共工事の入札・契約の透明性、公正な競争、適正な施工等に関係します。工事に該当する維持修繕では、法定福利費、安全衛生経費等の適正な確保も重要です。

建設業法

維持修繕業務が建設工事に該当する場合、請負契約、許可、主任技術者・監理技術者、見積条件、下請契約等に関係します。

労働基準法

労働時間、休憩、休日、時間外・休日・深夜労働の割増賃金等に関係します。夜間作業、緊急対応、交代勤務を含む積算では特に注意します。

最低賃金法

地域別最低賃金・特定最低賃金を下回らない人件費が必要です。予定価格の設定時にも最新の最低賃金を確認します。

労働安全衛生法

危険防止措置、安全衛生教育、保護具、作業主任者、健康管理等に関係します。必要な安全経費を積算へ含めます。

労働者災害補償保険法・健康保険法・厚生年金保険法等

労災保険や社会保険の事業主負担に関係します。法定福利費を適切に見込む必要があります。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律

維持管理で発生する廃棄物の区分、収集運搬、処分、委託契約、産業廃棄物管理票等に関係します。適正処理に必要な費用を積算します。

警備業法

交通誘導警備、施設警備等を警備業者へ行わせる場合に関係します。資格者配置が必要な路線・作業条件も確認します。

消費税法

業務価格に加算する消費税等相当額、課税・非課税取引、適格請求書等に関係します。

法令・公的資料の確認先

発注者向けチェックリスト

  • 現地調査を行ったか
  • 仕様書と数量表が一致しているか
  • 作業頻度・回数を明示したか
  • 施工条件別に数量を分けたか
  • 適用基準・単価年月を明確にしたか
  • 移動・準備・片付けを見込んだか
  • 安全対策・交通誘導を見込んだか
  • 廃棄物の運搬・処分を見込んだか
  • 写真・報告書作成を見込んだか
  • 法定福利費・一般管理費等を適切に見込んだか
  • 物価・最低賃金の変動を反映したか
  • 数量精算・契約変更の条件を定めたか

受注者向けチェックリスト

  • 現場条件を確認したか
  • 仕様書に含まれる全作業を拾ったか
  • 必要人工・必要資格を確認したか
  • 機械・車両・燃料を見込んだか
  • 安全対策費を見込んだか
  • 廃棄物量と処分先を確認したか
  • 移動時間を見込んだか
  • 緊急対応条件を確認したか
  • 一般管理費・利益を見込んだか
  • 契約期間中の価格変動リスクを確認したか

まとめ

維持管理業務の積算では、対象数量に単価を掛けるだけでなく、作業条件、歩掛、労務費、材料費、機械・車両費、安全対策、交通誘導、廃棄物処理、報告書作成、共通費、一般管理費等を総合的に算定します。

特に、施設が分散している業務、利用者の多い施設、斜面・狭小部、夜間作業、緊急対応を伴う業務では、標準的な作業効率をそのまま適用できないことがあります。現地調査を行い、仕様書と積算条件を一致させることが重要です。

適正な積算は、発注者の予算管理だけでなく、労働者の適正な賃金、安全管理、業務品質、事業者の継続的な履行能力を確保するための基礎となります。