樹木台帳とは、公園、緑地、道路、学校、公共施設などにある樹木の情報を、樹木ごとに整理して記録する管理資料です。
樹種や位置だけでなく、樹高、幹周、剪定履歴、病害虫、危険箇所、点検日、今後の対応などを記録しておくことで、管理の抜けや対応の遅れを防げます。
樹木台帳は、一度作って終わりではありません。点検、剪定、伐採、植替え、台風後の確認などに合わせて、継続的に更新することが重要です。
- 樹木台帳を作る目的
- 樹木台帳の管理方法
- 最初に管理範囲を決める
- 樹木ごとに番号を付ける
- 樹木番号の表示方法
- 樹木台帳の基本項目
- 位置情報の記録方法
- 樹種の記録
- 樹高の測り方
- 幹周・幹径の測り方
- 樹冠幅の記録
- 樹勢の評価
- 異常項目の記録
- 異常の位置を具体的に記録する
- 危険度と対応優先度
- 点検履歴の作り方
- 剪定・作業履歴の記録
- 病害虫履歴の記録
- 写真の管理方法
- 同じ方向から定期撮影する
- 地図と台帳をひも付ける
- 表計算ソフトでの構成例
- 入力方法を統一する
- 台帳作成の手順
- 初回調査で最低限記録する項目
- 点検頻度の決め方
- 更新のタイミング
- 伐採・撤去した樹木の扱い
- 台帳の記入例
- 点検履歴の記入例
- 樹木台帳を使った年間管理
- 引き継ぎに使える台帳にする
- 個人情報・公開情報への注意
- バックアップの方法
- 樹木台帳でよくある失敗
- 樹木台帳作成チェックリスト
- まとめ
樹木台帳を作る目的
- 樹木の本数と位置を把握する
- 樹種や大きさを記録する
- 点検や剪定の履歴を残す
- 枯木・危険木を早期に把握する
- 作業の優先順位を決める
- 予算や年間管理計画を立てる
- 台風や事故後の比較資料にする
- 担当者が変わっても情報を引き継ぐ
- 住民や利用者からの問い合わせに対応する
樹木台帳の管理方法
樹木台帳は、紙、表計算ソフト、データベース、地理情報システムなどで管理できます。
| 管理方法 | 特徴 | 向いている規模 |
|---|---|---|
| 紙の台帳 | 現場で見やすいが、検索や集計に手間がかかる | 小規模な施設 |
| 表計算ソフト | 検索、並べ替え、集計がしやすい | 小規模から中規模 |
| データベース | 写真、履歴、複数施設を一括管理しやすい | 中規模から大規模 |
| GIS・地図システム | 地図上で樹木位置と情報を確認できる | 公園群、道路、自治体管理 |
まずは表計算ソフトで作成し、樹木本数が増えた段階で地図システムへ移行する方法もあります。
最初に管理範囲を決める
- 一つの公園だけを対象にする
- 複数の公園をまとめて管理する
- 道路樹木を路線ごとに管理する
- 学校や公共施設ごとに管理する
- 高木だけを対象にする
- 高木・中木・低木をすべて対象にする
管理対象が曖昧だと、登録漏れや二重登録が起きやすくなります。施設名、区域、対象樹木の範囲を最初に決めます。
樹木ごとに番号を付ける
樹木台帳では、一本ごとに重複しない樹木番号を付けます。
番号の付け方の例
- T-001、T-002、T-003
- A公園-001、A公園-002
- 中央公園-T001
- 路線A-東-001
- 施設番号+樹木番号
樹種名を番号に含めると、植替え時に番号と樹種が一致しなくなることがあります。番号は位置と個体を識別するための固定番号とし、樹種は別の項目で管理すると便利です。
樹木番号の表示方法
- 幹へ樹木札を取り付ける
- 支柱へ番号札を付ける
- 地図上だけで管理する
- QRコード付きの札を使用する
札を幹へ取り付ける場合は、針金や結束材が食い込まないようにします。幹へ直接くぎを打つ方法は、樹木を傷つけるため避けます。
樹木台帳の基本項目
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 樹木番号 | 一本ごとの識別番号 |
| 施設名 | 公園、道路、学校などの名称 |
| 位置 | 区域、園路、緯度経度、地図番号 |
| 樹種 | 和名、必要に応じて学名 |
| 区分 | 高木、中木、低木 |
| 樹高 | 地面から樹冠上部までの高さ |
| 幹周・幹径 | 一定の高さで測定した幹の太さ |
| 樹冠幅 | 枝張りの広さ |
| 樹勢 | 良好、普通、低下、著しく低下 |
| 異常 | 枯れ枝、傾き、空洞、腐朽、病害虫など |
| 点検日 | 直近の確認日 |
| 対応 | 剪定、支柱、診断、伐採など |
| 写真 | 全景、根元、異常箇所 |
| 次回点検 | 予定日または点検間隔 |
位置情報の記録方法
地図番号で管理する
施設図面や公園平面図へ樹木番号を記入し、台帳と対応させます。
- 樹木番号を地図へ記載する
- 園路や施設を目印にする
- 地図の縮尺を統一する
- 植替えや伐採時に更新する
緯度・経度で管理する
スマートフォンやGPS機器で位置情報を記録すると、広い公園や道路樹木を検索しやすくなります。
- 測定機器によって誤差がある
- 樹冠の下では位置がずれることがある
- 地図上の位置と現地の樹木番号を併用する
区域名で管理する
「北側園路」「遊具広場南側」「管理棟東側」など、現場で理解しやすい区域名も記録します。
樹種の記録
- 一般的な和名
- 品種名
- 落葉樹・常緑樹の区分
- 花木・果樹などの用途
- 樹種が不明な場合は仮登録
樹種が不明でも、台帳作成を止める必要はありません。「不明樹種A」などで仮登録し、葉、樹皮、花、果実の写真を残して後から確認します。
樹高の測り方
樹高は、地面から樹冠上部までの高さです。
- 目測
- 測高器
- レーザー距離計
- 写真や地図を利用した推定
台帳では、測定方法も記録すると、過去の数値と比較しやすくなります。
樹高区分で記録する方法
- 3m未満
- 3m以上5m未満
- 5m以上10m未満
- 10m以上15m未満
- 15m以上
正確な測定が難しい場合は、区分管理から始めても構いません。
幹周・幹径の測り方
幹周は、一定の高さで幹の周囲を測定します。測定位置を統一し、台帳に記録します。
- 測定高さを統一する
- 巻尺を水平に当てる
- こぶや枝分かれを避ける
- 複数幹の場合は測定方法を記録する
- 根張り部分では測定しない
幹径で管理する場合は、幹周から換算する方法もありますが、台帳内では幹周と幹径を混在させない方が分かりやすくなります。
樹冠幅の記録
樹冠幅は、枝が広がっている範囲です。
- 東西方向
- 南北方向
- 園路側への張り出し
- 建物側への張り出し
樹冠が大きく偏っている場合は、数値だけでなく「園路側へ偏り」などの備考も残します。
樹勢の評価
| 区分 | 判断の目安 |
|---|---|
| 良好 | 葉量が十分で、新しい枝の伸びも良好 |
| 普通 | 大きな異常はないが、部分的な枝枯れなどがある |
| 低下 | 葉量減少、枝先枯れ、葉の小型化が見られる |
| 著しく低下 | 樹冠の広い範囲が枯れ、回復が難しい状態 |
| 枯死 | 生育期にも芽吹きがなく、樹木全体が枯れている |
樹勢の評価基準を施設内で統一すると、担当者が変わっても比較しやすくなります。
異常項目の記録
樹冠・枝
- 枯れ枝
- 折れ枝
- 掛かり枝
- 枝の裂け
- 樹冠の偏り
- 電線や建物への接触
幹
- 傾き
- 亀裂
- 空洞
- 腐朽
- 樹皮の剥離
- キノコ
- 虫孔や木くず
根元・地面
- 根元の腐朽
- 根の露出
- 根切り
- 地面の亀裂
- 根鉢の浮き
- 排水不良
- 舗装の持ち上がり
異常の位置を具体的に記録する
「枝に異常あり」だけでは、次の担当者が場所を特定できません。
- 園路側の高さ約6m
- 南西側の大枝付け根
- 幹の地上約1m部分
- 根元の北側
- 遊具側へ張り出した枝
方向、高さ、施設との位置関係を記録すると、再点検しやすくなります。
危険度と対応優先度
| 優先度 | 状態 | 対応 |
|---|---|---|
| 緊急 | 倒木、急な傾き、根元の浮き、落下寸前の大枝 | 即時規制、緊急対応 |
| 高い | 太い枯れ枝、大きな亀裂、著しい腐朽 | 早急な専門診断・剪定・伐採 |
| 中程度 | 部分的な枝枯れ、軽度の傾き、支柱不良 | 計画的に処置 |
| 低い | 軽い枝張り、少量の枯れ枝 | 通常管理で対応 |
| 経過観察 | 異常の進行が不明 | 写真比較と再点検 |
危険度は、樹木の状態だけでなく、倒れた場合に遊具、園路、道路、建物へ届くかを含めて決めます。
点検履歴の作り方
樹木の基本情報と点検履歴は、別の表に分けると管理しやすくなります。
基本情報表
- 樹木番号
- 位置
- 樹種
- 樹高
- 幹周
- 植栽年
点検履歴表
- 樹木番号
- 点検日
- 点検者
- 異常内容
- 危険度
- 対応内容
- 次回点検日
一本の樹木に対して複数の点検履歴を残すことで、状態の変化を追跡できます。
剪定・作業履歴の記録
- 作業日
- 作業内容
- 剪定目的
- 除去した枝の種類
- 施工業者
- 使用した機材
- 作業前後の写真
- 次回確認事項
「剪定済み」だけでなく、枯れ枝除去、透かし剪定、切り戻し、危険枝除去など、具体的な内容を記録します。
病害虫履歴の記録
- 症状を確認した日
- 被害箇所
- 病害虫名
- 被害程度
- 処置内容
- 薬剤を使用した場合の記録
- 被害の拡大状況
- 再確認日
病害虫名が不明な場合は、葉、幹、虫孔、木くずなどの写真を残します。
写真の管理方法
撮影する基本写真
- 樹木全体
- 根元
- 幹
- 樹冠
- 異常箇所
- 周辺施設との位置関係
ファイル名の例
- T-001_2026-07-19_全景.jpg
- T-001_2026-07-19_根元.jpg
- T-001_2026-07-19_幹亀裂.jpg
- T-001_2026-07-19_剪定後.jpg
樹木番号、撮影日、撮影内容をファイル名へ含めると、後から検索しやすくなります。
同じ方向から定期撮影する
毎回異なる方向から撮影すると、傾きや樹冠の変化を比較しにくくなります。
- 園路側から撮影する
- 北側から撮影する
- 同じ距離から撮影する
- 全景と異常箇所を分けて撮影する
地図と台帳をひも付ける
- 施設平面図を用意する
- 樹木位置へ番号を記入する
- 台帳へ同じ番号を登録する
- 区域ごとに色や記号を分ける
- 伐採・植替え時に地図も更新する
地図と台帳の番号が一致していないと、現地で別の樹木を点検するおそれがあります。
表計算ソフトでの構成例
シート1:樹木一覧
- 樹木番号
- 施設名
- 区域
- 樹種
- 高木・中木・低木
- 樹高
- 幹周
- 樹勢
- 現在の危険度
- 最終点検日
- 次回点検日
シート2:点検履歴
- 点検日
- 樹木番号
- 点検者
- 異常箇所
- 危険度
- 応急対応
- 今後の対応
シート3:作業履歴
- 作業日
- 樹木番号
- 作業内容
- 業者
- 費用
- 写真ファイル名
シート4:樹種一覧
- 樹種名
- 落葉・常緑
- 剪定適期
- 主な病害虫
- 管理上の注意
入力方法を統一する
同じ内容を「良好」「問題なし」「異常なし」など複数の表現で入力すると、検索や集計が難しくなります。
- 選択式の項目を作る
- 危険度の表現を統一する
- 日付形式を統一する
- 樹種名の表記を統一する
- 空欄と未確認を区別する
選択肢の例
- 樹勢:良好・普通・低下・著しく低下・枯死
- 危険度:緊急・高・中・低・経過観察
- 対応:剪定・診断・伐採・支柱・経過観察
- 点検状況:実施済み・未実施・再点検
台帳作成の手順
- 管理対象と区域を決める
- 地図や施設平面図を用意する
- 現地で樹木へ番号を付ける
- 位置と樹種を登録する
- 樹高、幹周、樹冠幅を記録する
- 樹勢と異常を確認する
- 全景と異常箇所を撮影する
- 危険度と対応優先度を決める
- 次回点検日を設定する
- 点検・作業のたびに更新する
初回調査で最低限記録する項目
樹木本数が多い場合は、最初からすべてを詳しく調査するのが難しいことがあります。
- 樹木番号
- 位置
- 樹種または仮の樹種名
- 高木・中木・低木の区分
- 目立つ異常
- 危険度
- 全景写真
危険度の高い樹木から詳細調査を追加します。
点検頻度の決め方
| 樹木の状態・場所 | 点検の考え方 |
|---|---|
| 主要園路・遊具周辺 | 利用頻度が高いため重点的に確認 |
| 高木・老木 | 定期点検と気象後点検を行う |
| 経過観察中 | 状態に応じて短い間隔で再確認 |
| 異常のない低木 | 通常の植栽管理時に確認 |
| 台風・大雪後 | 通常日程を待たず臨時点検 |
点検頻度は、樹木の大きさ、状態、周辺利用、過去の異常に応じて変えます。
更新のタイミング
- 定期点検を実施したとき
- 剪定・伐採・植替えを行ったとき
- 病害虫を確認したとき
- 台風・強風・大雪後
- 事故や苦情が発生したとき
- 工事で根や枝へ影響が出たとき
- 支柱や保護材を交換したとき
伐採・撤去した樹木の扱い
伐採した樹木の記録を削除すると、過去の経緯が分からなくなります。
- 状態を「伐採済み」に変更する
- 伐採日を記録する
- 伐採理由を記録する
- 伐採前後の写真を保存する
- 植替えた場合は新しい樹木番号を付ける
同じ場所へ新しい樹木を植えた場合でも、過去の樹木と区別するため、新しい番号を付ける方法が安全です。
台帳の記入例
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 樹木番号 | T-025 |
| 施設名 | 中央公園 |
| 位置 | 北側園路・ベンチ東側 |
| 樹種 | ケヤキ |
| 区分 | 高木 |
| 樹高 | 約12m |
| 幹周 | 165cm |
| 樹勢 | 普通 |
| 異常 | 園路側の高さ約8mに太い枯れ枝1本。根元の腐朽なし |
| 危険度 | 高い |
| 対応 | 園路を一時規制し、高所作業車による枯れ枝除去を手配 |
| 最終点検日 | 2026年7月19日 |
| 次回点検 | 剪定後に再確認、その後6か月後 |
点検履歴の記入例
| 点検日 | 樹木番号 | 確認内容 | 対応 |
|---|---|---|---|
| 2025年7月10日 | T-025 | 異常なし | 通常管理を継続 |
| 2026年3月15日 | T-025 | 園路側の枝先に部分的な枯れ | 経過観察 |
| 2026年7月19日 | T-025 | 枯れ枝が拡大し、園路上へ張り出し | 危険度を高へ変更し、剪定を手配 |
樹木台帳を使った年間管理
- 次回点検日が近い樹木を抽出する
- 危険度が高い樹木を一覧化する
- 剪定予定を季節ごとに整理する
- 台風前に重点樹木を確認する
- 年間の剪定・伐採本数を集計する
- 作業費用を樹木別・施設別に集計する
引き継ぎに使える台帳にする
担当者だけが分かる略語や記憶に頼った管理は避けます。
- 入力基準を文書化する
- 写真の保存場所を統一する
- 地図の最新版を明確にする
- 危険度の判断基準を共有する
- 作業業者の報告書を台帳とひも付ける
- 定期的にバックアップする
個人情報・公開情報への注意
樹木台帳に隣接住民の氏名、電話番号、苦情内容などを記録する場合は、閲覧権限や保管方法に注意します。
- 公開用台帳と内部管理用台帳を分ける
- 個人情報を必要以上に記録しない
- アクセス権限を設定する
- 外部へ送る前に個人情報を確認する
バックアップの方法
- 定期的に別の保存先へ複製する
- 月ごと・年度ごとに保存する
- 写真フォルダも同時にバックアップする
- 上書き前のデータを残す
- 紙台帳は水濡れや紛失を防ぐ
台帳データだけでなく、地図と写真も一緒に保存します。
樹木台帳でよくある失敗
- 樹木番号が重複する
- 地図と台帳の番号が一致しない
- 樹種名の表記が統一されていない
- 点検日を更新し忘れる
- 異常箇所が具体的に書かれていない
- 写真の樹木番号が分からない
- 剪定後の記録が残っていない
- 伐採した樹木の情報を削除する
- 次回点検日が設定されていない
- 担当者以外が使えない形式になっている
樹木台帳作成チェックリスト
- 管理対象と区域を決めたか
- 樹木ごとに重複しない番号を付けたか
- 地図と台帳をひも付けたか
- 位置と樹種を記録したか
- 樹高、幹周、樹冠幅を記録したか
- 樹勢と異常を評価したか
- 危険度と対応優先度を記録したか
- 全景と異常箇所を撮影したか
- 点検履歴と作業履歴を分けたか
- 入力方法と用語を統一したか
- 次回点検日を設定したか
- 伐採・植替え時の更新方法を決めたか
- バックアップ方法を決めたか
- 担当者が変わっても使える形式か
まとめ
樹木台帳は、樹木番号、位置、樹種、大きさ、樹勢、異常、点検履歴、作業履歴を一本ごとに整理する管理資料です。
最初からすべてを詳しく記録するのが難しい場合は、樹木番号、位置、樹種、危険度、写真から始め、点検のたびに情報を追加します。
地図と台帳をひも付け、入力方法を統一し、剪定や台風後の点検に合わせて更新することで、樹木管理の抜けや対応の遅れを防げます。
樹木台帳は、現場の記録であると同時に、年間管理計画、予算作成、事故防止、担当者間の引き継ぎに役立つ重要な資料です。
