informationpark

熱中症対策と夏季作業

夏季の草刈り、剪定、清掃、植栽管理、道路・公園管理などの屋外作業では、熱中症対策が欠かせません。

熱中症は、気温が高い日だけに起こるものではありません。湿度が高い日、風が弱い場所、照り返しの強い舗装面、防護服や保護具を着用する作業、梅雨明け直後などでも危険が高まります。

「少し休めば大丈夫」と作業を続けた結果、急速に症状が悪化することもあります。作業者本人の注意だけに任せず、作業時間、休憩、飲料、連絡体制、救急対応まで事前に決めておくことが重要です。

緊急時:呼びかけへの反応がおかしい、意識がない、けいれんがある、自力で水を飲めない場合は、直ちに救急車を呼び、涼しい場所へ移して体を冷やします。無理に水を飲ませてはいけません。

熱中症とは

熱中症とは、高温・多湿な環境などによって体温調節がうまく働かなくなり、体内に熱がこもることで起こる健康障害です。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 大量の発汗
  • 筋肉痛・こむら返り
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 強いだるさ
  • 判断力の低下
  • 意識障害
  • けいれん

屋外だけでなく、風通しの悪い倉庫、休憩所、車内、機械室などでも起こる可能性があります。

夏季作業で熱中症が起こりやすい理由

  • 直射日光を受ける
  • 地面や舗装面からの照り返しがある
  • 刈払機や機械を持って動くため運動量が多い
  • 長袖、ヘルメット、防護具で熱がこもる
  • 騒音や作業への集中で体調変化に気づきにくい
  • 水分補給のために作業を止めにくい
  • 一人作業では異常の発見が遅れる
重要な考え方:熱中症対策は「水を飲む」だけでは不十分です。作業時間の変更、暑さ指数の確認、休憩、体調確認、冷却、連絡体制を組み合わせます。

気温だけで判断しない

熱中症リスクは、気温だけでなく、湿度、日射、風、作業強度、服装などによって変化します。

そのため、夏季作業では暑さ指数(WBGT)を確認する方法が有効です。

暑さ指数(WBGT)とは

暑さ指数(WBGT)は、気温、湿度、日射・輻射熱などを考慮して、熱中症の危険度を示す指標です。

暑さ指数 一般的な危険度 作業上の考え方
25未満 注意 重作業では水分補給と休憩を行う
25以上28未満 警戒 積極的に休憩を取り、作業者を観察する
28以上31未満 厳重警戒 重い作業を減らし、時間短縮・中断を検討する
31以上 危険 屋外の重作業は原則として延期・中止を検討する

上記は一般的な目安です。実際の判断は、作業内容、服装、日陰の有無、作業者の体調なども含めて行います。

作業場所で暑さ指数を測る

気象情報の暑さ指数と、実際の作業場所の環境は一致しないことがあります。

  • 黒球付きのWBGT測定器を使う
  • 作業者がいる高さで測る
  • 日向と日陰を分けて確認する
  • 舗装面、斜面、建物際などでも測る
  • 時間の経過に応じて再測定する
  • 測定値と作業判断を記録する

特に、アスファルト、コンクリート、金属屋根の近くでは、気象台の観測値より厳しい環境になる場合があります。

熱中症警戒アラートを確認する

  • 作業前日に翌日の予報を確認する
  • 当日の朝に最新情報を確認する
  • 発表時は作業時間の変更を検討する
  • 緊急性の低い作業は延期する
  • 現場のWBGTも併せて確認する

アラートが出ていない場合でも、局地的に暑くなる場所や重作業では熱中症が起こる可能性があります。

2025年6月から強化された職場の熱中症対策

2025年6月1日から、職場における熱中症の重篤化を防ぐため、一定の暑熱環境下で行う作業について、事業者には報告体制や対応手順の整備・周知が求められています。

対象の目安は、暑さ指数28以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業です。

  • 本人が症状を感じた場合の報告先を決める
  • 異常のある作業者を見つけた人の報告先を決める
  • 作業離脱、身体冷却、医療機関への搬送手順を決める
  • 緊急連絡先を作業者へ周知する
  • 一人作業者の確認方法を決める
管理者の注意:連絡先を掲示するだけではなく、誰が作業を止め、誰が救急要請し、誰が現場案内を行うかまで具体的に決めます。

作業前日の準備

  • 翌日の天気と暑さ指数を確認する
  • 作業時間を早朝へ変更する
  • 作業量を減らす
  • 予備日を設定する
  • 飲料、氷、冷却材を準備する
  • 日陰の休憩場所を確保する
  • 緊急連絡先を確認する
  • 十分な睡眠を取るよう周知する

作業当日の体調確認

作業開始前に、本人の申告と周囲からの確認を行います。

  • 睡眠不足がないか
  • 発熱や体調不良がないか
  • 下痢や嘔吐がないか
  • 二日酔いではないか
  • 朝食を取ったか
  • 持病や服薬による注意がないか
  • 前日の疲労が残っていないか

体調が悪い場合は、軽作業への変更、作業時間の短縮、休業などを検討します。

暑さに慣れていない時期に注意する

梅雨明け直後、連休明け、長期休暇明け、新しく屋外作業を始めた人は、体が暑さに慣れていないため、熱中症リスクが高くなります。

  • 最初の数日は作業時間を短くする
  • 軽い作業から始める
  • 休憩回数を増やす
  • 経験者と組ませる
  • 体調確認を頻繁に行う

作業時間を変更する

  • 早朝から作業する
  • 昼前に一度終了する
  • 正午前後の作業を避ける
  • 夕方へ作業を分ける
  • 日向の作業を先に終える
  • 日陰の区域へ移動する

「予定どおり終わらせること」より、「危険な時間帯を避けること」を優先します。

作業量を減らす

  • 広い区域を複数日に分ける
  • 緊急性の高い場所だけ作業する
  • 機械化できる作業は機械へ切り替える
  • 運搬作業を別の時間帯に行う
  • 重量物を小分けにする
  • 交代要員を配置する

休憩場所を確保する

休憩場所は、作業場所の近くで、直射日光と高温を避けられる場所に設けます。

  • エアコンのある室内
  • 風通しのよい日陰
  • テントや簡易休憩所
  • 送風機を設置した場所
  • 冷たい飲料を置ける場所
  • 横になれる場所
車内休憩の注意:エンジンやエアコンを止めた車内は急速に高温になります。閉め切った車内を休憩場所にしてはいけません。

休憩は時間を決めて取る

疲れた人だけが休む方式では、本人が無理をして休憩を遅らせることがあります。

  • 作業開始前に休憩時刻を決める
  • 暑さ指数が高い日は間隔を短くする
  • 全員で一斉に休む
  • 休憩時に体調を確認する
  • 休憩時間を作業記録へ残す

作業内容や環境に応じて、短時間の休憩を繰り返し入れます。

水分補給の基本

  • のどが渇く前に飲む
  • 作業開始前にも水分を取る
  • 休憩ごとに補給する
  • 大量の発汗時は塩分も補う
  • 飲料を作業場所の近くへ置く
  • 本人任せにせず、補給を声かけする

短時間に一度に大量に飲むのではなく、こまめに補給します。

飲料の選び方

  • 麦茶などの飲料
  • スポーツドリンク
  • 経口補水液

大量に汗をかく作業では、水分だけでなく塩分補給も必要になることがあります。

経口補水液は、脱水時の補給に適していますが、日常的な水分補給として大量に飲み続けるものではありません。腎臓や心臓などの治療中で、水分・塩分制限がある人は医師の指示に従います。

避けたい飲み物

  • アルコール
  • 極端に糖分の多い飲料の大量摂取
  • カフェインを多く含む飲料だけに頼ること

アルコールは水分補給にならず、翌日の脱水や体調不良につながります。

服装の基本

  • 通気性・吸汗速乾性のある作業着
  • 直射日光を受けにくい長袖
  • 明るい色の服
  • 通気性のあるヘルメット
  • 首元を覆う日よけ
  • 体格に合った作業着

袖や裾が機械へ巻き込まれない服装にします。

空調服・ファン付き作業着

ファン付き作業着は、衣服内の風通しを改善しますが、それだけで熱中症を完全に防げるわけではありません。

  • ファンとバッテリーを点検する
  • 吸気口を塞がない
  • 粉じんや薬剤を扱う場所での使用条件を確認する
  • 雨天や水作業では感電・故障に注意する
  • 休憩と水分補給を省略しない

冷却用品の活用

  • 保冷剤
  • 冷却ベスト
  • ネッククーラー
  • 冷たいタオル
  • 氷のう
  • 送風機・ミスト

首の周り、脇の下、足の付け根など、太い血管が通る場所を冷やすと、体を冷却しやすくなります。

ヘルメット着用時の注意

  • 通気孔を塞がない
  • 汗取り材を定期的に交換する
  • 日よけ布を使用する
  • 休憩中は安全な場所で外して冷却する
  • 内部の温度上昇に注意する

草刈り作業での熱中症対策

  • 広い場所を区画に分ける
  • 日向部分を早朝に行う
  • 刈払機を交代で使用する
  • 燃料補給時に休憩も取る
  • 防護具を外せる安全な休憩場所を設ける
  • 刈草運搬を別の時間帯に行う

刈払機作業は、防護服、ヘルメット、フェイスシールド、すね当てなどで熱がこもりやすいため、一般的な軽作業より短い間隔で休憩します。

剪定・高所作業での注意

  • 高所作業車の作業床は日陰が少ない
  • ヘルメットや安全帯で熱がこもる
  • 体調不良時に安全に降りにくい
  • 地上監視員が体調を確認する
  • 異常時の降下方法を決める

めまいや判断力低下は、墜落・転落事故にもつながります。少しでも異常があれば高所作業を中止します。

道路・舗装面での作業

  • 照り返しを考慮する
  • 路面温度が高い時間を避ける
  • 交通誘導員にも飲料と休憩を用意する
  • 車両の排熱を避ける
  • 日陰のない場所にはテントを設ける

一人作業を避ける

熱中症は本人の判断力が低下するため、自分で助けを求められなくなることがあります。

  • 原則として複数人で作業する
  • 定時連絡を行う
  • 位置情報と作業場所を共有する
  • 連絡がない場合の確認手順を決める
  • 携帯電話や無線を持たせる
  • 救急車を案内できる住所を確認する

お互いの体調を確認する

  • 返事が遅くなっていないか
  • 会話がかみ合っているか
  • 歩き方が不安定ではないか
  • 顔色が悪くないか
  • 急に汗が出なくなっていないか
  • 作業ミスが増えていないか

本人が「大丈夫」と答えても、反応や動作に異常がある場合は作業を止めます。

熱中症の初期症状

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 大量の発汗
  • 筋肉痛
  • こむら返り
  • 生あくび
  • 頭痛
  • 吐き気
  • 強い疲労感
初期症状の段階で:作業を直ちに中止し、涼しい場所へ移動して体を冷やします。「あと少しだけ作業する」は避けます。

重症化を疑う症状

  • 呼びかけへの反応がおかしい
  • 会話が成立しない
  • まっすぐ歩けない
  • 自力で水を飲めない
  • 意識がない
  • けいれん
  • 体が非常に熱い
  • 何度も吐く

これらの症状がある場合は、直ちに救急要請します。

熱中症が疑われるときの応急処置

  1. 作業を止める
  2. 涼しい場所へ移動させる
  3. 衣服や保護具を緩める
  4. 首、脇の下、足の付け根などを冷やす
  5. 意識と呼吸を確認する
  6. 自力で飲める場合のみ水分・塩分を補給する
  7. 症状が改善しない場合は医療機関へ搬送する

直ちに救急車を呼ぶ場合

  • 意識がない
  • 呼びかけへの反応がおかしい
  • 自力で水が飲めない
  • けいれんがある
  • 歩けない
  • 急速に悪化している
水分補給の注意:意識がもうろうとしている人、自力で飲めない人、吐いている人へ無理に水を飲ませると、誤嚥する危険があります。

救急車を待つ間の冷却

  • エアコンの効いた室内へ移す
  • 衣服を緩める
  • 体へ水をかけて風を当てる
  • 首、脇の下、足の付け根を冷やす
  • 可能な限り全身を冷却する
  • 呼吸と意識を継続して確認する

救急要請時に伝える内容

  • 熱中症の疑いがあること
  • 意識の状態
  • 呼吸の状態
  • 作業場所の住所
  • 現場への入り方
  • 発症した時刻
  • 行った応急処置
  • 持病や服薬が分かればその内容

回復したように見えても注意する

休憩や水分補給で症状が軽くなっても、すぐに作業へ戻すべきではありません。

  • 一人にしない
  • 再び症状が出ないか確認する
  • 当日の作業復帰を慎重に判断する
  • 帰宅時も付き添いや送迎を検討する
  • 必要に応じて医療機関を受診する

作業中止・延期の判断

  • 暑さ指数が危険な水準になった
  • 熱中症警戒アラートが発表された
  • 日陰や休憩場所を確保できない
  • 飲料や冷却用品が不足している
  • 交代要員がいない
  • 作業者に体調不良者が多い
  • 複数人へ初期症状が出た
  • 一人作業になる

安全対策を確保できない場合は、作業の必要性にかかわらず中止・延期します。

管理者が準備する物

  • WBGT測定器
  • 飲料水
  • 塩分補給品
  • 経口補水液
  • 氷・保冷剤
  • 冷却タオル
  • 簡易テント
  • 送風機
  • 救急箱
  • 緊急連絡先一覧
  • 作業者名簿

緊急連絡体制の例

役割 担当内容
現場責任者 作業中止の判断、全体指示
救急要請担当 119番通報、症状説明
冷却担当 日陰への移動、衣服調整、身体冷却
誘導担当 救急車を入口から現場へ案内
連絡担当 会社、施設管理者、家族などへ連絡

夏季作業計画の例

時間 作業内容 熱中症対策
6時30分 集合・体調確認 WBGT確認、水分補給、作業分担
7時00分~8時00分 日向の草刈り 複数人作業、見守り
8時00分 休憩 冷房または日陰で水分・塩分補給
8時15分~9時15分 日陰部分の作業 交代作業、状態確認
9時15分 休憩・WBGT再確認 作業継続の可否を判断
10時30分 重作業終了 片付けは短時間で実施

上記は一例です。暑さ指数や作業内容に応じて、さらに短い間隔で休憩します。

作業記録に残す項目

  • 作業日・時間
  • 作業場所
  • 作業内容
  • 気温・湿度・WBGT
  • 作業者名
  • 体調確認結果
  • 休憩時刻
  • 水分補給状況
  • 作業中止・変更の判断
  • 体調不良者と対応内容

熱中症対策の記録例

項目 記入例
作業日 2026年7月22日
作業場所 中央公園 南側法面
開始時WBGT 27.2
作業内容 刈払機による草刈り
対策 2人1組、30分ごとに休憩、冷水と塩分補給品を配置
変更 9時30分にWBGT29.1となったため、法面作業を中止
体調不良 なし

熱中症対策でよくある失敗

  • 気温だけを見て判断する
  • のどが渇いてから水を飲む
  • 本人が休みたいと言うまで休憩させない
  • 体調不良者を一人で休ませる
  • 意識が悪い人へ水を飲ませる
  • 昼の時間帯も予定どおり作業する
  • ファン付き作業着だけで十分だと考える
  • 一人作業の連絡方法を決めていない
  • 救急車を案内する住所を確認していない
  • 症状が軽くなった直後に作業へ戻す

作業前チェックリスト

  • 天気と暑さ指数を確認したか
  • 現場でWBGTを測定したか
  • 熱中症警戒アラートを確認したか
  • 作業者の体調を確認したか
  • 一人作業になっていないか
  • 休憩場所を確保したか
  • 飲料・塩分・冷却材を準備したか
  • 休憩時刻を決めたか
  • 緊急連絡先を周知したか
  • 救急車の進入経路を確認したか
  • 作業中止基準を共有したか

作業中チェックリスト

  • 定期的に休憩しているか
  • こまめに水分を取っているか
  • 作業者同士で声をかけているか
  • 反応や歩き方に異常がないか
  • WBGTを再確認したか
  • 無理に予定を進めていないか
  • 日陰の作業へ切り替えられないか

体調不良発生時チェックリスト

  • 直ちに作業を止めたか
  • 涼しい場所へ移したか
  • 衣服や保護具を緩めたか
  • 首、脇、足の付け根を冷やしたか
  • 意識と呼吸を確認したか
  • 自力で水を飲める状態か確認したか
  • 必要な場合は119番通報したか
  • 一人にしていないか
  • 発生状況を記録したか

まとめ

熱中症対策では、気温だけでなく暑さ指数、湿度、日射、作業強度、服装、体調を総合的に確認します。

夏季作業は早朝へ変更し、作業量を減らし、休憩と水分・塩分補給を計画的に行います。暑さに慣れていない人、一人作業者、体調不良者には特に注意が必要です。

めまい、頭痛、吐き気、反応の遅れなどが見られたら、直ちに作業を中止して涼しい場所で冷却します。意識がない、自力で水を飲めない、反応がおかしい場合は、すぐに救急車を呼びます。

管理者は、報告先、作業離脱、身体冷却、救急要請、搬送までの手順を事前に決め、作業者全員へ周知することが重要です。