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心拍測定の考察例|安静時・運動後・回復率・計算方法・誤差原因

心拍測定実験では、一定時間内の脈拍数を数え、1分間あたりの心拍数へ換算します。安静時、運動直後、回復中などの心拍数を比較することで、運動による循環器系の応答を調べることができます。

心臓は、全身へ血液を送り出すポンプとして働いています。運動を行うと、筋肉で必要とされる酸素や栄養物質の量が増えるため、心拍数が上昇し、単位時間あたりに送り出される血液量が増加します。

運動終了後は、酸素需要や交感神経活動が徐々に低下し、副交感神経の働きも回復するため、心拍数は安静時の値へ近づきます。運動直後からの低下速度を記録すると、回復過程を評価できます。

この記事では、橈骨動脈の脈拍を触診して心拍数を測定する実験を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。

注意:

この記事は、学校や大学などの生物実験で得られた結果を考察するための学習用参考資料です。掲載している測定値は説明用の例であり、特定の個人の健康状態を示すものではありません。

胸痛、強い息切れ、めまい、吐き気、動悸、体調不良がある場合は運動を行わず、測定を中止してください。既往歴がある場合は、担当教員や医療専門職の指示に従ってください。

他人の頸動脈を強く圧迫したり、左右の頸動脈を同時に押さえたりしないでください。脈拍は橈骨動脈など安全な部位で、軽く触れて測定します。

本実験は診断を目的とするものではありません。安静時に著しく高い、または低い心拍数が続く場合や、不整脈のような乱れを感じる場合は、医療機関へ相談してください。

心拍測定の基本

心拍数とは

心拍数とは、心臓が1分間に拍動する回数です。通常はbpm(beats per minute)で表します。橈骨動脈などで感じる脈拍数は、多くの場合、心拍数とほぼ一致します。

安静時心拍数

座位または仰臥位で数分間安静にした後に測定した心拍数を、安静時心拍数とします。姿勢、緊張、室温、睡眠、カフェイン摂取、直前の運動などによって変化します。

運動と心拍数

運動時には、活動する筋肉へ酸素を多く運ぶ必要があるため、交感神経の働きが高まり、心拍数が上昇します。運動強度が高いほど、一般に心拍数も高くなります。

回復心拍数

運動終了後、心拍数が安静時へ戻っていく過程を回復といいます。運動直後、1分後、2分後、3分後などに測定すると、回復速度を比較できます。

結果に記録する主な項目

  • 被験者番号
  • 測定時の姿勢
  • 安静時間
  • 測定部位
  • 測定方法
  • 計測時間
  • 計測した脈拍数
  • 1分間あたりの心拍数
  • 運動の種類
  • 運動時間
  • 運動回数
  • 運動強度
  • 運動直後の心拍数
  • 運動後1分、2分、3分の心拍数
  • 心拍数増加量
  • 心拍数増加率
  • 1分間回復量
  • 回復率
  • 安静時へ戻るまでの時間
  • 反復測定値
  • 平均値
  • 標準偏差
  • 自覚症状

参考実験条件

項目 参考条件
測定部位 手首の橈骨動脈
安静時間 座位で5分間
脈拍計測時間 15秒間
運動 その場足踏み
運動時間 3分間
運動テンポ 毎分120歩
測定時点 安静時、運動直後、1分後、2分後、3分後、5分後
反復数 3回

参考実験値

安静時から運動後までの心拍数

測定時点 15秒間の脈拍数(回) 心拍数(bpm) 安静時との差(bpm)
安静時 18 72 0
運動直後 34 136 64
運動後1分 28 112 40
運動後2分 24 96 24
運動後3分 21 84 12
運動後5分 19 76 4

運動強度による比較

条件 安静時(bpm) 運動直後(bpm) 増加量(bpm) 増加率(%)
軽い歩行 72 92 20 27.8
速歩 72 116 44 61.1
その場足踏み 72 136 64 88.9
軽い階段昇降 72 152 80 111.1

姿勢による安静時心拍数の比較

姿勢 1回目(bpm) 2回目(bpm) 3回目(bpm) 平均(bpm)
仰臥位 64 66 65 65.0
座位 72 70 72 71.3
立位 80 78 81 79.7

反復測定例

測定条件 1回目(bpm) 2回目(bpm) 3回目(bpm) 平均(bpm)
安静時 72 68 72 70.7
運動直後 136 140 132 136.0
運動後1分 112 116 108 112.0

被験者間の参考比較

被験者 安静時(bpm) 運動直後(bpm) 1分後(bpm) 1分間回復量(bpm)
A 68 132 104 28
B 76 148 124 24
C 72 136 112 24
D 64 124 92 32

計算方法

15秒測定から1分間の心拍数を求める

15秒間に18回の脈拍を数えた場合は、次のようになります。

心拍数(bpm) = 15秒間の脈拍数 × 4

= 18 × 4

= 72 bpm

10秒測定から1分間の心拍数を求める

10秒間に12回の脈拍を数えた場合は、次のようになります。

心拍数(bpm) = 10秒間の脈拍数 × 6

= 12 × 6

= 72 bpm

30秒測定から1分間の心拍数を求める

30秒間に36回の脈拍を数えた場合は、次のようになります。

心拍数(bpm) = 30秒間の脈拍数 × 2

= 36 × 2

= 72 bpm

心拍数増加量

安静時72 bpm、運動直後136 bpmの場合は、次のようになります。

増加量 = 運動直後心拍数 − 安静時心拍数

= 136 − 72

= 64 bpm

心拍数増加率

増加率(%) = (運動直後心拍数 − 安静時心拍数) ÷ 安静時心拍数 × 100

= (136 − 72) ÷ 72 × 100

≈ 88.9%

1分間回復量

運動直後136 bpm、1分後112 bpmの場合は、次のようになります。

1分間回復量 = 運動直後心拍数 − 1分後心拍数

= 136 − 112

= 24 bpm

回復率

運動による増加量64 bpmのうち、1分後までに24 bpm低下した場合は、次のようになります。

回復率(%) = 回復した心拍数 ÷ 運動による増加量 × 100

= 24 ÷ 64 × 100

= 37.5%

安静時との差

運動後3分の心拍数が84 bpm、安静時が72 bpmの場合は、次のようになります。

安静時との差 = 84 − 72

= 12 bpm

平均値

安静時心拍数が72、68、72 bpmであった場合は、次のようになります。

平均心拍数 = (72 + 68 + 72) ÷ 3

≈ 70.7 bpm

標準偏差

s = √{Σ(xi − x̄)2/(n − 1)}

72、68、72 bpmから求めた標準偏差は、約2.31 bpmです。

主な誤差原因

誤差原因 測定への影響 結果に現れやすい傾向 改善方法
脈拍の数え間違い 測定回数が増減する 心拍数を過大・過小評価する 複数回測定し平均を求める
計測時間のずれ 実際の測定時間が一定でない 換算値が不正確になる ストップウォッチを使用する
短時間測定 1回の数え間違いが大きく影響する 換算後の誤差が大きくなる 可能なら30秒または60秒測定する
指で強く押しすぎる 血流を圧迫して脈を感じにくくする 脈拍を少なく数える 軽く触れて測定する
親指で測定する 測定者自身の脈を感じる可能性がある 誤った回数を数える 人差し指と中指を使う
測定位置のずれ 脈が弱く感じられる 数え落としが増える 橈骨動脈の位置を事前に確認する
運動終了から測定までの遅れ 測定前に心拍数が低下する 運動直後心拍数を過小評価する 運動終了後すぐ測定する
運動強度の不統一 各試行で負荷が異なる 心拍数の増加量がばらつく 時間とテンポを統一する
運動動作の違い 使用筋群や負荷が変わる 被験者間比較が不正確になる 動作方法をそろえる
安静時間不足 開始時心拍数が高いままになる 安静時値を過大評価する 測定前に十分休息する
姿勢の違い 循環調節が変化する 安静時心拍数が変わる 測定姿勢を統一する
会話や緊張 交感神経活動が高まる 心拍数が上昇する 静かな環境で測定する
カフェイン摂取 心拍数へ影響する場合がある 安静時値が高くなる可能性がある 測定前の条件を記録・統一する
睡眠不足や疲労 自律神経状態が変化する 個人内でも値が変動する 体調を記録する
室温の違い 体温調節や血流が変化する 測定日によって値が異なる 同じ環境で測定する
不整な脈を短時間換算する 代表性の低い値になる 大きなばらつきが生じる 60秒間測定し、異常時は中止する
測定者の違い 触れ方や判定が異なる 測定者間差が生じる 測定方法を練習し統一する
回復測定時刻のずれ 1分後などの時点が不正確になる 回復速度の比較が乱れる 運動終了時から連続して計時する

運動によって心拍数が上昇する理由

運動時には筋肉で酸素と栄養物質の消費が増え、二酸化炭素や代謝産物の除去も必要になります。そのため、交感神経の働きによって心拍数と心収縮力が増加し、筋肉へ送られる血液量が増えます。

運動後に心拍数が低下する理由

運動を終えると筋肉の酸素需要が減少し、交感神経活動が低下します。同時に副交感神経の働きが回復するため、心拍数は徐々に安静時へ近づきます。

姿勢によって心拍数が変化する理由

立位では重力によって血液が下半身へ移動しやすくなります。静脈還流と血圧を維持するため、自律神経反射によって心拍数がやや増加します。仰臥位ではこの影響が小さいため、心拍数が低くなる傾向があります。

短時間測定で誤差が大きくなる理由

15秒測定では1回の数え間違いが1分換算で4 bpmの誤差になります。10秒測定では1回の誤差が6 bpmに拡大するため、短時間測定ほど換算誤差が大きくなります。

結果の書き方の例

座位で5分間安静にした後、橈骨動脈の脈拍を15秒間測定し、1分間あたりの心拍数へ換算した。その後、毎分120歩のその場足踏みを3分間行い、運動直後から5分後まで心拍数を測定した。

安静時の脈拍数は15秒間に18回であり、心拍数は72 bpmであった。運動直後は34回となり、136 bpmまで上昇した。

運動による心拍数増加量は64 bpm、増加率は88.9%であった。

運動後1分では112 bpm、2分では96 bpm、3分では84 bpm、5分では76 bpmとなり、時間経過とともに安静時の値へ近づいた。

運動直後から1分後までの回復量は24 bpmであり、運動による増加分に対する回復率は37.5%であった。

考察につなげるポイント

  • 安静時と運動直後で心拍数はどの程度変化したか。
  • 運動強度が高いほど心拍数は高くなったか。
  • 運動後の心拍数はどのように回復したか。
  • 運動直後から1分後までの低下量はどの程度だったか。
  • なぜ運動時に心拍数が上昇するのか。
  • なぜ運動終了後すぐには安静時へ戻らないのか。
  • 姿勢によって安静時心拍数が変化したのはなぜか。
  • 個人差が生じる要因は何か。
  • 15秒測定と60秒測定では誤差がどう違うか。
  • 運動終了から測定開始までの遅れは結果へどう影響するか。
  • 脈拍測定と心拍計の測定値が異なる場合、何が考えられるか。
  • 測定値だけで健康状態を断定できないのはなぜか。

考察例

本実験では、安静時、運動直後、および運動後の回復過程における心拍数を測定し、運動が循環器系へ与える影響を調べた。

安静時の心拍数は72 bpmであったが、3分間のその場足踏み後には136 bpmまで上昇した。増加量は64 bpm、増加率は88.9%であった。

運動時には、活動する骨格筋で酸素と栄養物質の需要が増加する。また、筋肉で生じた二酸化炭素や代謝産物を速やかに除去する必要がある。

そのため、交感神経の働きが高まり、心拍数と心収縮力が増加することで、単位時間あたりに全身へ送り出される血液量が増えたと考えられる。

運動強度を比較すると、軽い歩行、速歩、その場足踏み、階段昇降の順に運動直後の心拍数が高くなった。

運動強度が高くなるほど筋肉の酸素消費量が増え、それに対応して心拍出量を増加させる必要があるため、心拍数も高くなったと考えられる。

運動後の心拍数は、1分後112 bpm、2分後96 bpm、3分後84 bpm、5分後76 bpmとなり、時間経過とともに安静時の72 bpmへ近づいた。

運動終了後は筋肉の酸素需要が減少し、交感神経活動も徐々に低下する。また、副交感神経の働きが回復するため、心拍数が低下したと考えられる。

ただし、運動終了直後には心拍数がすぐ安静時へ戻らなかった。運動後も体温調節、乳酸などの代謝産物の処理、酸素供給、筋肉や呼吸器の回復が続くため、一定時間は循環量を高く保つ必要があると考えられる。

運動直後から1分後までの心拍数低下量は24 bpmであり、運動による増加分64 bpmに対する回復率は37.5%であった。

回復量を求めることで、単に運動直後の心拍数を比較するだけでなく、運動後に心拍数がどの程度速く低下したかを数値で示すことができた。

姿勢による比較では、仰臥位65.0 bpm、座位71.3 bpm、立位79.7 bpmとなり、立位で最も高かった。

立位では重力によって血液が下肢へ移動し、心臓へ戻る静脈還流量が一時的に減少しやすい。血圧を維持するために自律神経反射が働き、心拍数が上昇したと考えられる。

一方、仰臥位では心臓と下肢の高さの差が小さく、静脈還流が保たれやすいため、心拍数が低くなったと考えられる。

被験者間では、安静時心拍数、運動直後の上昇量、1分間回復量に差が見られた。

この個人差には、年齢、体格、運動習慣、体力、緊張、睡眠、疲労、カフェイン摂取、測定時の体調などが影響した可能性がある。

普段から持久的運動を行っている人では、1回の拍動で送り出せる血液量が多く、同じ運動強度でも心拍数の上昇が小さい場合がある。また、運動後の自律神経の切り替えが速く、心拍数が早く低下する可能性もある。

ただし、今回の実験値だけから体力や健康状態を断定することはできない。運動負荷が全員で完全に同じとは限らず、測定誤差や当日の体調も影響するためである。

測定誤差として、15秒間の脈拍数を4倍して1分間の値へ換算したことが挙げられる。

15秒測定では、1回の数え間違いが換算後には4 bpmの誤差となる。心拍が不規則である場合や、運動直後のように心拍数が急速に変化している場合には、短時間の測定値が1分間全体を正確に代表しない可能性がある。

また、運動終了から脈拍測定開始までに時間がかかると、その間に心拍数が低下するため、運動直後の値を過小評価する。

測定位置がずれて脈を感じにくかった場合や、指で強く押しすぎた場合にも、数え落としが生じる可能性がある。

測定精度を高めるには、運動時間とテンポを統一すること、運動終了直後から速やかに測定すること、同じ姿勢と測定部位を用いること、複数回測定して平均値を求めることが重要である。

さらに、心拍計やパルスセンサーによる連続測定を行えば、運動終了直後の急速な変化をより詳細に記録できる。

以上より、運動によって心拍数は上昇し、運動強度が高いほどその増加量も大きくなることが確認された。また、運動終了後は時間経過とともに心拍数が安静時へ近づき、循環器系が運動状態から安静状態へ回復する様子を観察できた。

運動後に心拍数がほとんど上昇しなかった場合の考察例

運動後に心拍数がほとんど上昇しなかった原因として、運動強度や運動時間が不足していたこと、運動直後の測定開始が遅れたこと、脈拍の数え落とし、換算ミスなどが考えられる。

運動後も心拍数が高いままだった場合の考察例

運動後も心拍数が高いままだった原因として、運動負荷が大きかったこと、安静時間が不足していたこと、暑い環境、緊張、疲労、測定中の会話などが考えられる。体調不良や強い症状がある場合は測定を中止する必要がある。

反復測定のばらつきが大きかった場合の考察例

反復測定のばらつきが大きかった原因として、運動テンポ、運動動作、安静時間、測定姿勢、測定開始時刻、脈拍の触れ方、数え間違いなどが各回で異なっていた可能性がある。

機器測定と触診値が異なった場合の考察例

機器測定と触診値が異なった原因として、触診での数え間違い、短時間換算の誤差、センサーの装着状態、運動による体動、機器の検出遅延などが考えられる。両者の測定時点と測定方法をそろえて比較する必要がある。

まとめ

心拍数は、心臓が1分間に拍動する回数であり、通常はbpmで表します。

運動時には筋肉の酸素需要が増えるため、交感神経の働きによって心拍数が上昇します。運動強度が高いほど、一般に心拍数の増加も大きくなります。

運動終了後は、酸素需要と交感神経活動が低下し、副交感神経の働きが回復するため、心拍数は徐々に安静時へ近づきます。

15秒や10秒の短時間測定では、数え間違いが換算によって拡大します。正確に比較するには、測定時間、姿勢、運動条件、測定開始時刻を統一し、反復測定を行うことが重要です。

考察では、運動強度、酸素需要、自律神経、姿勢、回復速度、個人差、短時間換算、測定開始の遅れなどを、測定値の変化と関連づけて説明します。