電気泳動は、電場中で荷電した分子を移動させ、大きさや電荷などの違いによって分離する方法です。生物実験では、主にDNA、RNA、タンパク質の分離や確認に用いられます。
DNAはリン酸基を持つため負に帯電しており、電圧を加えると正極側へ移動します。アガロースゲル電気泳動では、ゲル内部の網目構造が分子ふるいとして働き、一般に小さいDNA断片ほど速く、遠くまで移動します。
試料とともに既知サイズのDNAラダーを泳動すると、試料バンドの移動距離をラダーと比較して、DNA断片のおおよそのサイズを推定できます。また、バンドの濃さからDNA量を相対的に比較することもできます。
本記事では、教育用DNAまたはPCR産物をアガロースゲル電気泳動で確認する実験を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。
注意:
この記事は、生物実験レポートを作成するための学習用参考資料です。掲載している条件、数値、泳動像は説明用の参考例であり、実際の測定結果ではありません。
実験には、安全性が確認された教育用DNA、既知のPCR産物、または担当教員が準備した試料を使用してください。人体由来試料、臨床試料、病原体由来試料などを独自に扱わないでください。
電気泳動装置は電圧を使用します。通電中は電源装置、電極、緩衝液、ゲル槽へ触れず、ふたを開ける前に必ず通電を停止してください。
DNA染色試薬やゲル作製用試薬には刺激性を持つものがあります。保護眼鏡、手袋、白衣など、施設で指定された保護具を使用してください。
UV照射装置を用いる場合は、紫外線を直接見たり皮膚へ当てたりしないでください。青色光を用いる装置でも、施設で指定された観察方法に従ってください。
加熱したアガロース溶液は高温になります。容器の破損、突沸、やけどに注意し、ゲル作製は担当者の指示に従ってください。
電気泳動の基本
DNAが正極へ移動する理由
DNAの糖-リン酸骨格には負電荷を持つリン酸基が多数存在します。そのため、電場をかけるとDNAは負極側から正極側へ移動します。
ゲルの役割
アガロースゲルには細かな網目構造があります。DNA断片がこの網目を通過するとき、大きい断片ほど抵抗を受けやすく、小さい断片ほど速く移動します。
DNAラダーの役割
DNAラダーは、長さが既知の複数のDNA断片を含む基準試料です。試料バンドの位置をラダーと比較することで、断片サイズを推定できます。
バンドの見え方
同じ長さのDNA断片がまとまって存在すると、染色後に線状のバンドとして見えます。DNA量が多いほど一般にバンドは濃くなりますが、画像の露光や染色条件によっても濃さは変化します。
スメア
明瞭なバンドではなく、レーン全体に連続したにじみが見える状態をスメアと呼びます。DNAの分解、試料量過多、非特異的増幅、泳動条件不良などが原因となります。
結果に記録する主な項目
- 試料名
- 試料の種類
- DNA濃度
- 試料添加量
- DNAラダーの種類
- ゲル濃度
- 使用した緩衝液
- 印加電圧
- 泳動時間
- 電極の向き
- 色素先端の移動距離
- 各バンドの移動距離
- 各バンドの推定サイズ
- バンド数
- 目的バンドの有無
- 目的バンドの推定サイズ
- バンド強度
- 相対バンド強度
- 相対移動度
- スメアの有無
- 非特異的バンドの有無
- プライマーダイマーの有無
- ウェルからの試料漏れ
- レーンの曲がり
- バンドの拡散
- 泳動方向の異常
- 反復試料の一致
- バンドサイズの平均
- 標準偏差
- 変動係数
参考実験条件
| 項目 | 参考条件 |
|---|---|
| 試料 | 教育用DNAまたはPCR産物 |
| 予想産物サイズ | 500 bp |
| ゲル | アガロースゲル |
| ゲル濃度 | 1.5% |
| 緩衝液 | 教育実験用泳動緩衝液 |
| 印加電圧 | 100 V |
| 泳動時間 | 30分 |
| DNAラダー | 100 bp刻みの基準断片 |
| 反復数 | 各試料3反復 |
参考実験値
DNAラダーの移動距離
| DNAサイズ(bp) | 移動距離(mm) | log10サイズ |
|---|---|---|
| 1500 | 18 | 3.176 |
| 1000 | 24 | 3.000 |
| 700 | 30 | 2.845 |
| 500 | 36 | 2.699 |
| 300 | 44 | 2.477 |
| 200 | 50 | 2.301 |
| 100 | 60 | 2.000 |
試料別の泳動結果
| レーン | 試料 | 主バンド移動距離 | 推定サイズ | 観察結果 |
|---|---|---|---|---|
| M | DNAラダー | 複数 | 既知 | 基準バンドを確認 |
| 1 | 陽性対照 | 36 mm | 約500 bp | 明瞭な単一バンド |
| 2 | 陰性対照 | なし | なし | 明瞭なバンドなし |
| 3 | 試料A | 35 mm | 約520 bp | 明瞭な単一バンド |
| 4 | 試料B | 36 mm | 約500 bp | 弱い単一バンド |
| 5 | 試料C | 36 mm、44 mm | 約500 bp、約300 bp | 非特異的バンドあり |
| 6 | 試料D | 連続 | 推定困難 | スメアあり |
色素先端と相対移動度
| 試料 | DNA移動距離(mm) | 色素先端(mm) | 相対移動度 |
|---|---|---|---|
| 500 bpラダー | 36 | 65 | 0.554 |
| 試料A | 35 | 65 | 0.538 |
| 試料B | 36 | 65 | 0.554 |
| 試料C主バンド | 36 | 65 | 0.554 |
| 試料C副バンド | 44 | 65 | 0.677 |
反復測定による推定サイズ
| 反復 | 移動距離(mm) | 推定サイズ(bp) | 相対バンド強度 |
|---|---|---|---|
| 1 | 35.5 | 512 | 0.94 |
| 2 | 36.0 | 500 | 1.00 |
| 3 | 35.8 | 505 | 0.97 |
| 平均 | 35.8 | 506 | 0.97 |
ゲル濃度による分離の違い
| ゲル濃度 | 小さい断片 | 大きい断片 | 観察結果 |
|---|---|---|---|
| 0.8% | 分離しにくい | 分離しやすい | 大きいDNA向き |
| 1.5% | 比較的良好 | 比較的良好 | 100~1000 bp程度の比較に適する |
| 2.0% | 分離しやすい | 移動が遅い | 小さいDNA向き |
電圧による泳動像の違い
| 条件 | 移動速度 | バンド形状 | 分離状態 |
|---|---|---|---|
| 低電圧 | 遅い | 比較的明瞭 | 良好だが時間がかかる |
| 適正電圧 | 適度 | 明瞭 | 良好 |
| 高電圧 | 速い | 湾曲・拡散しやすい | 分離が悪化する場合がある |
DNA量とバンド強度の参考値
| DNA量(ng) | 相対バンド強度 | 見え方 |
|---|---|---|
| 10 | 0.18 | 非常に薄い |
| 25 | 0.43 | 薄い |
| 50 | 0.82 | 明瞭 |
| 75 | 1.18 | 濃い |
| 100 | 1.49 | 非常に濃い |
計算方法
相対移動度
DNAバンドの移動距離が36 mm、色素先端が65 mmの場合は、次のようになります。
相対移動度 = DNAバンドの移動距離 ÷ 色素先端の移動距離
= 36 ÷ 65
≈ 0.554
移動速度
DNAバンドが30分間で36 mm移動した場合は、次のようになります。
移動速度 = 移動距離 ÷ 泳動時間
= 36 mm ÷ 30 min
= 1.20 mm/min
DNAサイズの対数
500 bpのDNA断片の場合は、次のようになります。
log10(500) ≈ 2.699
アガロースゲル電気泳動では、一定範囲内でDNAサイズの常用対数と移動距離がおおむね直線関係を示します。
検量線からDNAサイズを推定する
参考例として、ラダーから次の近似式が得られたとします。
log10(DNAサイズ) = −0.0265 × 移動距離 + 3.64
試料Aの移動距離が35 mmの場合は、次のようになります。
log10(DNAサイズ) = −0.0265 × 35 + 3.64
= 2.7125
DNAサイズ = 102.7125
≈ 516 bp
理論サイズに対する相対誤差
理論サイズ500 bp、推定サイズ516 bpの場合は、次のようになります。
相対誤差(%) = |推定値 − 理論値| ÷ 理論値 × 100
= |516 − 500| ÷ 500 × 100
= 3.2%
バンド強度からDNA量を推定する
50 ngの基準バンド強度を1.00とし、試料バンド強度が0.80の場合は、単純比例を仮定すると次のようになります。
推定DNA量 = 基準DNA量 × 試料強度 ÷ 基準強度
= 50 ng × 0.80 ÷ 1.00
= 40 ng
推定サイズの平均
平均サイズ = (512 + 500 + 505) ÷ 3
≈ 506 bp
標準偏差
s = √{Σ(xi − x̄)2/(n − 1)}
≈ 6.0 bp
変動係数
変動係数(%) = 標準偏差 ÷ 平均値 × 100
= 6.0 ÷ 506 × 100
≈ 1.2%
バンド強度の増加率
DNA量50 ngの強度0.82に対し、100 ngの強度が1.49の場合は、次のようになります。
増加率(%) = (1.49 − 0.82) ÷ 0.82 × 100
≈ 81.7%
DNA量は2倍ですが、バンド強度は完全に2倍にはなっていません。染色や撮影条件によって、濃いバンドでは直線性が失われる場合があります。
主な誤差原因
| 誤差原因 | 結果への影響 | 改善方法 |
|---|---|---|
| 電極の向きを逆にした | DNAがウェル側またはゲル外へ移動する | ウェルを負極側に置く |
| 通電前の接続ミス | DNAが移動しない | 電極と電源を確認する |
| ゲル濃度が低すぎる | 小さいDNA断片の分離が悪くなる | 目的サイズに合う濃度を選ぶ |
| ゲル濃度が高すぎる | 大きいDNA断片が移動しにくい | 目的サイズに応じて下げる |
| ゲルの厚さが不均一 | レーンごとの移動速度が変わる | 水平な場所でゲルを作る |
| ウェルの破損 | 試料が漏れ、バンドが乱れる | チップでウェル底を傷つけない |
| 試料添加量不足 | バンドが薄くなる | 同じ量を正確に添加する |
| 試料添加量過剰 | バンドが太くなり、スメアが生じる | 適切な量へ減らす |
| ウェル外への添加 | 試料が緩衝液中へ拡散する | チップ先端位置を確認する |
| ローディング色素不足 | 試料がウェルから浮き出る | 指定量を混合する |
| ローディング色素過剰 | 試料組成が変わり、移動へ影響する | 混合比を統一する |
| 緩衝液濃度の誤り | 電流やDNA移動速度が変化する | 指定倍率へ希釈する |
| 劣化した緩衝液 | 泳動状態が不安定になる | 適切に調製・保存した液を使う |
| 緩衝液量不足 | ゲル全体が浸らず、通電が不安定になる | ゲルを覆う量を使用する |
| 電圧が低すぎる | 移動距離が短く、時間がかかる | 装置とゲル長に合う条件を使う |
| 電圧が高すぎる | 発熱、バンド湾曲、分離不良が起こる | 過度な電圧を避ける |
| 泳動時間不足 | バンド間隔が狭く、分離しない | 色素先端を確認して延長する |
| 泳動時間過剰 | 小さい断片がゲル外へ流出する | 適切な位置で停止する |
| ゲルの過熱 | バンドが曲がる、拡散する | 電圧を下げ、緩衝液を確認する |
| DNAの分解 | 低分子側へスメアが生じる | 試料を適切に保存する |
| PCRの非特異的増幅 | 複数バンドが出る | PCR条件を見直す |
| 塩や不純物の混入 | バンドが歪む、移動が不均一になる | DNAを精製する |
| DNAラダー添加ミス | サイズ推定ができない | 基準レーンを確実に設ける |
| ラダーと試料の泳動差 | サイズ推定に誤差が出る | 同じゲル・同じ条件で泳動する |
| 移動距離の測定位置の違い | 推定サイズがずれる | ウェル底からバンド中心まで測る |
| 検量線範囲外での推定 | サイズ誤差が大きくなる | 近いラダーバンド間で推定する |
| 染色不足 | バンドが薄くなる | 指定条件で染色する |
| 染色過剰 | 背景が濃くなる | 染色・洗浄条件を統一する |
| 撮影の露光不足 | 薄いバンドを見落とす | 適切な露光時間にする |
| 画像の飽和 | 濃いバンドの強度差が分からない | 露光を短くして再撮影する |
| 背景補正の違い | バンド強度比較が不正確になる | 同じ解析条件を使う |
結果文の例
教育用PCR産物を1.5%アガロースゲルで電気泳動し、DNAラダーとの比較によって断片サイズを推定した。泳動条件は100 V、30分とした。
DNAラダーでは、1500、1000、700、500、300、200、100 bpに相当する基準バンドが確認された。陽性対照では、500 bpラダーバンドとほぼ同じ位置に明瞭な単一バンドが認められた。
陰性対照には明瞭なバンドは認められなかった。試料Aではウェルから35 mmの位置に主バンドが認められ、検量線から約516 bpと推定された。
試料Bでは約500 bpに弱い単一バンドが認められた。試料Cでは約500 bpの主バンドに加え、約300 bpの副バンドが認められた。試料Dでは明瞭な単一バンドは認められず、レーン全体にスメアが観察された。
試料Aの3反復における推定サイズは512、500、505 bpで、平均506 bp、標準偏差6.0 bp、変動係数1.2%であった。
考察例
本実験では、教育用PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、DNAラダーとの比較から断片サイズを推定した。
DNAはリン酸基によって負に帯電しているため、電場中では正極側へ移動した。アガロースゲル内部には網目構造があるため、小さいDNA断片ほど抵抗を受けにくく、大きい断片より遠くまで移動したと考えられる。
DNAラダーでは、1500 bpから100 bpまでの基準バンドがサイズの小さい順に遠くまで移動した。この結果は、DNA断片サイズと移動距離の間に負の関係があることを示す。
ただし、DNAサイズと移動距離がそのまま直線関係になるわけではなく、一定の範囲ではDNAサイズの常用対数と移動距離がおおむね直線関係を示す。
そのため、ラダーバンドの移動距離を横軸、DNAサイズの常用対数を縦軸として検量線を作成し、試料バンドのサイズを推定した。
試料Aの主バンドは35 mm移動し、検量線から約516 bpと推定された。予想サイズ500 bpに対する相対誤差は3.2%であり、概ね予想されたサイズと一致した。
推定値が理論値と完全に一致しなかった原因として、移動距離の読み取り誤差、バンド幅、ゲル濃度のばらつき、電圧や温度の影響、検量線の近似誤差などが考えられる。
バンドの移動距離は、ウェルのどの位置を基準にするか、バンドの上端・中央・下端のどこを測るかによって変化する。今回はウェル底からバンド中央までを測定したが、この基準をすべてのレーンで統一することが重要である。
陽性対照では約500 bpに明瞭な単一バンドが認められたため、電気泳動とDNA染色は正常に行われたと判断した。
陰性対照に明瞭なバンドが認められなかったことから、試薬や操作中の目的DNA汚染は確認されなかった。
試料Bでは約500 bpに弱いバンドが認められた。バンドが弱かった原因として、DNA量が少なかったこと、試料添加量が不足したこと、PCR増幅効率が低かったこと、染色や撮影条件の影響が考えられる。
試料Cでは、約500 bpの目的バンドに加え、約300 bpの副バンドが認められた。この副バンドは、PCRにおける非特異的増幅産物である可能性が高い。
非特異的バンドの原因として、PCR時のアニーリング温度が低かったこと、プライマー濃度が高かったこと、サイクル数が多すぎたことなどが考えられる。
試料Dではレーン全体にスメアが認められた。スメアの原因として、DNAの分解、試料量過多、複数サイズのDNA断片の混在、塩や不純物の混入、ゲルの過熱などが考えられる。
DNAが分解すると、さまざまな長さの断片が生じるため、単一位置へ集まらず、低分子側へ連続したにじみとして観察される。
また、試料量が多すぎる場合はウェル内やレーン内でDNAが過密となり、太いバンドやスメアが生じる可能性がある。
色素先端が65 mm、500 bpバンドが36 mm移動したため、相対移動度は0.554であった。相対移動度を用いると、泳動時間やゲル長が多少異なる場合でも、色素先端に対するDNAの位置を比較しやすくなる。
ただし、色素とDNAでは電荷や分子構造が異なるため、相対移動度だけでDNAサイズを直接求めることはできない。サイズ推定には同じゲル上のDNAラダーが必要である。
試料Aの3反復における推定サイズは512、500、505 bpで、平均506 bp、標準偏差6.0 bp、変動係数1.2%であった。
変動係数が比較的小さかったことから、移動距離の測定とサイズ推定には一定の再現性があったと考えられる。
一方、バンド強度の比較では、DNA量が増えるほど強度も増加したが、DNA量を2倍にしても強度は正確に2倍にはならなかった。
これは、DNA染色の飽和、撮影装置のダイナミックレンジ、背景補正などの影響により、バンド強度とDNA量の関係が高濃度域で直線から外れたためと考えられる。
したがって、バンド強度からDNA量を推定する場合は、既知量の基準バンドを複数用い、直線性が保たれる範囲で検量線を作成する必要がある。
ゲル濃度も分離結果へ大きく影響する。ゲル濃度が低いと網目が大きくなり、大きいDNA断片の分離に適する一方、小さい断片は速く移動しすぎて分離しにくい。
ゲル濃度が高いと網目が細かくなり、小さいDNA断片を分離しやすくなるが、大きい断片の移動は遅くなる。
今回の参考条件である1.5%ゲルは、100~1000 bp程度のDNA断片を比較するために比較的適していたと考えられる。
電圧が高すぎると、泳動時間は短くなるが、ゲルや緩衝液が発熱し、レーン中央と端で移動速度が変化することがある。その結果、バンドが湾曲したり、分離が悪くなったりする。
反対に電圧が低すぎると、分離は安定しやすいものの、泳動に長時間を要し、拡散によってバンドがぼやける場合がある。
電気泳動結果を正確に解釈するには、バンドの有無だけでなく、移動距離、推定サイズ、バンド数、濃さ、形状、スメア、対照試料の結果を総合して評価する必要がある。
以上より、試料AとBでは予想サイズ付近のDNA断片が確認され、試料Cでは目的断片と非特異的断片が混在し、試料DではDNAの分解または試料条件不良を示すスメアが認められた。
DNAが逆方向へ移動した場合の考察例
DNAがウェル側またはゲル外の反対方向へ移動した場合、電極の接続方向が逆であった可能性が高い。DNAは負に帯電しているため、ウェルを負極側に配置し、正極側へ移動させる必要がある。
すべてのバンドがほとんど動かなかった場合の考察例
すべてのバンドがほとんど移動しなかった原因として、通電されていなかったこと、電圧が低すぎたこと、緩衝液濃度が不適切であったこと、ゲル濃度が高すぎたことなどが考えられる。
バンドが曲がった場合の考察例
バンドが曲がった原因として、高電圧による発熱、ゲルの厚さの不均一、緩衝液量の偏り、ウェル位置のずれなどが考えられる。電圧を下げ、水平な場所で均一なゲルを作製する必要がある。
バンドが薄すぎた場合の考察例
バンドが薄すぎた原因として、DNA量不足、試料添加量不足、PCR増幅不足、染色不足、撮影時の露光不足などが考えられる。陽性対照とラダーの見え方を確認し、試料側と観察側のどちらに原因があるか検討する必要がある。
すべてのレーンがスメアになった場合の考察例
すべてのレーンがスメアになった場合、ゲルの過熱、緩衝液の調製不良、電圧過剰、DNA染色や撮影条件の問題が考えられる。個別試料ではなく泳動系全体の条件を確認する必要がある。
まとめ
アガロースゲル電気泳動では、負に帯電したDNAが正極側へ移動し、小さいDNA断片ほどゲル中を遠くまで移動します。
DNAラダーとの比較によって試料DNAのおおよそのサイズを推定し、バンドの濃さからDNA量を相対的に比較できます。
サイズ推定では、DNAサイズの常用対数と移動距離の関係を利用して検量線を作成します。
複数バンドは非特異的増幅、スメアはDNA分解や試料量過多、バンドの湾曲は高電圧や発熱などを示す場合があります。
正確な評価には、DNAラダー、陽性対照、陰性対照、ゲル濃度、電圧、泳動時間、染色・撮影条件を統一することが重要です。
