草刈機、発電機、農業機械などを使用していると、燃料としてガソリンをある程度保管しておきたい場合があります。
しかし、ガソリンは非常に引火しやすい危険物です。 単に物置や倉庫の空いている場所に置いておけばよいというものではありません。
そこで選択肢となるのが、市販されている危険物保管庫です。 また、すでに所有している金属製倉庫などを危険物の保管場所として使用できないか検討している方もいるでしょう。
この記事では、ガソリンを中心に、灯油、軽油、オイルなどの危険物を比較的少量保管する場合について、保管庫の選び方、既存設備を確認するときのポイント、危険物取扱者資格の必要性、燃料の購入・運搬方法、異なる危険物を一緒に保管するときの注意点まで解説します。
- ガソリンは消防法上の危険物
- ガソリンの指定数量は200L
- 危険物保管庫とは
- 危険物保管庫ならガソリンを保管できる?
- ガソリンは携行缶に入れて保管する
- 今使っている倉庫は危険物の保管に適している?
- 壁・柱・床はどうなっている?
- 床は「燃えない」だけではなく漏えい対策も重要
- 通気・換気はできている?
- 屋根が軽量な金属製ならよい?
- 施錠できる?
- 「火気厳禁」などの表示
- 消火器も準備する
- 危険物取扱者の資格は必要?
- ガソリンはどこで購入できる?
- ホームセンターや通販で容器入り燃料を購入できる場合もある
- ガソリンを車で運ぶのに資格は必要?
- 乗用車でガソリンを運ぶ場合
- ガソリンと一緒に保管できる危険物
- 異なる危険物を一緒に保管するときは注意
- 複数種類を保管すると指定数量はどうなる?
- 一般的なスチール物置を危険物保管庫として使ってよい?
- 既存の保管庫を使えるか判断するチェックリスト
- これから危険物保管庫を購入するなら
- まとめ
ガソリンは消防法上の危険物
ガソリンは消防法上の第4類危険物・第1石油類に分類されます。
ガソリンは非常に揮発しやすく、発生した可燃性蒸気に炎や火花などが接触すると引火する危険があります。
さらにガソリンの蒸気は空気より重いため、床付近やくぼみなどの低い場所に滞留することがあります。
ガソリンを保管するときは、液体のガソリンだけでなく、目に見えない可燃性蒸気についても考える必要があります。
ガソリンの指定数量は200L
ガソリンの指定数量は200Lです。
- 20L携行缶×1本=20L
- 20L携行缶×2本=40L
- 20L携行缶×3本=60L
- 20L携行缶×5本=100L
- 20L携行缶×10本=200L
指定数量以上の危険物は、原則として許可を受けた危険物施設以外の場所で貯蔵・取扱いすることはできません。
一方、200L未満なら何の規制もないという意味ではありません。 指定数量未満の危険物については、市町村の火災予防条例による規制があります。
特にガソリン40Lは指定数量の5分の1に相当するため、事業所などで40L以上200L未満を貯蔵する場合は、一般に「少量危険物」として条例による設備基準や届出が関係してきます。
住宅での貯蔵など、用途によって基準が異なる場合があります。 「40L未満なら必ず何の規制もない」と判断せず、実際に保管する数量と用途を伝えて管轄消防署に確認してください。
危険物保管庫とは
Amazonや工具・工場用品を扱う販売店では、「危険物保管庫」「危険物収納庫」などの名称で金属製の収納設備が販売されています。
危険物を保管することを想定した製品には、金属製の筐体、施錠設備、通気設備、棚、危険物表示などを備えたものがあります。
ガソリン携行缶などをまとめて管理する場合には便利な設備です。
危険物保管庫ならガソリンを保管できる?
注意したいのが、「危険物保管庫」という商品名だけではガソリンを保管できるか判断できないことです。
通気孔が設けられ、金属製で施錠できる製品であれば、外見上はガソリンなどの引火性液体の保管に適しているように見えることがあります。
しかし、通気孔があるという理由だけでガソリン対応と判断することはできません。
購入前にメーカーの商品仕様を必ず確認してください。
「ガソリン対応」「第4類危険物対応」「第1石油類対応」などの記載を確認し、記載がない場合はメーカーまたは販売店へガソリンを保管できる製品か問い合わせることをおすすめします。
ガソリンは携行缶に入れて保管する
危険物保管庫そのものにガソリンを直接入れるわけではありません。
ガソリンはガソリンを収納できる適切な容器に入れ、その容器を保管庫に収納します。
ガソリン
↓
ガソリン用携行缶
↓
ガソリンの保管に適した危険物保管庫
灯油用ポリタンクをガソリンの容器として使用することはできません。
今使っている倉庫は危険物の保管に適している?
すでに金属製の倉庫や保管庫を所有している場合、「これをガソリン保管用に使えないだろうか」と考えることもあるでしょう。
その場合、少なくとも次のような点を確認します。
既存設備のチェックポイント
- 壁、柱、床などに不燃性・耐火性があるか
- ガソリンが漏れても床へ容易に浸透しない構造か
- 漏れた液体が周囲へ流出しにくい構造になっているか
- 必要な換気ができるか
- ガソリン蒸気が内部や低所に滞留しにくいか
- 直射日光などで内部が著しく高温にならないか
- 火気や火花を発生する設備から離れているか
- 扉を施錠できるか
- 容器を転倒しない状態で置けるか
- 棚を使用する場合は不燃材料で十分な強度があるか
- 必要な警告表示を設置できるか
- 適切な消火設備を準備できるか
- 地震などで保管庫や容器が転倒しにくいか
壁・柱・床はどうなっている?
正式な危険物の屋内貯蔵所では、危険物の種類や施設条件に応じて、壁、柱、床などについて耐火構造や不燃材料などの基準が定められています。
また、少量危険物についても自治体の火災予防条例によって、壁、柱、床、天井などを不燃材料で造る、または覆うことなどが求められる場合があります。
そのため既存の木造物置にガソリン携行缶を並べる場合と、不燃材料を主体として造られた設備に保管する場合では、防火上の条件が大きく異なります。
床は「燃えない」だけではなく漏えい対策も重要
ガソリンなど液体の危険物では、床が燃えにくいことだけでなく、漏れた危険物が浸透・流出しないことも重要です。
正式な危険物施設や少量危険物の基準では、液体危険物を扱う床について、危険物が浸透しない構造、傾斜、貯留設備などが求められる場合があります。
したがって、地面がむき出しになっただけの物置などは、液体危険物の保管場所として使用する前に慎重な確認が必要です。
通気・換気はできている?
ガソリンは可燃性蒸気を発生します。 しかも蒸気は空気より重いため、低いところに滞留する性質があります。
そのため保管場所では、可燃性蒸気が滞留しないよう換気について考える必要があります。
市販の危険物保管庫に通気孔が設けられていることがありますが、単に穴が開いていれば十分という意味ではありません。
保管する危険物、数量、設備の構造に応じた換気が必要です。
屋根が軽量な金属製ならよい?
消防法上の正式な平家建て屋内貯蔵所では、原則として屋根を不燃材料で造り、金属板などの軽量な不燃材料でふき、天井を設けない構造が定められています。
これは万一火災によって内部圧力が上昇した場合に、その影響を上方へ逃がし、周囲への被害を抑えることなどを考慮したものです。
ただし、「軽い金属屋根+耐火壁+換気口」があれば、既存の小屋を正式な危険物貯蔵所として使用できるという意味ではありません。
指定数量、危険物の種類、周囲との距離、開口部、床、換気、電気設備、消火設備など多くの条件があります。 既存設備を少量危険物の保管場所として利用したい場合は、図面や写真、保管予定数量を用意して管轄消防署へ相談するのが確実です。
施錠できる?
ガソリンなどの危険物を保管する設備では、第三者が容易に触れないよう管理することも重要です。
特に屋外や複数の人が出入りする場所では、施錠できる設備を選ぶと管理しやすくなります。
「火気厳禁」などの表示
危険物を保管している場所では、周囲の人が危険物の存在を認識できるようにすることも重要です。
必要となる標識や掲示は危険物の種類、数量、自治体の条例などによって異なります。
消火器も準備する
危険物を保管するのであれば、火災が発生した場合についても考えておく必要があります。
消火器を設置する場合は、保管している危険物の火災に適応するものを選びます。 法令上必要となる消火設備については、危険物の種類や数量、施設によって異なります。
危険物取扱者の資格は必要?
「ガソリンを保管するなら危険物取扱者乙種第4類(乙4)が必要なのでは?」と思うかもしれません。
危険物取扱者が必要となるかどうかは、単純に「ガソリンを持っているか」だけでは決まりません。
消防法上の危険物施設で危険物を取り扱う場合は、危険物取扱者自身が取り扱うか、資格を持たない人が取り扱う場合には甲種または該当する乙種危険物取扱者の立会いが必要になります。
一方、一般家庭などで指定数量未満のガソリンを適切に購入して保管したり、草刈機や発電機などへ使用したりするために、必ず危険物取扱者免状を取得しなければならないというものではありません。
ただし、指定数量未満であっても自治体の火災予防条例は適用されます。 また、事業所での取扱い、貯蔵量、設備などによって必要な手続や管理方法が変わるため、大量に保管する場合は消防署へ確認してください。
ガソリンはどこで購入できる?
燃料用のガソリンはガソリンスタンドで購入できます。
自動車の燃料タンクではなく携行缶へガソリンを購入する場合、適切なガソリン用容器を使用します。
現在、ガソリンスタンドでガソリンを携行缶へ詰め替えて販売するときには、購入者の本人確認と使用目的の確認が行われ、販売記録が作成されます。
そのため、運転免許証など本人確認に使用できるものを持参するとよいでしょう。
また、セルフサービス式のガソリンスタンドであっても、利用者が自分で携行缶へガソリンを給油することはできません。 ガソリンスタンドの従業員に依頼して詰め替えてもらいます。
ホームセンターや通販で容器入り燃料を購入できる場合もある
あらかじめ容器に収納された燃料が、店舗や通信販売で販売されている場合もあります。
ただし、販売形態、配送可能地域、数量などには制限がある場合があるため、販売店の条件を確認してください。
ガソリンを車で運ぶのに資格は必要?
ガソリン携行缶を自動車で運ぶ場合、消防法令上、危険物取扱者が乗車することまでは求められていません。
つまり、草刈機や発電機用としてガソリンスタンドで携行缶にガソリンを購入し、自分の車で持ち帰るためだけに乙4を取得する必要はありません。
ただし、危険物の運搬については数量の多少にかかわらず消防法令の運搬基準が適用されます。
乗用車でガソリンを運ぶ場合
消防庁は、乗用車の車室内などでガソリンを運搬する場合、ガソリンについては22L以下の金属製容器を使用する必要があるとしています。
一般的な20Lガソリン携行缶は、この範囲内に収まります。
運搬するときは、容器が落下したり転倒したりしないよう確実に固定する必要があります。
ガソリンを積んだ車を長時間放置したり、炎天下で高温になる場所に放置したりしないようにします。 購入後は必要以上に車内へ置いたままにせず、安全な保管場所へ移します。
ガソリンと一緒に保管できる危険物
ガソリンは第4類危険物です。 身近な第4類危険物には、ガソリン以外にも灯油、軽油、アルコール類、各種オイル、油性塗料、溶剤などがあります。
ただし、同じ「第4類」というだけで、どんな製品でも無条件に同じ棚へ置いてよいという意味ではありません。
それぞれの容器の表示やSDS(安全データシート)、メーカーが指定する保管条件を確認してください。
同じ保管場所を検討しやすい例
- ガソリン
- 灯油
- 軽油
- エンジンオイルなど危険物に該当する油類
- 第4類に該当する塗料・溶剤
ただし、それぞれを適切な容器に入れ、製品ごとの保管条件を守ることが前提です。
異なる危険物を一緒に保管するときは注意
消防法の危険物には第1類から第6類まであり、それぞれ性質が大きく異なります。
- 第1類:酸化性固体
- 第2類:可燃性固体
- 第3類:自然発火性物質・禁水性物質
- 第4類:引火性液体
- 第5類:自己反応性物質
- 第6類:酸化性液体
例えば、燃焼を強く促進する酸化性物質とガソリンなどの可燃物を不用意に同じ場所へ保管すると、漏えいや容器破損などの事故時に危険性が高まります。 また、水との接触を避けなければならない禁水性物質など、ガソリンとは全く異なる管理が必要な危険物もあります。
異なる類の危険物を一緒に保管する場合は、「危険物だから全部同じ保管庫でよい」と考えないでください。
物質同士の反応性、法令上の貯蔵基準、SDSの「混触危険物質」などを確認し、必要に応じて保管場所を分けます。 判断できない物質は同じ保管庫へ入れず、メーカーや消防署などへ確認してください。
複数種類を保管すると指定数量はどうなる?
ガソリンだけでなく灯油や軽油など、指定数量の異なる危険物を同じ場所で保管するときは注意が必要です。
単純に全ての液体のL数を足して200Lと比較するのではありません。
それぞれについて、
実際の貯蔵量 ÷ その危険物の指定数量
を計算し、それぞれの割合を合計して指定数量に対する倍数を判断します。
そのため、ガソリンと灯油を一緒に保管している場合、「ガソリンが200L未満だから大丈夫」とは判断できません。
一般的なスチール物置を危険物保管庫として使ってよい?
一般家庭向けのスチール物置は、外見だけなら危険物保管庫によく似ています。
しかし、通常の物置は危険物を保管することを前提として設計されたものとは限りません。
「金属製だから大丈夫」
「換気口を付ければ大丈夫」
「鍵が付いているから大丈夫」
「屋根が薄い金属板だから大丈夫」
というように、一つの条件だけで判断することはできません。
既存の物置を利用したい場合は、壁・床・屋根・換気・漏えい対策・火気との距離・電気設備・施錠・消火設備・保管量などを総合的に確認する必要があります。
既存の保管庫を使えるか判断するチェックリスト
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 危険物の種類 | ガソリンなど保管予定の危険物を特定する |
| 数量 | 最大何Lを保管するのか確認する |
| 壁・柱 | 不燃材料・耐火性などを確認する |
| 床 | 不燃性だけでなく、危険物が浸透・流出しにくい構造か確認する |
| 屋根 | 材質や構造を確認する |
| 換気 | 可燃性蒸気が滞留しない構造・設備か確認する |
| 火気 | 炎、火花、高温設備などが近くにないか確認する |
| 電気設備 | 可燃性蒸気が滞留する可能性を含め、設備が適切か確認する |
| 直射日光 | 保管庫内が著しく高温にならないか確認する |
| 施錠 | 第三者が容易に触れないよう管理できるか確認する |
| 転倒防止 | 保管庫と携行缶の双方が安定しているか確認する |
| 表示 | 必要な危険物・火気厳禁等の表示を確認する |
| 消火設備 | 保管している危険物に適応する消火設備を確認する |
| 周囲の環境 | 住宅、建築物、可燃物などとの位置関係を確認する |
このチェックリストは「法令適合を自己認定するためのもの」ではありません。
問題になりそうな部分を事前に見つけるためのチェックリストです。 特に少量危険物に該当する量を保管する場合や、既存の倉庫を転用する場合は、保管する危険物の種類・最大数量、設備の寸法、材質、写真などを用意して管轄消防署へ相談してください。
これから危険物保管庫を購入するなら
これから購入するのであれば、一般的な物置を購入して後から改造するよりも、最初から危険物の保管を想定して設計された製品を候補にすると選びやすくなります。
- ガソリンなど保管する危険物への対応
- 第4類危険物への対応
- 収納できる携行缶の本数
- 換気設備
- 床・漏えい対策
- 施錠設備
- 屋内用・屋外用の別
- メーカーが指定する設置条件
などを確認しましょう。
Amazonなどの商品ページに「危険物保管庫」と書かれていても、それだけでガソリン対応とは判断できません。 ガソリン、第4類第1石油類への対応を購入前に必ず確認してください。
まとめ
草刈機や発電機などの燃料としてガソリンを保管する場合、市販の危険物保管庫を利用して管理する方法があります。
ガソリンは第4類第1石油類に分類され、指定数量は200Lです。 指定数量未満であっても、市町村の火災予防条例による規制を受けます。
危険物保管庫を購入する場合は、「危険物保管庫」という名称だけで判断せず、ガソリンへの対応をメーカー資料などで確認することが重要です。
すでに所有している倉庫などを利用する場合も、金属製であることだけでは判断できません。 壁・柱・床・屋根、換気、漏えい対策、火気、電気設備、施錠、転倒防止、消火設備などを総合的に確認します。
また、一般的な少量のガソリンを購入・保管・運搬するためだけに危険物取扱者資格が必ず必要になるわけではありません。 一方、危険物施設での取扱いについては危険物取扱者に関する規制があります。
ガソリンを車で運搬する場合も危険物取扱者の乗車までは求められていませんが、危険物の運搬基準は数量にかかわらず守る必要があります。
さらに、ガソリン、灯油、軽油、オイルなど複数の危険物を保管する場合は、種類ごとの性質、指定数量、混触危険性なども確認します。
危険物は「何Lまでなら絶対安全」というものではありません。 設備を整えることに加えて、保管量を必要最小限に抑え、定期的に携行缶や保管設備の状態を確認することが重要です。
