火災が発生すると、消火活動が終わったあとに「火災調査」が行われます。
火災調査では、どこから火が出たのか、何が最初に燃えたのか、どのような経過で燃え広がったのかなどを調べます。また、事件性が疑われる場合には警察も調査・捜査に関わり、火災保険に加入している場合には保険会社も独自の視点で事故や損害を確認します。
この記事では、火災調査では誰が何を調べるのか、焼け跡を片付けてもよいのか、コンセントやたばこ、放火はどのように調べるのか、火災保険やり災申告書との関係などをQ&A形式でまとめます。
り災証明書やり災申告書の申請方法、写真、保険、公的支援制度などについては、「り災証明書とは?火災・震災での違い、申請方法、保険との関係」で詳しく解説しています。
- 火災調査とは?
- 火災調査Q&A
- 火災調査は誰が行う?
- 消防と警察ではどちらが火災調査をする?
- 保険会社も火災現場を調査する?
- り災申告書は保険会社に提出する書類?
- り災申告書はすぐに全部書かないといけない?
- り災申告書に高額な家財をたくさん書いてもいい?
- 虚偽の申告をするとどうなる?
- 焼け跡は勝手に片付けてもいい?
- 鎮火後に行う「残火処理」とは?
- 火災調査はいつから始まる?
- 保険会社の確認前に焼けた物を捨ててもいい?
- コンセントは調べる?
- 電気コードが断線・ショートしたことは分かる?
- ブレーカーや分電盤も調べる?
- 家電製品が原因かどうかは分かる?
- たばこ火災はどうやって分かる?
- 放火かどうかは何を見る?
- ガソリンや灯油をまいたかどうかは調べられる?
- 放火が疑われると警察が主導する?
- 出火した部屋はどうやって判断する?
- 柱の燃え方を見ると出火場所が分かる?
- 火災原因が分からないこともある?
- 火災調査は何日くらいかかる?
- 火災調査中に家へ入ってもいい?
- 火災調査では家主や家族に何を聞く?
- 火災調査とり災証明書は同じもの?
- 火災調査が終わるまで保険会社に連絡できない?
- 火災調査を受けるときの注意点
- まとめ
- 参考資料
火災調査とは?
火災調査とは、火災の原因を究明するとともに、火災や消火活動によって生じた損害などを明らかにするために行われる調査です。
消防機関による火災原因の究明は、その後の火災予防や同種事故の再発防止にも活用されます。
火災調査Q&A
火災調査は誰が行う?
火災原因については、基本的に消防機関の火災調査担当者が調査します。
火災の規模や内容によっては、消火活動を行った消防隊員からの情報、火災調査を担当する消防職員による現場確認、関係者からの聞き取りなどを組み合わせて原因を調べます。
また、放火の疑いがある場合、死傷者が発生している場合、その他事件性が疑われる場合などには、警察官も現場の確認や捜査を行います。
消防と警察が同じ火災現場を調べることがありますが、両者の目的は完全に同じではありません。
| 機関 | 主な目的・着眼点 |
|---|---|
| 消防 | 出火箇所、出火原因、燃焼・延焼の経過、火災や消火による損害などを調べ、火災予防や再発防止につなげる |
| 警察 | 放火などの犯罪やその他の事件性がある場合、犯罪事実、関係者、動機や背景などを含めて捜査する |
| 保険会社 | 事故原因や損害状況を確認し、保険契約上の補償対象になるか、支払う保険金はいくらになるかを判断する |
つまり、同じ火災について消防、警察、保険会社から似たような質問を受けることがありますが、それぞれ確認したい目的が異なります。
消防と警察ではどちらが火災調査をする?
消防は消防法などに基づいて火災原因を調査します。
一方、事件性が疑われる場合には、警察は犯罪捜査の観点から現場を確認します。
放火の可能性が高いなど事件性の強い火災では、消防と警察が連携して現場を確認しつつ、犯罪捜査に関する部分では警察が中心となって進める場面もあります。
消防は「なぜ火災になったのか」、警察は事件であれば「誰が、なぜ行ったのか」まで調べる必要があるため、同じ現場でも着眼点が異なります。
保険会社も火災現場を調査する?
火災保険の請求が行われた場合、保険会社が事故原因や損害状況を確認することがあります。
保険会社が確認する主な目的は、火災が契約上の補償対象に該当するか、建物や家財にどの程度の損害が発生したのか、支払う保険金はいくらになるのかを判断することです。
消防署が発行するり災証明書や、消防署へ提出するり災申告書だけで保険金額が決まるわけではありません。
保険会社は、契約内容、写真、修理見積書、損害品の一覧、事故状況などを独自に確認して保険金を算定します。
り災申告書は保険会社に提出する書類?
火災時の「り災申告書」や「火災損害申告書」は、基本的には消防機関へ被害状況を申告するための書類です。
消防本部によって様式は異なりますが、焼損した家財について、品名、数量、購入年月、購入価格などを記入する場合があります。
ただし、り災申告書へ記載した金額をそのまま保険会社が保険金として支払うわけではありません。
り災申告書はすぐに全部書かないといけない?
火災直後は、住宅や家財を失った精神的な負担に加え、避難先の確保、消防や警察への対応、保険会社への連絡、今後の生活の手配などが重なります。
その状態で、自宅にあった家財をすべて思い出し、購入年月や購入価格まで短時間で整理することは簡単ではありません。
家計簿、レシート、通販サイトの購入履歴、保証書、クレジットカードの明細などが残っていても、一つずつ確認すれば相応の時間がかかることがあります。
分からない項目については、記憶だけで正確そうな数字を作らず、空欄、「不明」、概算など、どのように記載するか提出先の消防署へ確認してください。
り災申告書に高額な家財をたくさん書いてもいい?
実際に所有し、火災によって被害を受けた物であれば、価格の高い物を記載すること自体に問題があるわけではありません。
ただし、存在しない家財を記載したり、購入価格を故意に高く記載したり、被害を実際より大きく見せたりする虚偽申告をしてはいけません。
非常に多数の高額品について詳細な申告がある場合など、内容に応じて消防や保険会社から購入記録や被害状況について追加確認を受けることがあります。
「提出が早い」「高額品が多い」というだけで不正と判断されるわけではありませんが、申告内容は事実に基づいて説明できるようにしておくことが重要です。
虚偽の申告をするとどうなる?
保険金を受け取る目的で、存在しない家財を申告したり、火災原因について事実と異なる説明をしたりしてはいけません。
火災原因や申告内容に不自然な点があれば、消防、警察、保険会社などが、それぞれの立場から詳しい確認を行う可能性があります。
火災そのものに放火などの疑いが生じれば、単なる保険手続きではなく、警察による犯罪捜査の対象になる可能性もあります。
焼け跡は勝手に片付けてもいい?
火災原因調査が終わる前に、許可なく焼け跡を片付けることは避けてください。
焼けた家具、家電、配線、コンセント、ストーブなどを移動したり廃棄したりすると、出火場所や火災原因を判断する重要な手掛かりが失われる可能性があります。
東京消防庁でも、火災原因調査が終了するまでは火災現場への無断立入りを禁止し、焼けた物の片付けは調査終了後に行うよう案内しています。
消防・警察による現場確認が終わったことを確認してから片付けを始めるのが基本です。
鎮火後に行う「残火処理」とは?
火災では、見た目上は炎がなくなっていても、家具、布団、壁の内部、木材などに火種が残っていることがあります。そのため、消火活動の終盤から鎮火後にかけて、再燃を防ぐための「残火処理」が行われます。
火元となった部屋などでは、必要に応じて家具、布団、電化製品などの収容物を屋外の安全な場所へ搬出し、水をかけたり内部まで確認したりして、残っている火種を確実に消火します。
このため、火災後に家具や家電が屋外へ出されていても、必ずしも家主が片付けたとは限らず、消防活動の一環として移動されている場合があります。
また、鎮火後も再燃のおそれがある火災では、消防隊が現場に残ったり、一定時間ごとに巡回したりして警戒を続ける場合があります。火災の規模や建物の構造、消防本部の運用によっては長時間にわたり警戒が続くこともありますが、「必ず24時間消防車が待機する」という全国共通の運用ではありません。
火災調査はいつから始まる?
火災調査のための情報収集は、消防隊が現場へ到着した時点から始まっていると考えると分かりやすいでしょう。消防隊員が到着時にどこから炎や煙が出ていたのか、どのように燃え広がったのかといった情報も、後の原因調査で重要な資料になります。
一方、焼け跡を詳しく確認し、物品を取り除きながら出火箇所や原因を調べる本格的な現場調査は、消火活動や残火処理との安全上の調整を行い、鎮火後に実施されるのが基本です。
つまり、「火災調査は鎮火してから突然始まる」というより、火災発生中から情報を集め、鎮火後に焼け跡を詳しく調べるという流れになります。
保険会社の確認前に焼けた物を捨ててもいい?
消防・警察の火災調査が終了していても、保険会社による確認が必要な場合があります。
焼損した家具や家電を処分する前に保険会社へ連絡し、現物確認が必要か確認してください。
処分が必要な場合でも、全体、メーカー名や型番、焼損部分などを写真や動画で残しておくと、損害を説明しやすくなります。
コンセントは調べる?
調べることがあります。
コンセント、プラグ、延長コード、電源タップ、家電製品、屋内配線などの電気設備は、火災原因の候補になることがあります。
出火場所付近に電気設備がある場合には、配線の状態、接続部分、溶融痕、過熱や短絡の可能性、使用していた電気製品などを確認することがあります。
ただし、コンセントが焼けていたというだけで「コンセントが原因」と判断されるわけではありません。火災によって後から焼けた可能性もあるため、周囲の焼損状況などと合わせて判断します。
電気コードが断線・ショートしたことは分かる?
電気コードや配線が出火原因として疑われる場合には、焼け残った導体部分を詳しく確認することがあります。
電気的な短絡(ショート)によって大きな電流が流れると、銅線などの金属導体が局所的に高温となり、溶融して丸みを帯びた痕跡(溶融痕)が生じることがあります。
このような痕跡は肉眼だけでなく、必要に応じて顕微鏡などを使用して形状や表面の状態を詳しく確認します。単純に引っ張られたり切断されたりした断線とは異なる特徴が確認できることがあり、電気的な異常が発生した可能性を検討する材料になります。
ただし、溶融痕が見つかったからといって、それだけで「ショートが火災原因だった」と断定できるわけではありません。火災による熱で被覆が失われ、燃焼中に二次的な短絡が起きる場合もあるため、出火前に生じた痕跡なのか、火災の結果として生じた痕跡なのかを、周囲の焼損状況や配線の状態などと合わせて検討します。
ブレーカーや分電盤も調べる?
電気火災が疑われる場合などには、ブレーカーや分電盤の状態を確認することがあります。
火災発生時にどの回路が使用されていたのか、ブレーカーの状態、出火場所周辺にどのような電気機器があったのかなどは、原因を検討する材料になります。
家電製品が原因かどうかは分かる?
家電製品が出火原因として疑われる場合は、製品の焼損状況や内部部品、電源コードなどを確認することがあります。
原因究明に高度な専門知識が必要な場合には、消防研究センターなどによる鑑識・鑑定や技術支援が行われるケースもあります。
そのため、原因が疑われる家電を自己判断で分解したり捨てたりしないことが重要です。
たばこ火災はどうやって分かる?
たばこは、布団、ベッド、ソファ、衣類、ごみなどに火種が落ちると、すぐに炎を上げず、内部で無炎燃焼が続いたあとに火災へ発展することがあります。
火災調査では、吸い殻や火種の残留状況、喫煙状況についての関係者の説明、布団や畳、ソファなどに残る局所的な焼損状況、周囲の燃え方などを総合して、たばこが原因となった可能性を検討します。
寝たばこのような場合には、火種が落ちた場所を中心として繊維類や畳などが局所的・深部方向に焼損することがあり、出火箇所を検討する重要な手掛かりになります。
ただし、火災の規模が大きい場合には証拠が大きく焼損していることもあるため、「吸い殻が必ず残る」など、一つの痕跡だけで判断するものではありません。
放火かどうかは何を見る?
放火が疑われる場合も、まず「その場所で自然に火災が発生する原因があったのか」という点を確認します。
たとえば、出火場所にストーブ、こんろ、電気設備、たばこなど通常の火源となり得る物がなく、不自然な位置から出火している場合などは、他の可能性も含めて慎重に調べることになります。
複数の離れた場所から出火している、通常では説明しにくい燃え方をしている、可燃性液体が使用された疑いがあるなどの場合も、確認すべき材料になります。
ガソリンや灯油をまいたかどうかは調べられる?
ガソリンや灯油などの可燃性液体が使用された疑いがある場合には、現場の臭気、焼損状況、残留物などを確認し、必要に応じて専用の検知機器や採取した資料の分析などを行うことがあります。
液体そのものが燃えてなくなったように見えても、床材や土壌、焼損物などに成分が残る場合があるため、燃焼後でも調査の対象になることがあります。
ただし、どの方法で確認するか、どこまで成分を特定できるかは現場の状況や焼損程度によって異なります。
放火が疑われると警察が主導する?
放火など犯罪の疑いが強い場合、消防は火災原因調査を行い、警察は犯罪捜査を行います。
現場では両者が連携して確認することがありますが、犯人の特定、動機、犯罪事実の立証などは警察の捜査事項です。
そのため、事件性が高い案件では、犯罪捜査に関する部分について警察が中心となって進める場面があります。
出火した部屋はどうやって判断する?
まず、家主や居住者などの関係者から、火災発生前の状況を聞き取ります。
たとえば、どの部屋にストーブ、こんろ、電気製品、たばこなどの出火原因になり得る物があったのか、最後にその部屋を使用したのは誰か、火災を最初に見たときどこが燃えていたのか、といった情報です。
さらに、建物が完全に焼失していない場合には、柱、壁、天井、家具などに残る焼損の強弱や燃焼方向、炭化の状態などから、燃焼がどの方向から広がったのかを検討します。
これらの情報を組み合わせ、出火した部屋や出火箇所を絞り込んでいきます。
柱の燃え方を見ると出火場所が分かる?
柱や壁などに残る焼損状況は、出火箇所を検討する重要な手掛かりの一つです。
ただし、「最も黒く焼けた場所が必ず出火点」というような単純な判断ではありません。
換気、窓やドアの位置、可燃物の量、消火活動などによって燃え方は変化するため、複数の焼損状況や関係者の供述などを合わせて判断します。
火災原因が分からないこともある?
あります。
火災によって建物が大きく焼損した場合、出火原因となった物そのものが失われることがあります。また、複数の原因が考えられ、どれか一つに絞り込めない場合もあります。
火災調査は、最初から原因を決めて現場を見るのではなく、複数の可能性を検討しながら矛盾する原因を除外していくことが重要です。
十分な根拠が得られない場合には、原因を無理に決めず「不明」などとされる場合があります。
火災調査は何日くらいかかる?
現場で行う見分そのものは、火災の規模によって数時間から複数日に及ぶことがあります。
一方、火災原因を確定して調査書類を作成する作業は、現場確認が終了したあとも続きます。
関係者への追加聞き取り、写真や資料の整理、電気製品などの鑑識・鑑定、警察との調整などが必要になれば、さらに時間がかかります。
実務上、消防本部ごとに調査書類の処理期限や目安が設けられていることがありますが、全国一律に「火災発生から○日以内にすべての調査を終える」という期限が定められているわけではありません。
東京の火災調査業務でも、一定の事務処理期間を意識して調査書類を作成しますが、火災の規模、原因の複雑さ、鑑定の有無などによって完成時期は変わります。
火災調査中に家へ入ってもいい?
許可なく立ち入ることは避けてください。
火災後の建物には、床や天井の崩落、壁や柱の倒壊、ガラスや釘、漏電、再燃などの危険があります。
また、調査前に物を動かすと火災原因を判断する手掛かりが失われる可能性があります。
消防や警察による現場確認中は担当者の指示に従い、必要な物を取りに入る場合なども、必ず確認してから行ってください。
火災調査では家主や家族に何を聞く?
火災発生前後の状況について、さまざまな聞き取りが行われます。
- 火災を最初に発見した人
- 最初に炎や煙を見た場所
- 火災発生前に使用していた家電や暖房器具
- こんろやストーブなどの使用状況
- 喫煙の有無
- 外出・帰宅した時刻
- 停電や異臭、異音などがなかったか
- 建物の鍵や第三者の出入り
同じようなことを複数回聞かれる場合がありますが、火災発生時の状況を正確に整理するために必要な確認です。
火災調査とり災証明書は同じもの?
同じではありません。
火災調査は、火災原因や損害状況などを調べる業務です。
一方、り災証明書は、消防機関が把握・調査した火災について、火災によってり災した事実などを証明するために交付される書類です。
火災調査が行われたから自動的にり災証明書が渡されるとは限らず、必要な場合には消防署へ申請して交付を受けます。
火災調査が終わるまで保険会社に連絡できない?
待つ必要はありません。
自分や家族の安全を確保したら、加入している保険会社や代理店へ早めに事故を連絡してください。
ただし、消防・警察による火災原因調査が終了する前に、保険会社や修理業者の判断だけで現場を大きく片付けたり、焼損物を廃棄したりすることは避けます。
火災調査を受けるときの注意点
- 消防・警察の現場確認が終了する前に焼け跡を片付けない
- 原因となった可能性がある家電、配線、暖房器具などを捨てない
- 分からないことを無理に推測して答えない
- 火災発生前後の状況を思い出せる範囲で整理する
- り災申告書は事実に基づいて記載する
- 焼損した家財は保険会社の確認前に処分しない
- 建物への立入りは消防・警察などの指示に従う
まとめ
火災調査では、焼けた場所を見るだけでなく、関係者からの聞き取り、建物の焼損状況、電気設備、暖房器具、たばこなど、さまざまな要素を組み合わせて出火箇所や原因を検討します。
消防は火災原因や損害の調査、警察は事件性がある場合の犯罪捜査、保険会社は保険契約に基づく損害確認と保険金算定というように、それぞれ目的が異なります。
特に重要なのは、火災原因調査が終了する前に現場を勝手に片付けないことです。焼けた物や配線、家電などが原因究明の重要な証拠になる場合があります。
また、火災保険を請求する場合も、り災申告書に記載した金額だけで保険金が決まるわけではありません。実際の被害を写真や資料で残し、消防・警察・保険会社それぞれの確認に正確に対応することが大切です。
火災後のり災証明書・り災申告書の手続きについては、り災証明書の解説ページもあわせて参考にしてください。
