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罹災証明書(り災証明書)とは?火災・地震での違い、使い道、申請方法、保険との関係を解説

地震や台風、大雨、火災などで住宅や家財に被害を受けたとき、各種手続きで必要になることがあるのが「罹災証明書(り災証明書)」です。

ただし、自然災害と火災では、発行する機関や手続き、証明する内容が異なります。また、火災では「り災証明書」とは別に、消防署へ提出する「り災申告書」や「火災損害申告書」などが使われることがあります。

この記事では、り災証明書とは何か、どこでもらえるのか、何を書くのか、保険会社との関係、写真の提出方法、保険金が支払われるまでの期間、被災した建物をいつまでに修理・撤去すればよいのかまでまとめます。

  1. り災証明書とは
  2. り災証明書とり災申告書の違い
  3. り災証明書・り災申告書はどこでもらえる?
    1. 火災の場合
    2. 地震・台風・大雨などの場合
  4. 震災のときは消防署と市役所のどちらに申請する?
  5. 申請書には何を書く?
    1. 火災では家財の品名・購入年月・購入価格を書く場合がある
  6. り災申告書の書き方(記入例)
  7. り災申告書を記入するときの注意点
    1. 申告内容は正確に記入する
    2. 消防・警察・保険会社では火災を見る目的が異なる
    3. 事件性が疑われる火災では警察も調査・捜査を行う
    4. 不自然な申告は追加確認につながることがある
  8. 消防署は家財一つ一つの損害を証明してくれる?
  9. 書き方によって保険金を多くもらえる?
  10. り災証明書と保険会社の関係
  11. 罹災証明書で利用できる主な支援制度
  12. 写真は必要?
    1. デジタル写真と紙のどちらがいい?
    2. モノクロでもいい?カラーの方がいい?
  13. どのような写真を撮ればいい?
    1. 建物の外
    2. 建物の中
    3. 火災の場合
  14. 保険会社の確認前に捨てない方がよいもの
  15. 片付けや修理はいつからしていい?
    1. 火災の場合
    2. 自然災害の場合
  16. 火災をそのとき消防署へ通報していなかった場合は?
  17. 火災発生から保険金受取までの流れ
  18. 保険金はどれくらいの期間でもらえる?
    1. 保険金を請求できる期間
    2. 請求後に保険金が支払われるまで
  19. 被災した建物はいつまでに修理・建て替え・撤去すればいい?
  20. 被災した建物をそのまま放置するとどうなる?
  21. 修理・解体前に残しておきたいもの
  22. り災証明書を申請する一般的な流れ
  23. 火災後に特に注意したいこと
  24. よくある質問
    1. 火災現場でり災証明書そのものをもらえる?
    2. 購入価格が分からない家財はどうする?
    3. り災申告書に高い金額を書けば保険金も増える?
    4. 写真はスマホで撮ったものでいい?
    5. モノクロ写真しかない場合は使えない?
    6. 火災を自分で消して119番通報しなかった場合でも届け出られる?
    7. 保険金は火災から30日以内にもらえる?
    8. 被災住宅はすぐ解体しないといけない?
  25. 被災当日にやることチェックリスト
  26. まとめ
  27. 参考資料

り災証明書とは

罹災証明書とは、災害によって住宅などが受けた被害について、公的機関が調査し、その被害の程度などを証明する書類です。

地震、台風、豪雨、洪水などの自然災害では、災害対策基本法に基づき、原則として被災した住宅がある市区町村が罹災証明書を発行します。

一方、一般的な住宅火災の場合は、市区町村ではなく、火災を管轄した消防署・消防局などが「り災証明書」を発行する地域が多くあります。

そのため、同じ「り災証明書」という名称でも、自然災害と火災では手続きの仕組みが異なります。

り災証明書とり災申告書の違い

火災の場合は、「り災証明書」と「り災申告書」を混同しやすいので注意が必要です。

書類 主な役割
り災申告書・火災損害申告書 火災でどのような建物・家財・設備などが被害を受けたのかを、り災者が消防署へ申告する書類
り災証明書 消防機関が把握・調査した火災について、火災によるり災の事実などを証明する書類

消防本部によって書類の名称や様式、提出期限は異なります。

たとえば東京消防庁では、火災調査時などに「り災申告書」を渡し、り災状況を記載しておおむね1週間以内に消防署へ提出するよう案内している例があります。

り災証明書・り災申告書はどこでもらえる?

火災の場合

火災の場合、消防隊や火災調査担当者が現場に来ており、建物の所有者や居住者などの関係者がその場にいる場合には、火災調査の際に「り災申告書」「火災損害申告書」などの用紙を渡されることがあります。

その場で完成させて提出するというより、いったん用紙を受け取り、建物や家財などの被害状況を確認しながら必要事項を記入して、後日消防署へ提出する形が一般的です。

火災現場で用紙を受け取らなかった場合でも、後日、火災を管轄した消防署・消防局などで用紙を受け取ったり、自治体や消防局のホームページから様式をダウンロードできたりする場合があります。

「り災証明書」そのものは、火災調査後などに必要に応じて消防署へ申請して発行してもらいます。

地震・台風・大雨などの場合

地震、台風、大雨、洪水などの自然災害では、原則として被災した住宅がある市区町村へ申請します。

申請窓口は自治体によって異なり、危機管理課、防災課、税務担当課、市民課などが担当することがあります。大規模災害では、臨時の罹災証明書受付窓口が設けられることもあります。

また、自治体によっては窓口だけでなく、郵送やオンラインで申請できる場合もあります。

自然災害では、申請後に市区町村が住家被害認定調査を行い、「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」「準半壊」「一部損壊」などの被害区分を判定します。

震災のときは消防署と市役所のどちらに申請する?

地震の場合は、被害の原因によって申請先が分かれることがあります。

  • 地震の揺れで住宅が壊れた場合:原則として市区町村
  • 地震によって発生した火災で焼損した場合:火災に関する証明は消防機関が関係する場合がある
  • 生活再建支援などに利用する住家の被害程度の証明:市区町村

大規模な震災では、市区町村と消防機関が連携して罹災証明書の交付を行うこともあります。

地震後に火災も発生した場合は、「市役所か消防署のどちらか一方だけ」と考えず、利用したい制度にどの証明書が必要なのかを確認すると確実です。

申請書には何を書く?

様式は自治体や消防本部によって異なりますが、一般的には次のような内容を記入します。

  • 申請者の氏名
  • 住所
  • 連絡先
  • 被災した場所
  • 災害や火災が発生した日時
  • 被災した建物との関係
  • 被害を受けた建物や家財など
  • 証明書の使用目的
  • 必要な証明書の部数

火災では家財の品名・購入年月・購入価格を書く場合がある

火災の「り災申告書」や「火災損害申告書」では、建物だけでなく、焼けたり水損したりした家財について記入する欄が設けられている場合があります。

様式によっては、次のような項目があります。

  • 品名
  • 数量
  • 購入年月
  • 購入価格
  • 損害見積額
  • 焼損・水損などの状況

家計簿、購入履歴、レシート、クレジットカードの明細、通販サイトの購入履歴、保証書などが残っていれば、それらを確認しながら記入できます。

一方、何年も前に購入した家具や家電などでは、購入年月や購入価格が分からないこともあります。その場合の記入方法は消防本部によって異なりますが、分からないものを無理に推測して正確な金額のように記載する必要はありません。

空欄でよいのか、「不明」と記載するのか、概算額を記載するのかについては、提出先の消防署に確認してください。

り災申告書の書き方(記入例)

り災申告書の様式は消防本部によって異なりますが、記入する内容は概ね共通しています。

記入例(イメージ)

項目 記入例
氏名 消防 太郎
住所 ○○県○○市○○1-2-3
火災発生日時 2026年8月5日 午後8時15分頃
建物の用途 住宅
被害を受けた家財 テレビ、冷蔵庫、ソファなど
購入年月 2023年4月(不明でも可(分かる範囲で記入))
購入価格 98,000円(不明でも可(分かる範囲で記入))
備考 焼損、水損、すす汚れなど

購入年月や購入価格が分からない場合は、無理に推測して記入せず、消防署へ確認してください。

※上記は一般的な記入例です。実際の様式は消防本部によって異なります。

り災申告書を記入するときの注意点

火災のり災申告書や火災損害申告書では、焼損した家財について、品名、数量、購入年月、購入価格などを記入する場合があります。

しかし、火災に遭った直後は、住宅や家財を失った精神的なショックに加え、避難先の確保、消防や警察への対応、保険会社への連絡、今後の生活の手配など、さまざまな対応が重なります。

そのような状況で、自宅にあった家財をすべて思い出し、購入年月や購入価格まで短時間で正確に整理することは簡単ではありません。

家計簿、レシート、保証書、クレジットカードの利用明細、通販サイトの購入履歴などが残っていたとしても、それらを確認しながら一つずつ整理すれば、それなりの時間がかかっても不思議ではありません。

分からない項目について、記憶だけを頼りに無理に正確そうな数字を作る必要はありません。空欄、「不明」、概算など、どのように記載するかは提出先の消防署へ確認してください。

申告内容は正確に記入する

り災申告書には、実際に火災によって被害を受けた家財を、分かる範囲で正確に記入することが重要です。

実際には所有していなかった物品を記載したり、購入価格を故意に高くしたり、被害を実際より大きく見せたりする虚偽の申告をしてはいけません。

消防機関は、り災者から提出された申告書だけを見て火災を判断しているわけではありません。火災現場の焼損状況、燃焼の方向、出火箇所、関係者からの聞き取りなど、さまざまな情報をもとに火災原因や損害について調査します。

そのため、申告内容について確認が必要な場合には、消防署から追加の聞き取りや記載内容の確認を求められることがあります。

消防・警察・保険会社では火災を見る目的が異なる

一つの火災について、消防、警察、保険会社など複数の機関が確認や調査を行う場合がありますが、それぞれの目的は同じではありません。

機関 主な目的・着眼点
消防 どこから出火したのか、何が最初に燃えたのか、どのような経過で火災になったのかなど、火災原因を究明するとともに、火災や消火による損害の状況を調査します。調査結果は、今後の火災予防などにも活用されます。
警察 放火など犯罪の可能性やその他の事件性が認められる場合、誰がどのような目的で行ったのかなど、犯罪事実の解明や犯人の特定・検挙につながる捜査を行います。
保険会社 事故が保険契約上の補償対象に該当するか、どの程度の損害が発生したのかなどを確認し、契約内容に基づいて支払う保険金を算定します。

たとえば消防にとって重要なのは火災の原因や延焼経過などですが、警察は事件性があれば、放火などの犯罪が成立するのか、誰が関与したのか、その背景は何かといった点まで捜査することになります。

一方、保険会社は、火災原因とともに、実際にどのような建物・家財が被害を受け、それが契約上どこまで補償されるのかという観点から事故を確認します。

このように、同じ火災現場を確認していても、消防、警察、保険会社では目的や着眼点が異なります。

事件性が疑われる火災では警察も調査・捜査を行う

火災原因調査では、電気、たばこ、こんろなどの失火だけでなく、放火の可能性も含めて原因を調べます。

放火の可能性が高い場合や、不審な状況があるなど事件性が認められる場合には、消防だけでなく警察も現場確認や捜査を行います。

このような場合、消防は火災原因を究明する立場から、警察は犯罪捜査の立場から、それぞれ必要な確認を行い、相互に連携して現場を調べることがあります。

事件性が高い火災では、犯罪捜査に関する部分について警察が中心となって進める場面もあります。

不自然な申告は追加確認につながることがある

火災直後にもかかわらず、非常に多数の家財について購入年月や購入価格まで詳細に記載されている場合や、高額な品物が多数申告されている場合などには、その内容に応じて消防や保険会社から確認を求められることがあります。

ただし、「申告が早い」「高額な品物が多い」という理由だけで不正と判断されるわけではありません。家計簿、資産台帳、購入履歴などを日頃から詳細に管理している人もいるためです。

重要なのは、申告内容について聞かれたときに、分かる範囲で事実を説明し、記録が残っている場合にはその資料を提示できるようにしておくことです。

保険金を受け取る目的で、存在しない家財を申告したり、火災原因について虚偽の説明をしたりすることは絶対に避けてください。火災の原因や申告内容に不自然な点がある場合には、消防、警察、保険会社など、それぞれの立場から詳しい確認が行われる可能性があります。

消防署は家財一つ一つの損害を証明してくれる?

ここは、り災申告書と保険金の関係で特に誤解されやすい部分です。

り災申告書にテレビ、冷蔵庫、家具などを記載したからといって、消防署が「このテレビは○万円の損害」「この家具は全損」といった保険上の損害額を保証するわけではありません。

消防機関は、火災原因や焼損状況などについて火災調査を行いますが、保険会社の契約内容に基づいて保険金額を決定する機関ではありません。

家財について記載する申告書も消防の火災損害調査に使われますが、その記載内容だけで保険金が決まるわけではありません。

実際にいくら補償されるかは、加入している火災保険・家財保険の契約内容、免責金額、補償範囲、損害状況、保険会社による査定などによって決まります。

書き方によって保険金を多くもらえる?

り災申告書の表現を工夫しただけで、保険金を増やすことはできません。

また、実際には燃えていないものを記載したり、購入価格を実際より高く記載したりすることは避けなければなりません。

一方で、実際に存在する損害を漏れなく申告することは重要です。

たとえば火そのもので焼けていなくても、消火活動による水損、煙やすすによる汚損、熱による変形などが補償対象になる契約もあります。

そのため、「保険金を多くするために書く」のではなく、「実際に発生した損害を漏れなく記録し、保険会社に正確に伝える」という考え方が適切です。

り災証明書と保険会社の関係

り災証明書と保険会社による損害査定は別のものです。

自然災害の場合、損害保険会社は独自に損害状況を確認するため、自治体が発行する罹災証明書の提出を求めないことが一般的です。

ただし、契約や事故の内容によって必要書類は異なるため、保険会社や代理店に確認してください。

火災の場合も、消防署のり災証明書だけで保険金額が決まるわけではありません。

保険会社は、事故の状況、写真、修理見積書、損害品の一覧、契約内容などをもとに保険金を算定します。

罹災証明書で利用できる主な支援制度

罹災証明書は、保険金の請求だけでなく、国・都道府県・市区町村が実施するさまざまな支援制度を利用する際に必要となることがあります。

利用できる制度は災害の規模や自治体によって異なりますが、主なものは次のとおりです。

支援制度 内容
被災者生活再建支援金 住宅が全壊・大規模半壊などとなった世帯に支給される支援金
災害見舞金 自治体独自に支給される見舞金
住宅の応急修理制度 一定の条件を満たす住宅の応急修理費を支援
公費解体 被災した建物の解体費用を自治体が負担する制度
災害ごみ処理 災害ごみを無料または特例で処分できる場合がある
固定資産税の減免 住宅被害の程度に応じて減免される場合がある
国民健康保険料などの減免 保険料・介護保険料などが減免される場合がある
各種融資制度 災害援護資金など低利融資を受けられる場合がある

支援制度の内容や対象となる被害区分は自治体によって異なります。必ず被災した自治体のホームページなどで確認してください。

写真は必要?

写真は、自然災害でも火災でも非常に重要です。

自治体への罹災証明書申請で写真が必須かどうかは自治体によって異なります。現地調査を行う自治体もあれば、被害が比較的軽い場合に、写真を使った「自己判定方式」を利用できる自治体もあります。

たとえば我孫子市では、写真等によって被害認定を行う自己判定方式を設けており、建物全景などの写真提出を求めています。

デジタル写真と紙のどちらがいい?

これも提出先によって異なります。

オンライン申請ではスマートフォンやデジタルカメラで撮影した画像データを添付できる場合があります。一方、窓口や郵送申請では、写真を紙に印刷して提出する方式の自治体もあります。

そのため、撮影時にはまずデジタルデータとして保存しておくのがおすすめです。

デジタルデータがあれば、オンライン提出にも印刷提出にも対応できます。

モノクロでもいい?カラーの方がいい?

提出要件に「カラー写真」と明記されていなければ、モノクロ写真が直ちに無効になるとは限りません。

ただし、被害状況を確認する目的では、原則としてカラー写真を残しておく方が適しています。

火災の場合には、すす、焦げ、変色、水損などの状態が色によって分かりやすくなることがあります。また、水害でも水位の跡や泥の付着などがカラーの方が確認しやすいことがあります。

したがって、特別な理由がなければカラーで撮影し、元のデジタルデータを削除せず保存しておくことをおすすめします。

どのような写真を撮ればいい?

建物の外

  • 建物全体が分かる写真
  • 可能であれば建物の四方向から撮影した写真
  • 屋根、外壁、窓、雨どいなどの損傷
  • 被害箇所の位置が分かる少し離れた写真
  • 破損箇所を近くから撮影した写真

建物の中

  • 部屋全体
  • 天井
  • 窓やドア
  • キッチン、浴室、トイレなどの設備
  • 被害を受けた家具や家電

火災の場合

  • 焼けた部屋全体
  • 焼損した壁・床・天井
  • すすや煙による汚損
  • 消火活動による水損
  • 被害を受けた家具や家電
  • 家財の品名が判別できる写真

ただし、火災現場では消防や警察による原因調査が行われます。調査が終わる前に勝手に立ち入ったり、物を移動したりしないでください。

保険会社の確認前に捨てない方がよいもの

  • 焼損した家電
  • 焼損した家具
  • 保証書や取扱説明書
  • 購入時のレシート
  • 修理見積書
  • 焼損状況の写真
  • 消防署へ提出した書類の控え

片付けや修理はいつからしていい?

火災の場合

火災の場合は、まず消防・警察による火災原因調査が優先されます。

火災調査が終わる前に焼けた物を捨てたり、建物を解体したりすると、火災原因や焼損状況を確認できなくなる可能性があります。

そのため、消防署から現場の片付けを始めてよいことを確認してから作業するのが基本です。

さらに、保険会社による現場確認が必要になる場合もあるため、できれば片付けや大規模な修理を始める前に保険会社にも連絡しておきます。

自然災害の場合

地震や台風などの場合も、罹災証明書の現地調査前に全面的な修理や解体を行うと、自治体が被害程度を確認しにくくなる可能性があります。

ただし、雨漏りを防ぐためのブルーシート、割れた窓の養生など、被害拡大を防ぐための応急措置まで行ってはいけないわけではありません。

修理前の状態を写真や動画で十分に記録したうえで、必要な応急処置を行います。

火災をそのとき消防署へ通報していなかった場合は?

小さな火がすぐ消えた場合など、火災発生時には消防へ通報せず、後になって消防署へ届け出るケースがあります。

消防機関では、このように火災が終わった後などに消防が火災の発生を知るケースを「事後聞知」と呼んでいます。

消防庁の火災統計にも「事後聞知」という区分があり、火災発生時に消防隊が消火活動をしていないからといって、それだけで火災として扱われないわけではありません。

ただし、申告すれば必ず火災として認定されるという意味でもありません。

後日消防署へ届け出た場合でも、消防署による確認や火災調査が行われます。

清掃、修繕、リフォーム、廃棄などを行った後で、焼け跡や出火箇所などがなくなり、火災が発生したことを客観的に確認できない状態になっていると、火災として判断するための材料が不足する可能性があります。

その結果、火災として認定できなかったり、り災証明書を発行できなかったりする可能性があります。

小さな火災で自分で消火できた場合でも、建物や家財に焼損が生じた場合は、片付ける前に消防署へ相談するのが安全です。

火災発生から保険金受取までの流れ

  1. 119番通報・避難
    まずは安全を確保します。
  2. 消防による火災調査
    火災原因や焼損状況などを確認します。
  3. り災申告書を受け取る
    必要事項を記入し、後日消防署へ提出します。
  4. 保険会社へ連絡
    事故受付を行います。
  5. 被害状況を写真撮影
    修理や片付け前に撮影します。
  6. り災証明書を申請
    必要な場合は消防署へ申請します。
  7. 保険金請求
    必要書類を提出し、保険会社の査定を受けます。

保険金はどれくらいの期間でもらえる?

「いつまで請求できるか」と「請求してからいつ支払われるか」は別の話です。

保険金を請求できる期間

損害保険の保険金請求権は、保険法により原則として3年間で時効となります。

ただし、事故から時間が経つほど、事故原因や損害状況の確認が難しくなります。

「3年間あるから急がなくてよい」という意味ではなく、火災や災害が発生したらできるだけ早く保険会社へ事故連絡をするのが基本です。

請求後に保険金が支払われるまで

損害保険では、保険金請求に必要な手続きが完了した日を含め、約款上、一般に30日以内を支払期限としていることが多いとされています。

ただし、火災原因の確認、警察や消防への照会、損害額の調査など特別な確認が必要な場合は、それより長くかかることがあります。

つまり、火災が発生してから必ず30日以内に振り込まれるという意味ではありません。

必要書類がそろい、保険会社側で確認すべき事項が整ってから支払いまでの期間を考える必要があります。

被災した建物はいつまでに修理・建て替え・撤去すればいい?

通常の火災や自然災害について、「被災後○日以内に必ず修理・建て替え・撤去しなければならない」という全国一律の期限があるわけではありません。

建物の被害程度、所有関係、保険会社との協議、自治体の支援制度、解体業者の手配などによって時期は異なります。

ただし、次の点には注意が必要です。

  • 消防や警察による火災調査が終わる前に撤去しない
  • 自治体の被害認定調査が必要なら、調査前に状態を大きく変えない
  • 保険会社による現場確認が必要か確認する
  • 公費解体や災害ごみの支援制度には申請期限が設けられる場合がある
  • 倒壊や部材落下の危険がある建物は放置しない

被災した建物をそのまま放置するとどうなる?

被災建物を放置すると、時間の経過とともに雨漏りや腐食が進み、被害がさらに大きくなることがあります。

火災で柱や屋根などが損傷している場合には、倒壊、外壁や屋根材の落下、第三者の侵入など、新たな事故につながる可能性もあります。

著しく危険な建築物については、建築基準法などに基づいて行政から安全確保のための対応を求められる場合があります。

また、被災後に長期間放置して被害が拡大した部分については、「最初の災害による直接の損害なのか」「その後の管理不足によって拡大した損害なのか」が問題になる可能性があります。

保険契約では、事故後に損害の発生・拡大を防止することが求められる場合もあるため、危険がない範囲で応急措置を行い、保険会社へ早めに相談してください。

修理・解体前に残しておきたいもの

  • 建物全体の写真
  • 被害箇所の写真・動画
  • 焼損・水損した家財の写真
  • 修理前の見積書
  • 解体見積書
  • 修理・解体費用の領収書
  • 家財の購入履歴や保証書
  • 消防署や自治体へ提出した書類のコピー
  • 保険会社とのやり取りの記録

税金の雑損控除などで、取得価格、取り壊し費用、保険金の受取額などが必要になる場合もあるため、災害に関連する書類はまとめて保管しておくと便利です。

り災証明書を申請する一般的な流れ

  1. まず自分と家族の安全を確保する
  2. 消防・警察・自治体などによる現場確認を受ける
  3. 安全が確認できる範囲で被害状況を写真や動画に残す
  4. 火災なら消防署、自然災害なら市区町村へ必要な手続きを確認する
  5. り災申告書などがある場合は必要事項を記入して提出する
  6. 加入している保険会社・代理店へ事故を連絡する
  7. 必要に応じて現地調査・損害調査を受ける
  8. り災証明書を受け取る
  9. 保険、税金、生活再建支援など必要な制度へ申請する

火災後に特に注意したいこと

  • 火災原因調査が終わる前に現場を片付けない
  • 焼けた家財をすぐ捨てない
  • 焼損・水損・すす汚れを写真で残す
  • り災申告書の提出期限を消防署へ確認する
  • 火災保険会社へ早めに連絡する
  • 修理業者と契約する前に保険会社へ確認する
  • 小さな火災でも後から届け出る場合は、現場をできるだけ残して消防署へ相談する

よくある質問

火災現場でり災証明書そのものをもらえる?

一般には、その場でもらうことが多いのは「り災申告書」「火災損害申告書」などの申告用紙です。

り災証明書そのものは、火災調査後などに消防署へ申請して交付してもらう形が一般的です。

購入価格が分からない家財はどうする?

購入価格や購入年月が分からない場合は、無理に正確そうな数字を作るのではなく、消防署に記入方法を確認します。

家計簿、通販サイトの履歴、クレジットカードの明細、保証書などがあれば参考にできます。

り災申告書に高い金額を書けば保険金も増える?

いいえ。消防署への申告額だけで保険金が決まるわけではありません。

実際の支払額は保険契約や損害状況、保険会社による査定などによって決まります。

写真はスマホで撮ったものでいい?

スマートフォンで撮影した写真でも、被害状況が十分に確認できれば資料として利用しやすいです。

ただし、自治体や保険会社へ提出するときのファイル形式、容量、紙への印刷の有無などは提出先のルールに従ってください。

モノクロ写真しかない場合は使えない?

モノクロだから必ず使えないわけではありませんが、今から撮影できるのであればカラー写真をおすすめします。

火災を自分で消して119番通報しなかった場合でも届け出られる?

後から消防署へ届け出ることはできます。消防では、このようなケースを「事後聞知」として扱う場合があります。

ただし、火災として認定できるかどうかは消防署による確認・調査によります。清掃や修理ですべての痕跡をなくす前に消防署へ相談してください。

保険金は火災から30日以内にもらえる?

必ずしもそうではありません。一般に約款上の30日という期間は、必要な保険金請求手続きが完了してからの支払期限です。

調査が必要な場合はさらに時間がかかることがあります。

被災住宅はすぐ解体しないといけない?

全国一律の「○日以内」という期限があるわけではありません。

ただし、消防・自治体・保険会社による確認前に解体すると手続きに影響する可能性があります。一方、倒壊などの危険がある建物を長期間放置するのも危険です。

調査・証拠保存と安全確保の両方を考え、消防署、自治体、保険会社などと相談しながら進めてください。

被災当日にやることチェックリスト

  • □ 自分や家族の安全を確保する
  • □ 119番へ通報する
  • □ 消防・警察の指示に従う
  • □ 火災現場を勝手に片付けない
  • □ 建物全体を撮影する
  • □ 家財の被害を撮影する
  • □ 修理前の状態を写真で残す
  • □ 保険会社へ連絡する
  • □ り災申告書を受け取る(火災の場合)
  • □ 必要に応じてり災証明書を申請する
  • □ 修理・解体前に保険会社へ確認する

まとめ

り災証明書は、災害や火災による被害について公的機関が証明する書類ですが、自然災害と火災では発行機関や手続きが異なります。

地震、台風、大雨などによる住家被害では市区町村へ申請するのが基本です。一方、通常の火災では消防署・消防局が関係し、火災現場で「り災申告書」などを渡され、後日提出する場合があります。

火災損害申告書には、家財の品名、購入年月、購入価格などを書く欄がある場合がありますが、それらの記載によって消防署が個別の家財の保険価額を保証するわけではありません。また、消防署が保険金額を決めるわけでもありません。

保険金は加入している契約と実際の損害状況によって決まるため、被害を大きく見せるのではなく、実際に発生した被害を漏れなく記録することが重要です。

特に重要なのが写真です。可能な限りカラーで、建物全体と個々の被害箇所の両方を撮影し、元のデジタルデータを保存しておきましょう。

火災の場合は火災調査が終わる前に片付けず、自然災害の場合も自治体の被害認定に必要な状態を写真などで残しておきます。

また、火が消えた後に消防へ届け出る「事後聞知」の火災もありますが、清掃や修繕によって火災の痕跡が失われると、消防による確認が難しくなる場合があります。

申請方法、必要書類、提出期限、写真の提出形式などは自治体・消防本部によって異なるため、実際に被災した場合は、被災場所を管轄する市区町村・消防署・加入している保険会社の最新案内を確認してください。

火災後の火災調査については、火災調査とは?の解説ページもあわせて参考にしてください。

参考資料