informationphysics

回折実験の考察例|単スリット・暗線・光の波長・誤差原因

回折実験は、光や音などの波が狭いすき間や障害物の端を通過するとき、直進するだけでなく周囲へ広がる現象を観察する物理実験です。

光の回折を調べる代表的な方法に、レーザー光を単スリットへ通し、スクリーン上に生じる明暗の模様を観察する実験があります。中央には幅の広い明るい部分が現れ、その両側に暗線と明線が交互に並びます。

暗線の位置は、光の波長、スリット幅、スリットからスクリーンまでの距離によって決まります。そのため、暗線位置を測定すれば、光の波長またはスリット幅を求められます。

この記事では、赤色レーザー光と単スリットを用いた回折実験を想定し、導入、注意書き、結果項目、参考実験値、計算、誤差原因、結果文、考察例の順にまとめます。

注意:

この記事は、大学などの物理実験で得られた結果を考察するための学習用参考資料です。掲載している実験値は説明用の例であり、実際の測定結果ではありません。

レーザー光を直接目で見たり、人の目や反射物へ向けたりしないでください。鏡面反射する金属、ガラス、時計、アクセサリーなどにも注意し、装置の操作は必ず所属大学の実験書、担当教員、TAの指示に従ってください。

光の回折とは

波は、すき間の幅や障害物の大きさが波長と同程度になると、進行方向の後方だけでなく周囲へ大きく広がります。この現象を回折といいます。

可視光の波長は数百nm程度と非常に短いため、日常的な大きさのすき間では回折を意識しにくいものの、細いスリットを用いると明瞭な回折模様を観察できます。

単スリット回折の暗線条件

スリット幅を a、光の波長を λ、中央から暗線までの角度を θ とすると、暗線の条件は次のようになります。

a sinθ = mλ

m は±1、±2、±3、…です。m = 0は中央の明るい部分に対応するため、暗線条件には含めません。

小角近似を用いた暗線位置

スリットからスクリーンまでの距離を L、中央から第m暗線までの距離を xm とします。

角度が小さい場合、sinθ ≈ tanθ ≈ xm/L と近似できるため、暗線位置は次のようになります。

xm = mλL / a

したがって、光の波長は次の式で求められます。

λ = axm / mL

また、波長が既知であれば、スリット幅は次の式で求められます。

a = mλL / xm

中央極大の幅

中央極大は、左右の第1暗線の間にある明るい部分です。その幅を W とすると、小角近似の範囲で次のようになります。

W = 2λL / a

中央極大は、両側にある他の明るい部分より約2倍広いことが単スリット回折の特徴です。

結果に記録する主な項目

  • 使用した光源の種類と公称波長
  • 単スリットの公称幅
  • スリットからスクリーンまでの距離
  • 中央極大の中心位置
  • 左右の第1、第2、第3暗線などの位置
  • 左右の暗線間の距離
  • 中央から暗線までの平均距離
  • 中央極大の幅
  • 暗線位置から求めた光の波長
  • 波長から求めたスリット幅
  • 複数回測定した平均値
  • 公称値との相対誤差
  • 回折模様の明るさと左右対称性
  • 外側の明線の減衰
  • 光軸、スクリーン角度、周囲光、振動の状態

暗線位置は、中央から片側だけを測定するよりも、左右の同じ次数の暗線間距離を測定して2で割る方が、中央位置の決定誤差を小さくできます。

参考実験条件

項目 参考条件
光源 赤色半導体レーザー
公称波長 650 nm
単スリット幅 a 0.100 mm
スクリーン距離 L 1.50 m
測定対象 左右第3暗線まで
距離の最小目盛 1 mm
測定回数 3回

参考実験値

各次数の暗線位置

暗線次数 m 左側位置(mm) 右側位置(mm) 左右間距離(mm) 中央からの平均距離(mm)
1 −9.7 9.8 19.5 9.75
2 −19.4 19.6 39.0 19.50
3 −29.2 29.3 58.5 29.25

中央から暗線までの距離は、暗線次数にほぼ比例しています。

波長の計算例

暗線次数 m 中央からの距離 xm(mm) 計算波長(nm)
1 9.75 650
2 19.50 650
3 29.25 650

繰り返し測定例

測定回 中央極大幅 W(mm) 波長 λ(nm)
1回目 19.5 650
2回目 19.3 643
3回目 19.6 653

スリット幅を変えた場合

スリット幅 a(mm) 第1暗線までの距離(mm) 中央極大幅(mm)
0.050 19.5 39.0
0.100 9.75 19.5
0.150 6.50 13.0
0.200 4.88 9.76

スリット幅が小さくなるほど、回折模様は大きく広がっています。

計算方法

左右の暗線位置から中央までの距離を求める

左右の第1暗線間距離が19.5 mmの場合は、次のようになります。

x1 = 19.5 / 2

= 9.75 mm

第1暗線から光の波長を求める

スリット幅0.100 mm、スクリーン距離1.50 m、第1暗線までの距離9.75 mmの場合、単位をメートルへそろえます。

a = 0.100 mm = 1.00 × 10−4 m

x1 = 9.75 mm = 9.75 × 10−3 m

λ = ax1 / L

= (1.00 × 10−4) × (9.75 × 10−3) / 1.50

= 6.50 × 10−7 m

= 650 nm

第3暗線から光の波長を求める

λ = ax3 / 3L

= (1.00 × 10−4) × (29.25 × 10−3) / (3 × 1.50)

= 6.50 × 10−7 m

= 650 nm

中央極大の幅から波長を求める

λ = aW / 2L

= (1.00 × 10−4) × (19.5 × 10−3) / (2 × 1.50)

= 6.50 × 10−7 m

= 650 nm

既知波長からスリット幅を求める

波長650 nm、第1暗線までの距離9.75 mm、スクリーン距離1.50 mの場合は、次のようになります。

a = λL / x1

= (650 × 10−9) × 1.50 / (9.75 × 10−3)

= 1.00 × 10−4 m

= 0.100 mm

平均波長

平均波長 = (650 + 643 + 653) / 3

= 648.7 nm

有効数字を考慮すると、平均波長は649 nmと表せます。

相対誤差

公称波長650 nm、実験平均値649 nmの場合は、次のようになります。

相対誤差(%) = |実験値 − 公称値| / 公称値 × 100

= |649 − 650| / 650 × 100

= 約0.15%

グラフから波長を求める

暗線位置 xm を縦軸、次数 m を横軸としてグラフを作成すると、傾き b は次のようになります。

b = λL / a

したがって、光の波長は次の式で求められます。

λ = ab / L

複数の暗線位置を直線近似することで、個々の位置の読み取り誤差の影響を小さくできます。

主な誤差原因

誤差原因 測定への影響 結果に現れやすい傾向 改善方法
暗線位置の読み取り誤差 暗さの最小位置を一点に決めにくい 波長が測定ごとにばらつく 左右の暗線間距離を測定し、複数次数を使う
中央位置の決定誤差 片側の暗線位置が系統的にずれる 左右で異なる波長が得られる 左右同次数の暗線間距離を2で割る
スクリーン距離の測定誤差 波長計算の分母がずれる すべての波長が同じ方向へずれる スリット面からスクリーン面までを測定する
スリット幅の公称値誤差 波長へ比例して影響する 測定全体に系統誤差が生じる 校正値を使用する、顕微鏡で幅を確認する
レーザーがスリットへ垂直に入射していない 回折模様が左右非対称になる 左右の暗線位置が一致しない レーザーとスリットの角度を調整する
スクリーンが光軸に垂直でない 見かけの距離が片側で伸びる 模様が非対称になる スクリーン面を光軸に垂直にする
装置の振動 回折模様が時間的に揺れる 暗線がぼける 安定した台を使用し、測定中は装置へ触れない
周囲光 暗線が明るく見える 暗線中心を判定しにくい 室内を暗くする、遮光する
小角近似の限界 高次暗線の位置式にずれが生じる 外側ほど直線関係から外れる 中央付近を使うか、正確な三角関数で計算する
スリットの汚れや傷 理想的な開口形状から外れる 模様が乱れる、左右差が生じる スリットを清掃し、損傷のないものを使う

スリット幅が小さいほど回折が大きくなる理由

第1暗線の位置は x1 = λL/a で表されるため、スリット幅が小さいほど暗線位置は中央から遠くなります。

これは、狭い開口を通過した光ほど広い角度範囲へ広がることを示しています。

中央極大が他の明線より広い理由

中央極大は、左側の第1暗線から右側の第1暗線までの範囲です。一方、その外側の明るい部分は、隣り合う暗線の間にあります。

暗線位置がほぼ等間隔であるため、中央極大の幅は他の明るい部分のおよそ2倍になります。

外側ほど明るさが弱くなる理由

単スリット内の各点から出た光は、観測角度によって異なる位相で重なります。中央ではほぼ同位相で重なるため強い光になりますが、外側では多くの光が互いに打ち消し合います。

そのため、中央極大が最も明るく、外側の明線ほど強度が急速に小さくなります。

暗線位置が次数に比例する理由

小角近似が成り立つ場合、暗線条件は xm = mλL/a となります。光の波長、スクリーン距離、スリット幅が一定なら、暗線位置は次数に比例します。

回折と干渉の関係

単スリット回折も、スリット内の異なる位置から出た光どうしの干渉として説明できます。スリット内の多数の点を波源とみなし、それらから出た光の位相差によって明暗の分布が生じます。

したがって、回折と干渉は別々の現象ではなく、波の重ね合わせに基づく密接な現象です。

結果の書き方の例

赤色レーザー光を幅0.100 mmの単スリットへ入射し、1.50 m離れたスクリーン上に生じた回折模様を観察した。

中央には幅の広い明るい部分が現れ、その左右に暗線と明線が交互に観察された。左右の第1暗線間距離は19.5 mmであり、中央極大の幅も19.5 mmであった。

第1、第2、第3暗線の中央からの距離は、それぞれ9.75、19.50、29.25 mmとなり、暗線位置は次数に比例した。暗線位置から求めたレーザー光の波長は650 nmであり、公称波長650 nmと一致した。

考察につなげるポイント

  • 回折模様は左右対称であったか。
  • 暗線位置は次数に比例したか。
  • 中央極大は他の明るい部分より広かったか。
  • 外側の明線ほど暗くなったか。
  • 求めた波長は光源の公称波長と一致したか。
  • スリット幅を小さくすると模様はどう変化したか。
  • スクリーン距離を大きくすると模様はどう変化したか。
  • 左右の暗線間距離を用いる利点は何か。
  • 小角近似は測定範囲で妥当だったか。
  • 光軸、スクリーン角度、周囲光、振動、スリットの状態は影響しなかったか。

考察例

本実験では、赤色レーザー光を単スリットへ通し、スクリーン上に生じる回折模様を観察した。また、暗線位置からレーザー光の波長を求めた。

スリット幅0.100 mm、スクリーン距離1.50 mの条件で、左右の第1暗線間距離は19.5 mmとなった。したがって、中央から第1暗線までの距離は9.75 mmであり、単スリット回折の式から求めた波長は650 nmとなった。

この値はレーザーの公称波長650 nmと一致したことから、単スリット回折の暗線条件が実験結果をよく説明していると考えられる。

第1、第2、第3暗線の中央からの距離は、それぞれ9.75、19.50、29.25 mmであり、暗線位置は次数に比例した。これは、小角近似の範囲で xm = mλL/a が成り立つことを示している。

中央極大の幅は左右の第1暗線間距離であるため19.5 mmとなった。一方、外側の明るい部分は隣り合う暗線の間にあるため、その幅は約9.75 mmであった。このことから、中央極大が他の明線より約2倍広いという単スリット回折の特徴を確認できた。

また、中央極大が最も明るく、外側の明線ほど暗くなった。これは、中央付近ではスリット内の各点から出た光がほぼ同位相で重なるのに対し、外側では位相差による打ち消し合いが大きくなるためである。

スリット幅を小さくすると、第1暗線までの距離と中央極大の幅が大きくなった。暗線位置はスリット幅に反比例するため、狭いスリットほど光が大きく広がるという回折の性質と一致する。

測定値に誤差が生じる原因として、暗線中心の読み取り誤差、スクリーン距離の測定誤差、スリット幅の公称値誤差、光軸やスクリーンの傾きなどが考えられる。

特に暗線には有限の幅があり、最も暗い位置を一点に決めることは難しい。そこで、中央から片側だけを測定するのではなく、左右の同じ次数の暗線間距離を測定して2で割ることで、中央位置の決定誤差を小さくした。

左右の暗線位置に差が生じた場合は、レーザー光がスリットへ垂直に入射していなかったことや、スクリーンが光軸に対して傾いていたことが原因として考えられる。

また、高次の暗線では角度が大きくなり、小角近似の誤差が増える可能性がある。そのため、中央付近の暗線を用いるか、必要に応じて sinθ と tanθ を区別した正確な計算を行う必要がある。

測定精度を高めるには、レーザー、スリット、スクリーンの中心を同一直線上にそろえ、スクリーン面を光軸に垂直にすることが重要である。さらに、周囲を暗くし、装置の振動を避け、複数次数と複数回の測定値から平均を求めることが有効である。

以上より、光は細いスリットを通過すると直進方向だけでなく周囲へ広がること、暗線位置が次数に比例すること、さらに回折模様から光の波長を求められることを確認できた。

測定波長が公称値より大きかった場合の考察例

測定波長が公称値より大きくなった原因として、暗線までの距離を実際より大きく読み取ったこと、スリット幅を実際より大きく扱ったこと、またはスクリーン距離を実際より短く測定したことが考えられる。スクリーンが光軸に対して傾いていた場合にも、見かけの暗線間隔が広くなる可能性がある。

回折模様が不鮮明だった場合の考察例

回折模様が不鮮明だった原因として、周囲光が強かったこと、装置が振動していたこと、レーザー光がスリット中央へ正しく入射していなかったこと、スリットに汚れや傷があったことなどが考えられる。また、スクリーンまでの距離が短すぎる場合は模様が狭くなり、暗線位置を判別しにくくなる。

まとめ

単スリット回折実験では、レーザー光を細いスリットへ通すことで、中央極大とその両側に並ぶ暗線・明線を観察できます。

暗線位置は光の波長とスクリーン距離に比例し、スリット幅に反比例します。暗線位置、スリット幅、スクリーン距離を測定すれば、光の波長またはスリット幅を求められます。

考察では、中央極大の幅、外側の強度低下、暗線位置と次数の比例関係、小角近似、光軸、スクリーン角度、読み取り誤差などを関連づけて説明することが重要です。